HIV患者のがん治療、免疫モニタリングが有益/JAMA Oncol

提供元:ケアネット

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公開日:2019/12/20

 

 抗ウイルス療法を受ける成人HIV患者のがん治療について、免疫モニタリングの有益性が、がん治療後の死亡率に関する定量化研究により明らかにされた。米国・ジョンズ・ホプキンズ・ブルームバーグ公衆衛生大学院のKeri L. Calkins氏らによる検討で、化学療法および/または放射線療法は、手術またはその他の治療を受けた場合と比べて、施術後早期のCD4細胞数を有意に減少させること、その数値の低さと死亡率増大は関連することが示されたという。JAMA Oncology誌オンライン版2019年12月5日号掲載の報告。

 研究グループは、がん治療を受けるHIV患者の免疫低下とがん治療との関連は十分に特徴付けられていないことに着目し、がん治療ガイドラインに反映させうる検討として、がん治療に関連した免疫抑制と過剰死亡率の関連性の定量化を試みた。HIV患者のがん治療とCD4細胞数およびHIV RNA値の関連性、治療後CD4細胞数およびHIV RNA値の推移と全死因死亡との関連を推算した。

 検討は観察コホート試験にて、1997年1月1日~2016年3月1日にジョンズ・ホプキンズHIVクリニックの治療を受けていた成人HIV患者で、初発のがんを有し、がん治療のデータを入手できた196例を対象に行われた。

 試験では、化学療法および/または放射線療法は、手術またはその他の治療と比べて、(1)忍容性の問題によりHIV RNA値を増大する、(2)CD4細胞数の初期の減少幅が大きい、(3)減少したCD4細胞数の回復に時間がかかる、さらに(4)CD4細胞数の減少は、ベースラインのCD4細胞数、抗ウイルス薬の使用、罹患したがんのリスクとは独立して、高い死亡率と関連するとの仮説を立てて検証した。

 被験者は、がん種別の初期治療(化学療法および/または放射線療法vs.手術またはその他の治療)を受けた。主要評価項目は、がん治療後のCD4細胞数の推移、HIV RNA値の推移、全死因死亡率であった。

 データ解析は2017年12月1日~2018年4月1日に行われた。

 主な結果は以下のとおり。

・被験者196例は、男性135例(68.9%)、年齢中央値50歳であった。
・化学療法および/または放射線療法について、ベースラインCD4細胞数が500個/μL超の患者では、治療後の初期細胞数が203個/μL(95%信頼区間[CI]:92~306)減少した。
・一方、ベースラインCD4細胞数が350個/μL以下の患者における減少は、45個/μLであった(相互作用推定値:158個/μL[95%CI:31~276])。
・化学療法および/または放射線療法は、HIV RNA値に有害な関連は示さなかった。
・初期のがん治療後、CD4細胞数100個/μL低下につき、死亡率は27%増大することが示された(ハザード比:1.27、95%CI:1.08~1.53)。

(ケアネット)