遺伝子パネル検査、4割強の医師がいまだ経験なし/会員医師アンケート

提供元:ケアネット

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公開日:2023/07/13

 

 2019年6月に遺伝子パネル検査が保険収載されてから丸4年が経過した。ケアネットでは、7月19日に配信するセミナー「米国における がんゲノム検査の実態」収録に先立って、がん診療に携わる専門医600人を対象に「遺伝子パネル検査の施設での実施状況や自身の経験」について聞くアンケートを実施した。全体集計のほか、専門であることが見込まれる「肺がん」「乳がん」「消化器がん」「泌尿器がん」別でも集計、比較した。

 「Q.これまで、がん遺伝子パネル検査を担当患者さんに行ったこと、もしくは紹介したことがありますか?」との設問には、「ある」56%、「ない」44%という回答となった。回答者の8割近くが200床以上の医療機関に勤務しているが、がん遺伝子パネル検査が実施できるのはがんゲノム医療中核拠点病院(13ヵ所)・拠点病院(32ヵ所)・連携病院(203ヵ所、いずれも2023年6月1日現在)に限られ、国内2,500ヵ所弱ある200床以上の医療機関の1割ほどだ。専門別で見た「ある」の割合としては、分子標的薬の開発、臨床応用がいち早く進んだ肺がんが最多の66%となり、乳がん、消化器がんと続き、泌尿器がんは最小の39%だった。

 「Q.『ある』という方は年間およそ何件、実施あるいは紹介していますか?」との設問では、「0件」の回答を除くと、「1~10件」が76%と大半を占め、「11~20件」が9%、「21~30件」が4%、「31~40件」が3%だった。一方で、「41件以上」も5%あった。「41件以上」の回答者の大半を肺がんが占めており、肺がん領域における遺伝子パネル検査の定着ぶりが裏付けられた。

 「Q.がん遺伝子パネル検査に意義はあると思いますか?」との設問には、「非常にある」38%、「多少はある」45%と、8割以上の回答者がパネル検査の意義を感じている、との結果となった。4割以上の回答者が検査の実施経験がない状況でも、この検査に意味を感じていることが明らかになった。

 意義を感じる・感じない理由については、「意義を感じる」の回答者では「治療に結び付いた患者がいるから」(呼吸器内科・兵庫県・60代・200床以上)、「効果の期待できる薬剤の選択、不要な薬剤の排除等に役立つ」(放射線科・兵庫県・40代・200床以上)といった「実際の治療に役立つ・選択肢が増える・薬剤が選択できる」という声が多数を占めた。ほかにも「今後の医療の発展につながるから」(呼吸器外科・大阪府・50代・200床以上)、「これから症例を増やし、検証されるべき検査」(消化器外科・福島県・50代・200床以上)」など、「現在のベネフィットは少なくても、データを蓄積することに意味がある、今後の開発につながる」といった声も目立った。

 「意義を感じない」という回答者では、「治療薬が見つかる確率が低い」(呼吸器内科・静岡県・60代・200床以上)、「なかなか新規治療につながらないから。患者さんもガッカリする」(消化器外科・奈良県・40代・200床以上)という声が多かった。現在、遺伝子パネル検査を受けた患者のうち、何らかの治療や治験につながる割合は1割強とされ(国立がんセンター調べ)、この数字をどう見るか、自身の患者の奏効例を経験したかなどが、意見の違いにつながっているようだ。

アンケート結果の詳細は以下のページに掲載中
「遺伝子パネル検査」の実施状況アンケート調査

<アンケート概要>
・タイトル:「遺伝子パネル検査」の実施状況について
・内  容:包括的がんゲノムプロファイリング(CGP)検査について、自施設での実施状況や自身の経験について
・対  象:ケアネット会員医師600人
・実施期間:2023年5月19~21日
・調査方法:インターネット

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7月19日(水)20時~「日本の5年後の姿?米国における がんゲノム検査の実態」
聖マリアンナ医科大学臨床腫瘍学講座 主任教授・砂川 優氏、カリフォルニア大学サンディエゴ校 血液腫瘍科・加藤 秀明氏が、日米それぞれの遺伝子パネル検査の実態と今後のあるべき姿について、本アンケートの結果も交えながら、縦横無尽に語ります。
視聴ページはこちら(予約不要)
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(ケアネット 杉崎 真名)