膵臓がん、FOLFIRINOXの術前補助療法の有効性を検証(NORPACT-1)/ASCO2023

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2023/06/16

 

 切除可能な膵臓がんに対するFOLFIRINOXの術前補助療法の有効性に疑問を投げかけられた。Knut Jorgen Labori氏が米国臨床腫瘍学会年次総会(2023 ASCO Annual Meeting)で発表したNORPACT-1の試験の結果である。

 切除可能膵臓がんの標準治療は、完全切除とその後の補助化学療法である。化学療法としてはFOLFIRINOXが多く使われる。一方、切除可能膵臓がんでは、術前補助化学療法のメリットも報告されている。Labori氏らは、ノルウェー、スウェーデン、デンマーク、フィンランドの12の施設で、多施設無作為化第II相試験を行い、切除可能膵臓がんにおける、FOLFIRINOXの術前補助療法と標準治療である術後補助療法を比較している。

対象:切除可能膵臓がん
試験群:FOLFIRINOX4サイクル→手術→FOLFIRINOX8サイクル(ネオアジュバント群)
対照群:手術→FOLFIRINOX12サイクル(アジュバント群)
評価項目:全生存期間(OS)

 主な結果は以下のとおり。

・140例が無作為に割り付けられた(ネオアジュバント群:77例、アジュバント群:63例)。年齢中央値は66.5歳(四分位範囲[IQR]:59.72)、ECOG0は115例(82.1%)、1が25例(17.9%)だった。最終的にネオアジュバント群:63例、アジュバント群:56例が切除を受けた。
・術後補助療法でのFOLFIRINOXの使用は、ネオアジュバント群では25%、アジュバント群では40%にとどまった。
・R0切除率はネオアジュバント群56%、アジュバント群39%であった(p=0.076)。
・N0切除率はネオアジュバント群29%、アジュバント群14%であった(p=0.060)。
・OS中央値はネオアジュバント群25.1ヵ月、アジュバント群38.5ヵ月であった(HR:1.52、95%CI:0.94~2.46、p=0.096)。
・18ヵ月後のOSはネオアジュバント群60%、アジュバント群73%だった(p=0.1)。
・Grade3~5の有害事象はネオアジュバント群は57.5%、アジュバント群は40.4%に発現した。

 FOLFIRINOXの術前補助療法は許容可能な安全性と切除実施率を示したものの、切除可能な膵臓がんに対するスタンダードとして支持される結果とはならなかった。

(ケアネット 細田 雅之)

参考文献・参考サイトはこちら