認知症患者に水を飲ませるには?高齢者のかくれ脱水症対策

提供元:ケアネット

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公開日:2018/08/16

 

 連日の猛暑により熱中症患者が後を絶たない。総務省によると、今年度の全国の熱中症による救急搬送人員数は5万7,000人(7月29日時点)であり、昨年の同時期(3万1,000人超)と比較し2万人以上も多い。とりわけ高齢者の救急搬送者数は全体の50%以上を占め、対応が遅れた場合は入院どころか死に至るケースもあり、脱水や室温管理に対する早めの行動が鍵となる。2018年8月1日、教えて!「かくれ脱水」委員会が主催する「真夏の介護現場における高齢者の脱水対策セミナー」が開催され、秋山 正子氏( 株式会社ケアーズ 代表取締役、白十字訪問看護ステーション統括所長ほか)が訪問看護師の立場から警鐘を鳴らした。

室内でもあなどれないのが熱中症

 高齢者の熱中症は室内で多く起こっているケースが多く、以下に示す傾向の患者にとくに注意が必要である。

例)
・クーラーが嫌い、あっても使わない
・日頃から食事量が少なく、夏に向かうにつれ食事量が低下する
・防犯のために窓を閉める(足が悪く一階を居住とする場合が多いため)
・体温調節ができないため厚着をしている
・“トイレに行きたくなる”と極力水分摂取を避ける(とくに夜間)

高齢者の熱中症リスク

 高齢者は、 熱中症I度の症状である、1)大量の発汗、2)めまい、立ちくらみ、3)こむら返りを訴えることが多く、「同居家族や訪問者には高齢者のこれらの症状に十分注意してほしい」と同氏は訴えた。

訪問時にゼリータイプの経口補水液を

 また、在宅医療の現場における高齢者の救急搬送の原因は、発熱、脱水、誤嚥などがある。なかでも、脱水は重症化すると入院期間が長引き、廃用症候群や認知症の悪化が懸念されるため、日頃の予防が重要となる。訪問看護の現場では、「訪問した時すぐに補水が出来るように、補水液をかばんに常備しておくことを心がけている。その際、嚥下困難な場合も考慮し、ゼリータイプも準備している」と秋山氏は述べた。

水分補給を嫌がる認知症患者

 高齢者のなかでも認知症を発症している場合、われわれが思うように当事者は水分を摂取してくれない。同氏はその理由に、“1つのことに集中するとほかのことに手がつけられなくなる”ことを挙げ、「たとえば、市役所から封筒が届き、それを督促状と勘違いする。その勘違いが解決しないと、いくら水を飲むように勧めてもいっこうに飲もうとしない。つまり、その人が不安になっていることを1つずつ解決することが飲水への近道」であると、医療者や介護する側の“聞く姿勢”の重要性についても語った。

経口補水液のメリットと注意点

 最後に、秋山氏は「経口補水液には、梅干し1個分のナトリウムが含まれているため血圧や腎臓、心臓などの疾患を抱えている場合には、かかりつけ医に相談し、量を調節しながら与える工夫をしている。一見、認知症が疑われるような状態の方でも、経口補水液を与えることでシャキッとして、会話が可能になる場合がある。少しでもおや?と思ったら、いつでもどこでも与えるようにしている」と述べ、熱中症が疑われた場合には「水分・塩分の補給に加え、涼しい場所の確保、衣類を緩める、保冷剤などで脇の下など太い血管のある部分を冷やす。それでも改善しなければ救急受診を行う」など、病院受診までの応急処置についても呼びかけた。

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(ケアネット 土井 舞子)