がん患者の脳卒中リスクに化学療法は影響するか

提供元:ケアネット

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公開日:2020/04/20

 

 化学療法はがん関連脳卒中の原因となる可能性があるが、脳卒中リスクを高めるかどうかは不明である。今回、大阪大学の北野 貴也氏らが脳卒中リスクへの化学療法の影響を調べたところ、化学療法を受けたがん患者の脳卒中リスク上昇はがんの進行が原因と考えられ、化学療法と脳卒中リスク増加は関連していないことが示唆された。Thrombosis and Haemostasis誌2020年4月号に掲載。

 著者らは、2007~15年にスクリーニングされた病院ベースのがんレジストリ(大阪大学病院でがんの治療を受けた全患者の臨床データを含む)における2万7,932例のうち、データが揃っている1万9,006例の診療記録を調査した。検証済みのアルゴリズムを使用し、がんの診断から2年以内の脳卒中イベントを同定した。最初の治療計画における化学療法の有無により患者を分け、カプランマイヤー法と層別Cox回帰モデルを用いて化学療法と脳卒中との関連を調べた。

 主な結果は以下のとおり。

・1万9,006例のうち化学療法群は5,887例(31%)であった。
・脳卒中は化学療法群44例(0.75%)および非化学療法群51例(0.39%)で発生した。
・カプランマイヤー曲線では、化学療法群が非化学療法群よりも脳卒中リスクが高かった(ハザード比[HR]:1.84、95%信頼区間[CI]:1.23~2.75)が、がんの病期を調整するとこの差は有意ではなくなった(HR:1.20、95%CI:0.76~1.91)。
・層別Cox回帰モデルでも、がんの病期を調整すると化学療法と脳卒中に関連がみられなかった(HR:1.26、95%CI:0.78~2.03)。

(ケアネット 金沢 浩子)