加熱式タバコ、コロナ感染・重症化リスクを上昇/大阪公立大ほか

提供元:ケアネット

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公開日:2023/02/10

 

 燃焼式タバコの使用は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化リスク因子と考えられ、「新型コロナウイルス感染症診療の手引き 第8.1版」でも「喫煙」が「重症化のリスク因子」の項目に記載されている。COVID-19流行下において、各国でタバコ使用行動の変化がみられているが、加熱式タバコの使用は、増加しているともいわれる。しかし、加熱式タバコとCOVID-19の関係については、これまでほとんど検討がなされていなかった。そこで、浅井 一久氏(大阪公立大学大学院医学研究科 呼吸器内科学)らの研究グループは、加熱式タバコの使用とCOVID-19の関係に着目し、調査を実施した。その結果、タバコ非使用者に比べ、加熱式タバコ使用者は新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)感染率が高く、全タバコ使用者の中でも加熱式タバコと燃焼式タバコの併用者は、感染時の症状悪化リスクが最も高かった。本研究結果は、Scientific Reports誌2023年2月2日号に掲載された。

 インターネット調査会社に登録中の日本の一般住民から、日本の人口分布に沿って無作為に選定された16~81歳の参加者3万130人を対象として、2022年2月にオンライン調査を実施した(JASTIS 2022研究)。加熱式タバコを含むタバコの使用状況と、2020年と2021年のSARS-CoV-2感染および感染時の症状悪化(入院、酸素投与)の有無、感染および悪化と関連しうる項目を抽出し、その関係性について多変量ロジスティック回帰分析を用いて解析した。

 主な結果は以下のとおり。

・対象者のうち、24.3%が現在タバコを使用し、使用者のうち21.2%が加熱式タバコを単独で、30.1%が燃焼式タバコとの併用で使用していた。
・タバコ非使用者と比較したSARS-CoV-2感染のオッズ比は、加熱式タバコ単独使用者(調整オッズ比[aOR]:1.65、95%信頼区間[CI]:1.26~2.15、p<0.001)および加熱式タバコと燃焼式タバコの併用者(aOR:4.66、95%CI:3.89~5.58、p<0.001)で有意に高かったが、過去喫煙者と燃焼式タバコ単独使用者では有意差が認められなかった。
・SARS-CoV-2感染者で2020年と2021年の2年とも感染した20例を除いた1,097例の解析において、タバコ非使用者と比較した入院のオッズ比は、加熱式タバコと燃焼式タバコの併用者のみで有意に高く(aOR:3.17、95%CI:2.11~4.77、p<0.001)、過去喫煙者、燃焼式タバコ単独使用者、加熱式タバコ単独使用者では有意差が認められなかった。
・酸素投与に関して、タバコ非使用者と比較したオッズ比は、過去喫煙者(aOR:1.88、95%CI:1.11~3.19、p=0.019)、燃焼式タバコ単独使用者(aOR:3.17、95%CI:1.77~5.67、p<0.001)、加熱式タバコ単独使用者(aOR:1.90、95%CI:1.01~3.59、p=0.048)、加熱式タバコと燃焼式タバコの併用者(aOR:4.15、95%CI:2.70~6.36、p<0.001)のいずれにおいても有意に高かった。

 研究グループは、本研究結果について「燃焼式タバコのCOVID-19感染時の症状悪化に関するリスクが再確認され、新たに加熱式タバコの使用(とくに燃焼式タバコとの併用)がCOVID-19感染時の症状悪化に関連することが示唆された」とまとめ、加熱式タバコが拡大している日本の現状を踏まえ、COVID-19流行下におけるタバコ使用行動の安全性を考えるきっかけとなるだろうと述べている。

(ケアネット 佐藤 亮)