臨床医が日本循環器病学会で発表している病院で治療された心筋梗塞患者は、発表していない病院で治療された患者より院内死亡率が低く、また、エビデンスに基づく薬剤処方が多かったことが京都大学の高田 大輔氏らによる後ろ向き研究でわかった。PLoS One誌2024年12月9日号に掲載。
本研究では、QIP(Quality Indicator/Improvement Project)に参加している日本の急性期病院の管理データベースを解析した。2014年4月1日~2018年12月31日に急性心筋梗塞で入院した患者を、入院した病院の医師がその年の日本循環器学会年次学術集会で発表があった患者(学会発表群)と、学会発表のなかった病院に入院した患者(対照群)に分け比較した。5つのモデル(未調整モデル、モデル1:性別・年齢・Killip分類・喫煙・救急車の使用・高血圧・心房細動・陳旧性心筋梗塞・糖尿病・腎臓病・慢性閉塞性肺疾患で調整、モデル2:モデル1に加え、入院年と各病院の年間入院数で調整、モデル3:病院コードでクラスター化し、モデル1と同じ変数で調整したマルチレベル分析、モデル4:モデル1に加え、因果媒介分析によりEvidence-based Practiceで調整)における院内全死亡リスクを、多変量ロジスティック回帰分析を用いて推定した。
主な結果は以下のとおり。
・Killip分類または救急車の使用に関するデータがなかった3,544例を除外し、384の急性期病院における5万6,923例のデータを解析した。
・エビデンスに基づく薬剤の処方は、学会発表群が対照群より有意に多かった。
・モデル4を除いて、学会発表が低い院内死亡率と有意に関連していた。各モデルのオッズ比(95%信頼区間)は以下のとおり。
未調整モデル:0.68(0.65~0.72)
モデル1: 0.73(0.68~0.79)
モデル2:0.76(0.70~0.82)
モデル3:0.84(0.76~0.92)
モデル4:1.00(0.92~1.09)
著者らは「学会発表は院内死亡率の低下と関連しており、医師が学会発表を行う病院では患者がより多くのエビデンスに基づく診療の恩恵を受ける傾向がある」と結論した。一方、本研究の限界として、学会発表を日本循環器学会学術集会のみとしていること、今回調整していない組織文化や循環器医師のモチベーションなど、病院および個人の交絡因子があることを挙げている。
(ケアネット 金沢 浩子)