AI耐性HR+進行乳がんへのフルベストラント+capivasertib、日本人解析結果(CAPItello-291)/日本癌治療学会

提供元:ケアネット

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公開日:2023/11/07

 

 アロマターゼ阻害薬(AI)耐性のホルモン受容体陽性(HR+)HER2陰性(HER2-)進行乳がん(切除不能の局所進行もしくは転移・再発乳がん)に対するフルベストラントへのAKT阻害薬capivasertibの上乗せ効果を検討した第III相CAPItello-291試験の日本人サブグループ解析結果を、九州がんセンターの徳永 えり子氏が第61回日本癌治療学会学術集会(10月19~21日)で発表した。

・対象:閉経前/後の女性もしくは男性のHR+/HER2-の進行乳がん患者(AI投与中/後に再発・進行、進行がんに対して2ライン以下の内分泌療法・1ライン以下の化学療法、CDK4/6阻害薬治療歴ありも許容、SERD・mTOR阻害薬・PI3K阻害薬・AKT阻害薬の治療歴は不可、HbA1c 8.0%未満)
・試験群(capi群):capivasertib(400mg1日2回、4日間投与、3日間休薬)+フルベストラント(500mg) 37例(グローバル:355例)
・対照群(プラセボ群):プラセボ+フルベストラント 41例(353例)
・評価項目:
[主要評価項目]全体集団およびAKT経路(PIK3CAAKT1PTENのいずれか1つ以上)に変異のある患者集団における無増悪生存期間(PFS)
[副次評価項目]全体集団およびAKT経路に変異のある患者集団における全生存期間(OS)、奏効率(ORR)など
[層別化因子]CDK4/6阻害薬治療歴の有無、肝転移の有無など

 主な結果は以下のとおり。

・ベースライン特性は両群でバランスがとれており、年齢中央値は両群で61歳、閉経後患者はcapi群78.4% vs.プラセボ群70.7%だった。肝転移ありが29.7% vs.31.7%でグローバル(43.9% vs.42.5%)と比較すると少なく、ECOG PS 0が94.6% vs.85.4%と多かった(63.1% vs.68.3%)。
・ベースラインで進行がんに対して1ラインの内分泌療法歴のある患者は51.4% vs.43.9%、CDK4/6阻害薬治療歴のある患者は13.5% vs.19.5%とそれぞれグローバル(80.8% vs.71.4%、69.0% vs.69.1%)と比較すると少なかった。
・AKT経路に変異のある患者は51.4% vs.46.3%とグローバル(43.7% vs.38.0%)と比較してやや多かった。
・全体集団におけるPFS中央値は、Capi群13.9ヵ月vs.プラセボ群7.6ヵ月(ハザード比[HR]:0.73、95%信頼区間[CI]:0.40~1.28)となり、Capi群で臨床的に意義のある改善が認められた(グローバルでは7.2ヵ月vs.3.6ヵ月、HR:0.60、95%CI:0.51~0.71、両側p<0.001)。
・AKT経路に変異のある患者集団におけるPFS中央値は、Capi群13.9ヵ月vs.プラセボ群9.1ヵ月(HR:0.65、95%CI:0.29~1.39)となり、Capi群で臨床的に意義のある改善が認められた(グローバルでは7.3ヵ月vs.3.1ヵ月、HR:0.50、95%CI:0.38~0.65、両側p<0.001)。
・ORRは全体集団でCapi群29.4% vs.プラセボ群22.0%(グローバルでは22.9% vs.12.2%)、AKT経路に変異のある患者集団で27.8% vs.15.8%(28.8% vs.9.7%)で、グローバルと同様の傾向がみられた。
・重篤な有害事象(SAE)はCapi群で13.5%に認められ、グローバル(16.1%)と同様だったが、AEによる試験薬の中止(日本人サブグループ56.8%、グローバル34.9%)およびAEによる試験薬の減量(27.0%、19.7%)は日本人集団で多い傾向がみられた。
・Capi群の安全性プロファイルはグローバルと同様で、多く認められたAEは下痢(73.0%)、皮疹(48.6%)、口内炎(29.7%)など。皮疹と口内炎は日本人サブグループで多い傾向がみられた。

 徳永氏は日本人サブグループにおけるPFS中央値がグローバルより長いのは、ベースラインでECOG PS 0の患者の割合が多く、肝転移のある患者が少なく、進行がんに対する内分泌/化学療法歴あるいはCDK4/6阻害薬による治療歴のある患者が少なかったことによる可能性があると考察。グローバルでの結果と同様に、日本の患者におけるcapivasertib+フルベストラント併用療法のベネフィットとリスクのプロファイルは良好であり、将来の治療選択肢となる可能性があるとまとめている。

(ケアネット 遊佐 なつみ)

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