世界貿易センターテロ事件後、アジア系アメリカ人において予想されるPTSDに関連する要因

提供元:ケアネット

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公開日:2018/04/12

 

 2001年9月11日に起こった世界貿易センターでのテロ事件では、チャイナタウンや南アジア人が多く働くセンター周辺の施設も被害にあった。しかし、アジア人を対象とした、テロ事件のメンタルヘルスへの影響に焦点を当てた研究は行われていなかった。米国・フォーダム大学のWinnie W. Kung氏らは、テロ被害を受けたアジア人を対象に、その後のPTSD(心的外傷後ストレス障害)の有病率、リスク、保護因子に関する調査を行った。Journal of urban health誌オンライン版2018年2月15日号の報告。

 世界貿易センター健康レジストリより収集されたテロ事件から2~3年後のアジア人4,721例を対象に、直接攻撃にさらされたアジア系アメリカ人におけるPTSDの有病率、リスク、保護因子に関するベースライン調査を実施し、非ヒスパニック系白人4万2,862例との比較を行った。

 主な結果は以下のとおり。

・アジア人のPTSD有病率(14.6%)は、白人(11.7%)と比較し高かった。
・多変量解析におけるPTSDに有意に関連する人種特異的要因は、社会人口統計学において以下の点が認められた。
 ●高等教育は、白人において保護因子であったが、アジア人ではリスク因子であった。
 ●雇用は、白人において保護因子であったが、アジア人では影響が認められなかった。
 ●移民であることは、白人においてリスク因子であったが、アジア人では影響が認められなかった。
 ●収入は、白人、アジア人ともに保護因子であった。
・災害曝露やPTSDのオッズ比を3.6~3.9倍に増加させる低呼吸器症状を含む、ほかの普遍的要因は、PTSD症状のオッズ比を有意に増加させたが、人種差は認められなかった。

 著者らは「アジア人がメンタルヘルスサービスを十分に活用していないという歴史的背景を考えると、アジア人のための予防とフォローアップ治療は不可欠である」としている。

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(鷹野 敦夫)