早期アルツハイマー病に対するレカネマブの費用対効果

提供元:ケアネット

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公開日:2024/04/12

 

 2023年1月、米国FDAより軽度認知障害(MCI)またはアルツハイマー病による軽度認知症に対する治療薬としてモノクローナル抗体レカネマブが承認された。しかし、認知症に対するレカネマブの費用対効果は、不明なままである。カナダ・Memorial University of NewfoundlandのHai V. Nguyen氏らは、レカネマブの費用対効果およびアルツハイマー病の検査制度とAPOE ε4の状況によりどのように変化するかを定量化するため、本研究を実施した。Neurology誌2024年4月9日号の報告。

 検査アプローチ(PET、CSF、血漿アッセイ)、治療法の選択(標準的治療、レカネマブ併用)、ターゲティング戦略(APOE ε4非キャリアまたはヘテロ接合性患者を特定するか否か)の組み合わせにより定義した7つの診断治療戦略について比較した。有効性は、クオリティ調整された生存年数により測定し、第3者および社会の観点から生涯期間にわたるコスト(2022年米国ドル)を推定した。次の5つの状態でhybrid decision tree-Markov cohort modelを構成した。(1)MCI(臨床的認知症重症度判定尺度[Clinical Dementia Rating Sum of Boxes:CDR-SB]スコア:0~4.5)、(2)軽度認知症(CDR-SBスコア:4.6~9.5)、(3)中等度認知症(CDR-SBスコア:9.6~16)、(4)高度認知症(CDR-SBスコア:16超)、(5)死亡。

 主な結果は以下のとおり。

・7つの診断治療戦略のうち、費用対効果の観点では標準的治療が最適な治療戦略であった。
・レカネマブ治療、APOE ε4遺伝子型の有無にかかわらずその治療は、早期アルツハイマー病の診断に使用される検査とは無関係に、標準的治療と比較し、費用対効果が高かった。
・しかし、レカネマブの薬剤費が年間5,100米国ドル未満であれば、CSF検査とその後の標準的治療の費用対効果が高くなった。
・これらの結果は、診断検査の精度、レカネマブの中止および有害事象の発生率に対しロバストであった。

 著者らは「レカネマブ治療、ε4遺伝子型の有無にかかわらない治療は、MCIまたはアルツハイマー病による軽度認知症の患者にとって、標準的治療と比較し、費用対効果が優れているとはいえなかった。レカネマブの価格が年間5,100米国ドル未満となれば、状況により費用対効果が高くなるであろう」としている。

(鷹野 敦夫)