持続する疲労感は成長ホルモン不全症(AGHD)のせい?

提供元:ケアネット

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公開日:2019/07/10

 

 ノボ ノルディスク ファーマ株式会社は、都内で成人の成長ホルモン分泌不全症(AGHD)に関するプレスセミナーを開催した。

 セミナーでは「成人成長ホルモン分泌不全症(AGHD)とは」をテーマに、亀田 亘氏(山形大学医学部付属病院 第三内科 糖尿病・代謝・内分泌内科)を講師に迎え、なかなか診療まで結びつかない本症に関し、症状、診断と治療、患者へのフォローなどが紹介された。

成長ホルモンが不足するとAGHDを来す

 成長ホルモン(以下「GH」と略す)は下垂体で作られ、20歳くらいまで多く分泌され、それ以降は低下する。そして、下垂体で作られたGHは、静脈血に乗って、さまざまな標的器官に運ばれ、次のように作用する。

・脳:思考力、意欲、記憶力を高める作用
・軟骨・骨:正常な軟骨・骨の成長と強固な骨構造、骨量を維持する作用
・心・骨格筋:心筋の強度・機能を高め、心臓の駆出機能を維持する作用
・免疫系:免疫機能を亢進する作用
・脂肪組織:脂肪代謝を促す作用
・肝臓:糖新生作用の促進、IGF-1産生を促す作用
・腎臓:水、電解質の調節作用
・生殖器系:精巣・卵巣の正常な成長・発達を促進し、生殖機能を維持する作用

 GHが不足するとAGHDを来し、亢進すると先端巨人症などの疾患を来すためにGHはバランスよく分泌される必要がある。

AGHDは疲労感、集中力の低下などの日常の症状から疑う

 AGHDの主な症状として(詳細は『成人成長ホルモン分泌不全症の診断と治療の手引き(平成24年度改訂)』を参考)、疲労感、集中力の低下、うつ状態、皮膚の乾燥、体型の変化、骨量の低下、サルコペニア、脳腫瘍の合併などがある(小児発症では成長障害を来す)。

 そして、AGHDの原因としては、脳の腫瘍や頭部外傷、中枢神経の感染症が考えられ、腫瘍によるものが多いという。

 AGHD診断では、先述の臨床所見のほか、インスリン、アルギニン、L-DOPAなどの負荷によるGH分泌刺激試験の結果と合わせて診断されるほか、同時に重症度も判定される。

 AGHD治療では、ソマトロピン(商品名:ノルディトロピンほか)などGH補充療法が行われている。わが国では、1975年から成長ホルモン分泌不全性低身長症の治療にGH補充療法が開始され、1998年にコンセンサスガイドラインができたことで世界的な治療へと拡大した。AGHDには 2006年から適応となり、現在もさまざまなGH関連疾患への適応が続いている。

 患者フォローについては、AGHDは指定難病に指定され、医療費のサポートなどが受けられるほか、成長科学協会などの研究団体、下垂体患者の会などの患者会があり、疾患・治療に関する情報の提供・啓発などが行われている。

(ケアネット 稲川 進)