日本における認知症への呼称変更による家族の感情変化への影響

認知症に対する差別やスティグマを減らすことは、国際的な問題である。日本では、2004年に「痴呆」から神経認知障害に近い「認知症」へ呼称変更を行った。筑波大学の山中 克夫氏らは、認知症患者の家族の観点から、現在の用語がうまく機能しているかを横断的に調査し、感情に影響を及ぼす因子(認知症患者の周囲の人の気持ち、家族や患者の属性)を見つけるため、検討を行った。Brain and Behavior誌オンライン版2020年12月21日号の報告。
3つの病院を受診した認知症患者に同行するその家族155人を対象に、認知症の呼称と患者の周囲の人の気持ちについて調査を行った。認知症の呼称に対する不快感の程度を分析した。探索的因子分析より抽出した感情の構成概念と属性との関係を分析するため、構造方程式モデリングを用いた。
主な結果は以下のとおり。
・「認知症」は「痴呆」よりも不快感が少ないと回答した人は、71.6%であった。
・「認知症」は差別的であると考えていた人は、13.2%であった。
・しかし、対象者の約3分の1は、「認知症」でも不快感があると回答した。
・構造方程式モデリング分析では、「認知症」に対するネガティブな感情に影響を及ぼす因子は若い家族、妻、夫、きょうだいが家族の認知症を周囲に開示することへのためらいであった。
・認知症を周囲に開示することへのためらいを緩和する因子は、性別(女性)であった。
著者らは「厚生労働省が以前に調査した結果と比較し、今回の結果は全体として、認知症患者の家族における不快感の軽減がうまくいっていることが示唆されている。しかし、依然としてスティグマを感じている家族は存在する。そのため、影響する因子を考慮した新たな政策が求められる」としている。
(鷹野 敦夫)
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