国内での3回接種によるBA.5への有効性など追加、コロナワクチンに関する提言(第5版)修正版/日本感染症学会

提供元:ケアネット

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公開日:2022/09/07

 

 日本感染症学会(理事長:四柳 宏氏[東京大学医科学研究所附属病院長])は、8月30日に同学会のホームページで「COVID-19ワクチンに関する提言」の第5版を一部変更・加筆した第5版修正版を公開した。

 今回の修正版では、わが国におけるBA.5に対する3回目接種の有効性や5~11歳へのワクチンの有効性の情報を追加したほか、現時点の知見を追加している。

修正版の主な改訂点

【1. わが国で承認されているCOVID-19ワクチン】
・5~11歳への接種にも努力義務を課すことが決定され、臨時接種対象者すべてに努力義務が課されることになった。
・COVID-19ワクチンは他のワクチンと13日以上の間隔をあけて接種することとされていたが、インフルエンザワクチンに関しては接種間隔に関する制約がなくなり、同時接種も可能となった。

【2. mRNAワクチンの有効性】
(d. 3回目接種の有効性)
 実社会でのBA.5に対するワクチン効果は、国内の16歳以上1,547人を対象としてBA.5流行中の7月に行われた症例対照研究の暫定結果が国立感染症研究所から発表された。これによると、mRNAワクチンを主体とするCOVID-19ワクチンの発症を指標とした有効率は、未接種者と比べて3回接種14日~3ヵ月で65%、3回接種後3ヵ月以降で54%で、2回接種と比較した3回接種の相対的な有効率も、3回接種14日~3ヵ月で46%、3回接種後3ヵ月以降で30%と、BA.5に対しても3回接種による有意な発症予防効果がみられている。

(e. 4回目接種の有効性)
 2022年7月22日に4回目接種の対象が18~59歳の医療従事者と高齢者施設などの従事者にも拡大。イスラエルの3万人弱の医療従事者を対象としたコホート研究では一定の発症予防効果があることが報告されている。これによると、オミクロン株流行下のブレークスルー感染率が、3回接種群では20%だったが、4回接種群では7%に減少していた。調整後のハザード比(HR)は0.56(95%CI:0.50~0.63)となり、4回目接種で発症リスクが約半分になることから、院内感染防止のためにも医療従事者などへの4回目接種が勧められる。

(f. 5~11歳への接種の有効性)
 小児の年代でファイザーのワクチン2回接種の有効性が報告され、シンガポールからはPCRで確認した感染予防効果が65.3%、入院予防効果が82.7%、イスラエルからは2回接種7~21日後の発症予防効果が48%とある。また、イタリアにおける後方視的研究では、感染予防効果が29.4%、重症化予防効果が41.1%、感染予防効果は2回接種後0~14日後の38.7%から43~84日後には21.2%に低下することが報告されている。これらの報告、とくに小児のCOVID-19の重症化予防効果が示されたことを踏まえて、日本小児科学会は「5~17歳の小児への新型コロナワクチン接種に対する考え方」で、健康な小児へのワクチン接種は「意義がある」から「推奨します」という表現に変更した。

【4. 組換えタンパク質ワクチン ノババックスのヌバキソビッド(商品名)筋注】
(b. 安全性)
 心筋炎・心膜炎の有害事象は2022年7月10日時点で国内での報告はなし。一方、海外ではきわめてまれながら報告されているため、7月に添付文書の「重要な基本的注意」に心筋炎・心膜炎の報告があることが追加された。

【6. COVID-19ワクチンの開発状況と今後の展望】
・22年7月にファイザーから6ヵ月から5歳未満へのmRNAワクチンの承認申請が行われた。
・武漢株とオミクロン株をもとにしたファイザーとモデルナの2価mRNAワクチンの臨床試験も開始され、2022年秋には実用化を目指して国内外で開発が進んでいる。わが国でも8月にファイザーが12歳以上、モデルナが18歳以上を対象とした2価ワクチン(武漢株とオミクロン株BA.1)の承認申請を行った。

(ケアネット)

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