腎性貧血患者に新たな治療選択肢を提供/グラクソ・スミスクライン

提供元:ケアネット

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公開日:2020/07/07

 

 6月29日、グラクソ・スミスクライン株式会社は、腎性貧血の経口低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素阻害薬ダプロデュスタット(商品名:ダーブロック)の製造販売承認を世界に先駆け、日本で最初に取得したと発表した。

腎障害で苦しむ患者は約1,100万人

 腎臓は、エリスロポエチンなどのホルモンを産生することで赤血球の産生を促進するが、腎障害を有する患者では腎臓が十分な量のエリスロポエチンを産生できなくなることから、腎性貧血がよく起こる。また、腎機能の低下に伴い、腎性貧血の有病率も高くなる。現在は、主に赤血球造血刺激因子(ESA)注射剤による治療が行われている。

 現在わが国では慢性腎臓病(CKD)ステージ3~5の患者は1,090万人推定され、このうち約32%に貧血が見られるという。世界中では10人に1人がCKDに罹患しているとされており、2017年には本症が原因で100万人を超える人々が亡くなっている。

経口投与で患者のアドヒアランスを向上させ得る

 今回製造販売承認されたダプロデュスタット(以下「本剤」という)は、経口の低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素の阻害薬で、透析の有無に関わらず、成人の腎性貧血を効能・効果とした治療薬。酸素を検知するプロリン水酸化酵素を阻害することで、低酸素誘導因子を安定化し、高地で身体に生じる生理学的作用と同様に、赤血球産生や鉄代謝に関与するエリスロポエチンやその他の遺伝子の転写を誘導すると考えられている。本剤は、ESA注射剤と異なり、経口投与が可能で、低温保管の必要性がない新しい治療選択肢として開発された。

 今回の承認は、主にわが国で実施された第III相試験における有効性および安全性の結果に基づいており、国内で実施された3つの第III相試験の概要は以下の通り。

•ESA注射剤で治療中の血液透析患者271例を対象とした52週間のダプロデュスタットとダルベポエチンアルファ(遺伝子組換え)の比較試験
•CKDステージ3~5の保存期患者(ESA注射剤による治療の有無は問わない)299例を対象とした52週間のダプロデュスタットとエポエチンベータペゴル(遺伝子組換え)の比較試験。この試験には、腹膜透析患者56例も含まれる(全例がダプロデュスタットを投与)
•ESA注射剤で治療されていない血液透析患者28例を対象とした24週間の試験(全例がダプロデュスタットを投与)

 これらのほか、現在、心血管イベントを評価項目とする2つのアウトカム試験ASCEND-DとASCEND-NDを含むグローバル第III相プログラムが進行中であり、これらの試験結果は世界各国における承認申請に使用される予定。

ダーブロックの概要
製品名:「ダーブロック錠」(1mg・2mg・4mg・6mg)
一般名:ダプロデュスタット
効能または効果:腎性貧血
用法及び用量:
[保存期慢性腎臓病患者]
・赤血球造血刺激因子製剤で未治療の場合
 通常、成人にはダプロデュスタットとして1回2mgまたは4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。
・赤血球造血刺激因子製剤から切り替える場合
 通常、成人にはダプロデュスタットとして1回4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。
[透析患者]
 通常、成人にはダプロデュスタットとして1回4mgを開始用量とし、1日1回経口投与する。以後は、患者の状態に応じて投与量を適宜増減するが、最高用量は1日1回24mgまでとする。
承認取得日:2020年6月29日
製造販売:グラクソ・スミスクライン株式会社
販売:協和キリン株式会社
なお、薬価・発売日は未定。

(ケアネット 稲川 進)