臨床研究法、J-CLEARメンバーも対応に苦戦

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ケアネット

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 臨床研究法が施行されて早1年。2019年3月までは移行期間ということもあり、倫理委員会への登録などで忙殺された方が多かったようだ。本年4月からの新たな申請はこれまでに比べ、少ないというが、日本の臨床研究は法律に則り、滞りなく進んでいるのだろうか。NPO法人 臨床研究適正評価教育機構(J-CLEAR/理事長 桑島 巖氏)は2019年4月20日、都内においてJ-CLEAR講演会を開催。6名の先生が特定臨床研究の現状や糖尿病領域の臨床試験の変遷などについて発表した。

 本稿では、第1部「特定臨床研究法施行のあとさき」の話題をお届けする。

“医の倫理”は産業としての医療から生まれた
 「特定臨床研究法、ここが問題-現場から」について発表した植田 真一郎氏(琉球大学医学研究科臨床薬理学講座 教授)は、世界初の倫理委員会発足から日本で臨床研究法が施行するまでの変遷について紹介。

 天然痘が流行した時代、被験者保護の概念は乏しく、脆弱な人々は研究者自身の好奇心を満たす対象とされていた。これに対し、ヘンリー・K・ビーチャーが臨床研究における倫理指針を提唱、臨床研究を規制するためのNational Research Act(1974年)やベルモント・レポート(1979年)が作成されるようになり、医療の産業化と共にCOIの概念が発達していった。

 ところが、産業としての医療が発達していく中でCOIの問題がますます表面化し、さらには「me too drug」の概念から企業による販売促進のための研究が拡大していったという。近年の日本の現状として、「倫理審査委員会を通過すればなんとかなると考え、“研究計画書の改定を倫理委員会に届けない”人々」の存在についてコメント。これを問題視した植田氏は、「臨床研究法施行によって計画書の改訂報告が義務付けられたことは良い」と述べた。

“臨床研究法”はCOIを守り患者を保護する法律なのか?
 臨床研究法が策定された背景には、未承認薬・適応外薬の臨床試験の枠組みはもちろんのこと、「臨床研究として有効性や安全性に対する試験デザインが適切になされているか、将来の患者さんを守るためのものになっているかが一番重要なことである」と植田氏は述べ、「最善の研究デザイン、研究計画について思考停止せずに考え続けること」を強調した。

 臨床研究法を守ればなんでもやって良いわけではないことを再認識する必要がありそうだ。

臨床研究法の矛盾
 山本 晴子氏(国立循環器病研究センター・臨床試験推進センター長)は医療機器における観察・介入研究の判別の難しさについて、ロボットスーツを例に示した。このロボットスーツは医療機器としても福祉用具としても販売されているが、福祉用具としてのロボットスーツを脳梗塞患者のリハビリに診療で使用するとなると、特定臨床研究が必要になるのだという。これに対し山本氏は、「研究の“意図”に少しでも“治療”の匂いがすると法律を適用するのは、過剰規制ではないか?」と問題提起。このほか、医薬品と医療機器を同列に扱う点についても“国際的なズレ”を指摘し、「臨床研究法は『臨床指針』と隔絶しており、研究者が理解に苦しい」といった点を強く訴えた。

コホート研究の本来の意味とは?
 近年、なぜここまで多くの臨床試験が糖尿病領域においてなされているのか。景山 茂氏(東京慈恵会医科大学 特命教授)は、「患者の選択基準において、さまざまな薬剤を服用している患者やハイリスク患者を除外してはいけない」などの2008年にFDAが提言した5TOOsを挙げ、臨床研究に対する歴史的背景から覚えきれない程の臨床試験で溢れるようになった現況を説明し、臨床研究法の演題から第2部の「相次ぐ糖尿病新規治療薬:助っ人、それとも敵?」に繋げる役割を担った。

(ケアネット 土井 舞子)

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