精神疾患に対するデジタル技術を活用した研究は増加している。しかし、統合失調症患者自身によるスマートフォンアプリケーションを用いた症状の自己モニタリングシステムに関して、具体的に調査した研究は限られている。韓国・全南大学のSung-Wan Kim氏らは、コミュニティベースの早期介入センターであるMindlinkの統合失調症患者に対するスマートフォンアプリケーションを用いた症状の自己モニタリングシステムの妥当性および信頼性を評価した。Digital Health誌2025年1月31日号の報告。
対象は、統合失調症スペクトラム症の若年患者53例。対象患者の5つの精神症状領域(妄想、幻覚、不安、抑うつ、知覚ストレス)について、11段階リッカート尺度を用いて評価した。精神症状の評価は、ベースライン時、1週目、8週目、16週目に行った。再テストの信頼性は、ベースラインと1週目の評価における級内相関係数(ICC)により評価した。妥当性は、アプリベースの評価を、Eppendorf Schizophrenia Inventory、ハミルトン統合失調症プログラム幻聴尺度、ベックうつ病評価尺度、7項目一般化不安障害質問票、知覚ストレス尺度などの確立された自己報告尺度および臨床医尺度と相関させることで評価した。アプリのうつ病評価精度は、ROC分析を用いて評価した。
主な結果は以下のとおり。
・再テストの信頼性のICCは、すべての症状領域において高く、その範囲は0.741〜0.876であった(p<0.001)。
・すべての評価時点において、アプリベースの評価と標準的な評価尺度による評価との間に、有意な相関が確認された。
・アプリを用いた単一項目の自己評価についてのROC分析では、AUCが0.829であり(p=0.002)、良好な精度が示唆された。
著者らは「統合失調症患者の主要な症状やストレスを自己モニタリングするためのスマートフォンアプリケーションは、有効かつ信頼できるツールであることが示唆された。統合失調症患者の症状マネジメントを強化し、再発の早期検出を可能にするうえで、アプリの可能性を支持するものである」と結論付けている。
(鷹野 敦夫)