MADRSとHAMDの新規抗うつ薬の有効性に関する比較~メタ解析

ハミルトンうつ病評価尺度(HAMD)に基づく有効性の推定は、その貧弱な心理測定特性のために、抗うつ薬の真の治療効果を過小評価している可能性があるといわれている。スイス・Zurich University of Applied SciencesのMichael P. Hengartner氏らは、ゴールデンスタンダードであるMontgomery Asbergうつ病評価尺度(MADRS)とHAMDに基づく有効性の推定値の比較を行った。PLOS ONE誌2020年2月26日号の報告。
MADRSとHAMDに基づく抗うつ薬の有効性の推定値に有意な差はない
Ciprianiらから提供された急性期における抗うつ薬試験の包括的なデータセットを用いて、メタ解析を実施した。対象研究は、HAMD-17またはMADRSに基づき継続的にアウトカムを測定したプラセボ対照試験とした。エフェクトサイズ推定値の標準化平均差と薬剤とプラセボの生スコアの差を算出し、臨床医の評価による最小改善(臨床的に有意)の閾値を評価した。MADRSとHAMDに基づく抗うつ薬の有効性の推定値の比較を行った主な結果は以下のとおり。
・HAMD-17で評価した109試験(3万2,399例)およびMADRSで評価した28試験(1万1,705例)が抽出された。
・サマリ推定値(エフェクトサイズ)は、HAMD-17で0.27(0.23~0.30)、MADRSで0.30(0.22~0.38)であり、その差はわずか0.03であった。サブグループ解析(p=0.47)およびメタ回帰(p=0.44)による統計学的に有意な差は認められなかった。
・薬剤とプラセボの生スコアの差は以下のとおりであった。
●HAMD-17:2.07(1.76~2.37)、最小改善の閾値:臨床医7pt、患者4pt
●MADRS:2.99(2.24~3.74)、最小改善の閾値:臨床医8pt、患者5pt
著者らは「全体として、HAMD-17とMADRSの有意な差が認められなかった。HAMD-17による評価が抗うつ薬の治療効果を過小評価しているわけではない。また、薬剤とプラセボの生スコアの差は、治療効果がわずかであることを示しており、平均的な患者にとって治療効果の重要性が疑わしいことが示唆された」としている。
(鷹野 敦夫)
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