初発統合失調症患者の社会的機能~10年間の軌跡

提供元:ケアネット

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公開日:2024/01/08

 

 統合失調症患者では、さまざまな機能的アウトカムを呈する可能性がある。しかし、初発統合失調症患者の長期的な機能的アウトカムの軌跡を調査した研究は、ほとんどない。中国・北京大学のZhang Cheng氏らは、抗精神病薬による治療を行っていない初発統合失調症患者を対象に、10年間のフォローアップ調査を行った。Asian Journal of Psychiatry誌2024年1月号の報告。

 抗精神病薬治療を行っていない初発統合失調症患者を対象とした、10年間のプロスペクティブ研究である中国の初発統合失調症トライアルよりデータを抽出した。初発統合失調症患者の社会的機能に関する縦断的データにK平均クラスタリングモデルを適用し、経験的に導き出された軌跡と10年間のフォローアップ調査のベースラインにおける臨床特性との関連を調査した。

 主な結果は以下のとおり。

・次の3つの異なる機能的軌跡が特定された。改善が良好(39.3%)、不良(17.8%)、安定(42.9%)。
・3つの軌跡のいずれにおいても、最初の6ヵ月間で個人および社会的パフォーマンス(PSP)スコアの向上が認められた。
・改善が不良の場合には、最初の6ヵ月以降にPSPスコアの低下が認められ、他の2つの場合には、PSPスコアは安定していた。
・改善が良好の患者は、他の2つの患者と比較し、ベースライン時のPSPスコアが高かった。
 【良好vs.不良】オッズ比(OR):0.904、95%信頼区間(CI):0.852~0.961、p<0.05
 【良好vs.安定】OR:0.870、95%CI:0.825~0.918、p<0.001
・改善が良好の患者は、安定の患者と比較し、女性の割合が高かった(OR:2.699、95%CI:1.030~7.074、p<0.05)。

 著者らは「初発統合失調症患者は、長期にわたりさまざまな機能回復プロファイルを示し、長期的な機能的アウトカムを改善するためには、最初の1年、とくに1年目の後半における社会的機能介入が重要である」と報告した。とくに「ベースライン時の機能が不十分な男性患者では、早期介入によるベネフィットが大きい可能性がある」としている。

(鷹野 敦夫)