続々と選択肢増、慢性便秘症治療の最新事情

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 相次いで新薬が登場している慢性便秘症治療で、各治療薬はどのように使い分けていけばよいのか。9月11日、都内で慢性便秘症治療の最新事情をテーマとしたプレスセミナーが開催された(主催:アステラス製薬株式会社)。演者として登壇した三輪 洋人氏(兵庫医科大学 内科学消化管科 主任教授)は、「便秘は治療満足度に対する医師と患者側のギャップが大きい。単純に排便回数を改善するだけでなく、症状を改善していく治療が求められている」と話し、便秘治療の考え方や各治療薬の特徴について解説した。

医師は排便回数の減少を、患者は腹部の膨満感を重視
 慢性便秘症の診療を行っている医師400人と、症状が6ヵ月以上あり通院あるいは市販薬を服用している患者700人を対象とした2017年の調査1)で、医師が診断にあたり重視する項目は多い順に、「排便回数の減少」「便の硬さ」「排便困難」であった。一方、患者側は「腹部の膨満感」「排便回数の減少」「便の硬さ」の順に回答が多く、特に腹部症状を改善したいと感じていることが明らかになった。

 また、各薬剤(上皮機能変容薬は含まれていない)について満足度をたずねたところ、浸透圧性下剤で80%以上など医師の満足度がおおむね高かったのに対し、患者側では全薬剤で50%以下となり、医師と比較すると圧倒的に低い傾向がみられた。

 三輪氏は、「われわれはつい、“週2回だった排便が4回になりましたか、よかったですね”と排便回数を治療の目安としてしまいがちだが、患者さん側は症状を改善したいと感じている。漫然と治療を続けるのではなく、どうしたら症状がとれるのかという観点からも治療を考えていかなければいけない」と話した。

慢性便秘症の薬物療法、ガイドラインでの推奨は?
 慢性便秘症の薬物療法について、まず前提として、骨盤底筋の機能障害に起因する便排出障害型の便秘には効果がなく、リハビリ療法の一種であるバイオフィードバック療法の有効性が確立されていることに三輪氏は言及。「2時間以上もトイレにこもる、手でかき出さないと出せないなど、排便の困難感が極度に強い患者さんは、便排出障害型の可能性がある」と話した。

 2017年10月発行の「慢性便秘症診療ガイドライン2017」では、複数ある薬剤の中で、浸透圧性下剤(酸化マグネシウム、ラクツロース、ソルビトールなど)と上皮機能変容薬(ルビプロストン、リナクロチドなど)に、「強い推奨(1)」と「最も高いエビデンスレベル(A)」が示されている。

 しかし、兵庫医科大学の関連病院で2017年10月~2018年2月にかけて薬剤の使用状況を調べたところ、酸化マグネシウムと刺激性下剤の使用が90%以上を占めており、上皮機能変容薬の使用は数%に留まっていた。「市販薬や一部の漢方薬(“大黄”が含まれるもの)を含む刺激性下剤は、一時的な効果はあるが習慣性や依存性があるため、短期間の投与とすることがガイドラインでも推奨されている」と三輪氏。酸化マグネシウムについては、「今後も第一選択であることは変わらないだろう」としたうえで、副作用(高マグネシウム血症)が報告されており高齢者や腎機能低下患者では定期的な血清マグネシウム濃度の測定が求められていることから2)、「とくに高齢者などでは、漫然と酸化マグネシウムを投与するのではなく、効果や症状の改善がみられない場合は上皮機能変容薬に切り替えていくという考え方がいいのではないか」と話した。

新薬と既存薬をどのように使い分けるか
 2018年に入り、4月に胆汁酸トランスポーター阻害薬エロビキシバットが発売、8月には便秘型過敏性腸症候群の治療薬として発売されていたリナクロチドが慢性便秘症に適応拡大された。リナクロチドは2012年発売のルビプロストンと同じく、腸管上皮に直接作用して管腔内への水分分泌を促進する上皮機能変容薬だが、作用機序は異なる。

 リナクロチドは腸管上皮に存在するグアニル酸シクラーゼC(GC-C)を活性化させ、サイクリックGMP(cGMP)を増加させることで、水分分泌を増加させる。このcGMPには求心性神経の痛覚過敏を抑制するはたらきがあり、便秘治療薬の中で唯一、大腸痛覚過敏改善作用が示されている。三輪氏は「上皮機能変容薬の使い分けは非常に難しいが、それぞれ特徴はある」と話し、「リナクロチドは薬物相互作用が比較的少ないため、他剤を併用している高齢者などでも使いやすく、また腹痛などの症状が強い人に向いているのではないかと考えている」と期待感を示した。

 今後も新薬ラッシュは続く見込みで、ポリエチレングリコール(PEG)製剤が近く発売予定となっている。PEGは酸化マグネシウムと同じ浸透圧性下剤で、欧米では第一選択薬として広く使われている。「直接比較したデータはないのでどちらがいいと明言するのは難しいが、PEGは水に溶かして飲む形状なので、その点が日本の患者さんたちにどの程度受け入れられるかという部分もある」と話した。

■参考
1)三輪洋人ほか.Ther Res. 2017;38:1101.
2)医薬品・医療機器等安全性情報.No.328.2015.

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