新型コロナ感染のがん患者の15%に後遺症、生存率にも影響

提供元:ケアネット

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公開日:2021/12/21

 

 がん患者がCOVID-19に感染した場合の後遺症の有病率、生存率への影響、回復後の治療再開と変更のパターンを調べた研究結果が、2021年11月3日のThe Lancet Oncology誌に掲載された。

 本研究は、固形がんまたは血液がんの既往歴があり、PCR検査でSARS-CoV-2感染が確認された18歳以上の患者を登録する欧州のレトロスペクティブ試験で、ベルギー、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、英国の35施設で患者が登録された。2020年2月27日~2021年2月14日にSARS-CoV-2感染と診断され、2021年3月1日時点でレジストリに登録された患者を解析対象とした。

 COVID-19による後遺症の有病率を記録し、それらの発症に関連する因子とCOVID-19後の生存率との関連を検討した。また、COVID-19診断後4週間以内に治療を受けた患者の全身性抗がん剤治療の再開についても評価した。

 主な結果は以下のとおり。

・2,795例が登録され、2,634例が解析対象となった。1,557例のCOVID-19生存者が、がん診断から中央値22.1ヵ月(IQR:8.4~57.8)、COVID-19診断から44(28~329)日後に再評価を受けた。なお、COVID-19ワクチンを少なくとも1回接種していたのは178例(7%)に過ぎず、そのすべてがCOVID-19回復後の接種であった。
・234例(15.0%)がCOVID-19による後遺症を報告し、その中には呼吸器症状(116例[49.6%])と残存疲労感(96例[41.0%])が含まれていた。後遺症は、男性(対女性:p=0.041)、65歳以上(対その他の年齢層:p=0.048)、2つ以上の併存疾患(対1つまたはなし:p=0.0006)、喫煙歴あり(対喫煙歴なし:p=0.0004)に多く認められた。後遺症は、COVID-19による入院(p<0.0001)、COVID-19の合併症(p<0.0001)、COVID-19の治療(p=0.0002)と関連していた。
・COVID-19感染後の追跡調査期間の中央値は128(95%CI:113~148)日で、再評価までの期間、性別、年齢、併存疾患の負担、腫瘍の特徴、抗がん剤治療、COVID-19の重症度を調整後、COVID-19の後遺症は死亡リスクの増加と関連していた(ハザード比[HR]:1.80[95%CI:1.18~2.75])。
・全身性抗がん剤治療を受けている466名例のうち、70例(15.0%)が治療を永久的に中止し、178例(38.2%)が用量またはレジメン調整により治療を再開した。永久的な治療中止は死亡リスクの増加と独立して関連していたが(HR:3.53 [95% CI:1.45~8.59])、用量やレジメンの調整は関連していなかった(0.84[0.35~2.02])。

 研究者らは、「COVID-19を生き延びたがん患者の15%が、幅広い後遺症(最も多いのは疲労と呼吸器症状)を抱え、そうした患者は生存率が著しく劣り、全身性の抗がん剤治療を永久的に中止する可能性が高かった。生存率の低下につながるのは治療法の変更ではなく、恒久的な治療の中止のみであった。この結果は、COVID-19に対して臨床的に脆弱と考えられる患者集団を、積極的に管理し続ける取り組みを支持するものである」とまとめている。

(ケアネット 杉崎 真名)