TN乳がん導入療法後のペムブロリズマブ、オラパリブ併用vs.化療併用(KEYLYNK-009)/SABCS2023

提供元:ケアネット

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公開日:2023/12/13

 

 ペムブロリズマブ+化学療法による導入療法で臨床的有用性が得られた切除不能な局所再発または転移を有するトリプルネガティブ乳がん(TNBC)患者を対象に、その後の維持療法としてペムブロリズマブ+オラパリブとペムブロリズマブ+化学療法の有効性と安全性を比較した第II相KEYLYNK-009試験の結果を、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のHope S. Rugo氏がサンアントニオ乳がんシンポジウム(SABCS2023)で発表した。その結果、ペムブロリズマブ+オラパリブ群はITT集団では無増悪生存期間(PFS)および全生存期間(OS)を有意に改善しなかったが、BRCA変異陽性集団においては良好な傾向にあり、治療関連有害事象(TRAE)は少ないことが明らかになった。

・対象:導入療法としてカルボプラチン(AUC2を3週ごとに1・8日目)+ゲムシタビン(1,000mg/m2を3週ごとに1・8日目)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと)を4~6サイクル投与し、完全奏効(CR)/部分奏効(PR)/病勢安定(SD)が得られた切除不能な局所再発または転移を有するTNBC患者 271例
・試験群:オラパリブ(300mg、1日2回)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと、導入療法を含めて35サイクルまで)【ペムブロ+オラパリブ群:135例】
・対照群:カルボプラチン(AUC2を3週ごとに1・8日目)+ゲムシタビン(1,000mg/m2を3週ごとに1・8日目)+ペムブロリズマブ(200mg、3週ごと、導入療法を含めて35サイクルまで)【ペムブロ+化学療法群:136例】
・評価項目:
[主要評価項目]ITT集団におけるRECIST v1.1を用いた盲検下独立中央判定(BICR)によるPFS、OS
[副次評価項目]PD-L1 CPS≧10およびBRCA変異陽性集団におけるPFSおよびOS、安全性
・層別化因子:導入療法の臨床的有用性(CR/PR/SD)、PD-L1発現状況(CPS≧1/CPS<1)、腫瘍のBRCA変異

 主な結果は以下のとおり。

・導入療法を受けた460例のうち、271例がペムブロ+オラパリブ群またはペムブロ+化学療法群に1:1に無作為に割り付けられた。2022年12月15日のデータカットオフ時点での追跡期間中央値は17.2ヵ月であった。
・ベースライン時のペムブロ+オラパリブ群およびペムブロ+化学療法群の年齢中央値はそれぞれ54歳/52歳、PD-L1 CPS≧10は48.1%/47.8%、BRCA変異陽性は21.5%/22.1%、CRまたはPRは70.4%/70.6%で、両群でバランスがとれていた。
・ITT集団におけるPFS中央値は、ペムブロ+オラパリブ群5.5ヵ月(95%信頼区間[CI]:4.2~8.3)、ペムブロ+化学療法群5.6ヵ月(4.3~6.9)で、ハザード比(HR)は0.98(0.72~1.33)であった(p=0.4556)。12ヵ月PFS率はそれぞれ33.3%(24.5~42.3)、29.3%(21.2~37.8)であった。
・ITT集団におけるOS中央値は、ペムブロ+オラパリブ群25.1ヵ月(95%CI:18.3~NR)、ペムブロ+化学療法群23.4月(15.8~NR)で、HRは0.95(0.64~1.40)であった。18ヵ月OS率はそれぞれ62.0%(51.9~70.6)、55.7%(45.5~64.7)であった。
BRCA陽性集団のPFS中央値は、ペムブロ+オラパリブ群(12.4ヵ月[95%CI:8.3~NR])のほうが、ペムブロ+化学療法群(8.4ヵ月[5.4~NR])より長かった(HR:0.70[0.33~1.48])。しかし、PD-L1 CPS≧10集団ではそれぞれ5.7ヵ月(2.9~13.9)および5.7ヵ月(3.8~7.6)で同程度であった(HR:0.92[0.59~1.43])。
BRCA陽性集団のOS中央値はペムブロ+オラパリブ群はNR(95%CI:17.1~NR)、ペムブロ+化学療法群は23.4ヵ月(17.3~NR)であった(HR:0.81[0.28~2.37])。PD-L1 CPS≧10集団では両群ともNR(17.0~NR vs.15.5~NR)であった(HR:0.97[0.53~1.76])。
・治療患者268例において、TRAEはペムブロ+オラパリブ群で114/135例(84.4%)、ペムブロ+化学療法群で128/133例(96.2%)に発現した。Grade3以上のTRAEはそれぞれ44例(32.6%)、91例(68.4%)に発現し、治療中止に至ったTRAEは12例(8.9%)、26例(19.5%)であった。ペムブロ+化学療法群において死亡が2例(1.5%)認められた。安全性プロファイルとは既知のものと一致していた。

 これらの結果より、Rugo氏は「導入療法で臨床的有用性が得られた再発・転移TNBC患者が化学療法を中止してペムブロリズマブ+オラパリブの維持療法を行った場合、ペムブロリズマブ+化学療法を継続した場合と同等の有効性が得られ、安全性プロファイルはより良好である」とまとめた。

(ケアネット 森 幸子)

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