コロナ禍で増えた失業・自殺・労災請求、今後の見通しは?/日医

提供元:ケアネット

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公開日:2020/12/30

 

 日本医師会・松本 吉郎常任理事が、コロナ禍における今日の社会経済情報として、失業、自殺、労災認定などのデータを示しながら、日本医師会の見解を述べた。

自殺者増は5ヵ月連続、失業率の上昇で今後さらに増える可能性も

 まず、完全失業率(季節調整値)のデータを示し、本年10月は男3.4%、女2.7%(男女計3.1%)と、コロナ流行以前の1月(男2.4%、女2.2%、平均2.2%)と比較して高い状況にあることを説明。完全失業者のうち、「勤め先や事業の都合による離職」は45万人と、前年同月に比べ22万人増加している。割合としては男性より低い女性も、完全失業者数は「15~24歳」を除くすべての年齢階級で前年同月に比べ増加していることを示した。

 月別自殺者数の推移においては、5ヵ月連続で前年を上回っており、新型コロナ流行の長期化で生活苦や家庭などの悩みが深刻化していると分析。6月の緊急事態宣言の解除後にとくに増加していることを指摘し、その要因としては、コロナ禍で浮き彫りになった女性の非正規雇用者の失業やDVの相談件数の増加などが影響している可能性があるとした。

 松本氏は、今後の見通しとして、失業率が1%増えると自殺者総数が1,000~2,000人増えるとの報告もあることに触れ、「コロナ感染そのものによる死亡者数よりも、数では大きくなることが想定される。また、失業率増加の後を追って自殺者数が増加することが多いため、雇用を守ることが命を守ることにつながることの啓発、失業者対策などの十分な広報、その不安に対するメンタルヘルスの実施と長期的継続が必要」との考えを示した。

医療従事者はメンタルヘルスのハイリスク、新型コロナ感染も労災請求可能

 新型コロナウイルスに関する労災請求件数は、医療従事者などで1,705件(医療業では1,332件)に上っている。なお、請求に対しては、業務外で感染したことが明らかである場合を除き、原則として労災保険給付の対象とされる。厚生労働省は、集団感染が起きた事業所などは、積極的に労災申請するように求めている。

 医療・介護従事者などは、従来から精神障害での労災が多いなど、メンタルヘルスの影響を受けやすいハイリスクとされており、日本医師会は、コロナ禍で過重な身体的・精神的ストレスが加わっていることに懸念を表明した。松本氏は、今後も日本医師会として、社会経済状況を鑑み、産業医の支援など、社会貢献していく姿勢を示した。

(ケアネット 堀間 莉穂)