うつ病は世界的な公衆衛生上の大きな問題であるが、これまでの研究で、幼少期の性格が成人期のうつ病に及ぼす影響については、ほとんど調査されていない。中国・吉林大学のChengbin Zheng氏らは、成人による自己評価の観点から、幼少期の好奇心が成人期のうつ病に及ぼす影響およびそのメカニズムの性差について調査した。Journal of Psychiatric Research誌2025年3月号の報告。
2020年の中国家庭追跡調査(China Family Panel Study)より抽出した成人1万7,162人のデータを用い、幼少期の好奇心、将来に対する自信、主観的な社会的地位、成人期のうつ病を評価した。PROCESS 4.1ソフトウエアプログラムを用いて、調整済み仲介モデルを分析した。
主な結果は以下のとおり。
・幼少期の好奇心は、成人期のうつ病と強い関連が認められた。
・男性では、将来に対する自信が、幼少期の好奇心と成人期のうつ病との関連を部分的に仲介していた。
・女性では、将来に対する自信が、幼少期の好奇心と成人期のうつ病との関連を完全に仲介していた。
・主観的な社会的地位は、将来に対する自信と成人期のうつ病との関連を緩和することが示唆された。
著者らは、「幼少期の好奇心は成人期のうつ病に対する保護因子であると考えられる。このプロセスにおいて将来に対する自信は重要な媒介因子の役割を担っており、その影響は男女間で異なることが示唆された。さらに、主観的な社会的地位が高い人と比べて、それが低い人では、将来に対する自信と成人期のうつ病との関連に及ぶ影響がより大きいことが明らかとなった」としている。
(鷹野 敦夫)