痒みの悩みは軽そうでじつは重い問題/マルホ

マルホ株式会社は、同社の実施した「頭皮トラブルを抱える生活者実態調査の結果」がまとまったことから「頭部の皮膚炎特有の悩みがもたらすQOL への影響と治療法の広がり」をテーマにWEB上でメディアセミナーを開催した。
セミナーでは、調査結果の概要とともに最新の頭部皮膚炎の治療法などの説明が行われた。
頭皮トラブルで通院が必要とだと考えていない人が47%
はじめに「頭皮トラブルを抱える患者の実態とQOLへの影響」をテーマに江藤 隆史氏(あたご皮フ科 副院長)が講演を行った。頭皮のトラブルの原因となる疾患では、「アトピー性皮膚炎」、「脂漏性皮膚炎」、「接触皮膚炎」などが挙げられる。とくにアトピー性皮膚炎では、42%の患者が頭部・顔面・頸部に病変を有し、34%は頭部湿疹を有するとの報告もある。
今回の「頭皮トラブルを抱える生活者実態調査」は、全国の頭皮トラブルを抱える16~69歳の男女1,200名を対象にインターネットで行われた。
調査結果によると「頭皮トラブルを抱える人の割合」は20.7%で、人口割合に換算すると約1,700万人が同様の悩みを抱えていると推定される。
主な頭皮トラブルの症状は、「痒みのみ」(29.4%)が一番多く、つぎに「痒みとフケ」(15.8%)、「痒みとフケとぶつぶつ・炎症・赤み」(15.0%)が上位を占めた。
「悩んでいる期間」に注目してみると、たとえば回答数が1番多い「痒み」について回答者の59.6%が1年以上前から悩んでおり、解決策を見出せないという。
この「痒みの影響」について、とくに頭皮の痒みについての回答では、「気が付くとずっとかいている」と回答した人が36.9%、「眠れない、または眠りが浅い」と「じっとしていられない」が同数で22.6%の順で多く、日常生活で不便な生活をもたらす結果となっていることがわかった。また、関連として「フケ」について聞いたところ、「いつも洋服の肩口にフケが積もっている」が37.5%、「かみの毛に白く浮いているのが目立つ」が35.3%、「フケのために掃除が必要」が22.7%の順で多く、「頭皮の悩み」が「どのような精神的影響を与えているか」を聞いたところ「周囲の目が気になる」(24.0%)、「頭皮が気になり、集中できない」(21.4%)、「すべてに消極的になる」(15.8%)の順で回答が多かった。
こうした頭皮のトラブルへの対処について現在行っていることは「市販のシャンプーやコンディショナーをしっかり洗い流す」(41.8%)、「市販のシャンプーを変える」(33.9%)、「髪、頭皮の洗い方を変える」(27.8%)の順で多く、「病院に通う」は12.7%と医療機関に通院する人は少なく、また、「何も行っていない」という人も27.6%と多かった。「医療機関に通ったことがない」その理由としては、「通院するほどの症状ではないから」(47.0%)、「お金がかかってしまいそうだから」(34.6%)、「病気だと思っていないから」(30.4%)の順で多かった。
これらの調査から頭皮トラブルがある人は長期間悩みを抱えながらも、諦めている人が多く、そのトラブルゆえにQOLが低下している人が多いことが判明した。
江藤氏は、頭皮などのトラブルを放置したときの問題点として「症状の悪化」、「治療経過の悪化」、「脱毛や難治化」などを挙げ、「気になる症状があれば早めに皮膚科を受診して、正しい診断と治療を受けてほしい」と語り、説明を終えた。
頭皮トラブルをシャンプーで治療する
次に五十嵐 敦之氏(NTT東日本関東病院 皮膚科部長)が、「頭部の痒み/湿疹・皮膚炎の治療法の広がり ~実臨床における最新トピックス~」をテーマに頭皮トラブルの診療について説明した。頭部の痒み、フケなどを有する主な皮膚疾患としては、乾癬、湿疹・皮膚炎が代表であり、とくに皮膚炎では刺激物質との対応が明確な接触皮膚炎、光接触皮膚炎と刺激物質との対応が不明確なアトピー性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、貨幣状湿疹などがある。
たとえばアトピー性皮膚炎では、成長するにつれて軽快傾向を示すが最近では成人でも症状が残る例も増えている。一般的に痒みが強く、屈曲部、上肢、頭部、頸部、顔面などに多く発症する。そして、頭皮に長期にわたり持続すると、炎症性障害が毛球部にまで波及し、まれに休止期性脱毛に進展する。
こうした皮膚疾患には、ステロイド外用薬や抗ヒスタミンなどの内服薬が治療で使われ、アトピー性皮膚炎では免疫抑制剤や保湿剤が、脂漏性皮膚炎では抗真菌剤、非ステロイド性抗炎症剤外用薬、尿素外用薬、ビタミン剤なども治療で使用されている。同時にアトピー性皮膚炎では服や洗濯への配慮が、脂漏性皮膚炎ではストレス軽減、食事、嗜好品など日常生活での注意も必要とされている。
外用薬では、患者アンケートなどから「べたつき」「塗りにくさ」「垂れる」などの不満の声も聞かれ、患者の希望やライフスタイルの合わせた薬剤や剤形を選択しての治療が望まれている。
こうした声に対応するかたちで最近では、シャンプー剤による頭部の疾患(尋常性乾癬、湿疹・皮膚炎)に有用な治療法としてステロイドシャンプーによる“Short contact therapy”が保険適用となり、治療の幅は拡大している。
五十嵐氏も最後に「頭皮のトラブルはQOLに影響するため、気になる症状があれば、早めの皮膚科受診をしてほしい」と専門医への診療を促し、説明を終えた。
(ケアネット 稲川 進)
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