中等度~重度の混合性尿失禁を有し、保存的治療が奏効しなかった女性患者において、onabotulinumtoxin Aと中部尿道スリング手術は、6ヵ月時のUrogenital Distress Inventory(UDI)総スコアの改善に差はなかったことを、米国・ペンシルベニア大学のHeidi S. Harvie氏らが米国の7施設で実施した無作為化優越性試験「MUSA試験」の結果で報告した。腹圧性尿失禁(SUI)と切迫性尿失禁(UUI)が併存している混合性尿失禁は、生活の質を低下させ、管理が困難な場合が少なくない。これまで手技的治療の比較研究は不足していた。著者は、「今回の結果は、患者の好みと臨床医の推奨に基づく治療決定に役立つだろう」とまとめている。JAMA誌2025年5月5日号掲載の報告。
6ヵ月後のUDI総スコアの変化量を比較
研究グループは、SUIとUUIの中等度~重度の症状を3ヵ月以上有し、咳テスト陽性、3日間の排尿日誌に記録されたUUIエピソードが4回以上で、保存的治療および経口薬物療法の効果が得られなかった21歳以上の女性患者を、onabotulinumtoxin A群または中部尿道スリング手術群に1対1の割合で無作為に割り付けた。
onabotulinumtoxin A群では、100単位を膀胱筋層内に単回注入し、3~6ヵ月後に単回追加投与を可能とした。中部尿道スリング手術群では、介入を標準化するため単一切開は行わないこととした。また、両群とも割り付けられた介入以外の尿失禁治療は6ヵ月間行わず、6~12ヵ月後にクロスオーバーまたは他の治療を開始することができた。
主要アウトカムは、UDI総スコア(範囲:0~300点、高スコアほど症状の重症度が高い、臨床的に意義のある最小群間差[MCID]:26.1)で測定した6ヵ月時の混合性尿失禁症状の変化量であった。副次アウトカムは、3ヵ月時のUDI総スコアの変化量、および6ヵ月時のUDIストレススコアならびに刺激スコアの変化量とした。
UDI総スコアの改善、-66.8点vs.-84.9点で有意差なし
2020年7月~2022年9月に150例が無作為化され、このうち治療を受けかつベースライン後のデータを有していた137例が主要解析対象集団となった(平均[SD]年齢:59.0[11.5]歳)。最終フォローアップ日は2023年12月29日。
両群とも6ヵ月後にUDI総スコアの改善が認められたが、有意な群間差は認められなかった(onabotulinumtoxin A群-66.8点[95%信頼区間[CI]:-84.9~-48.8]vs.中部尿道スリング手術群-84.9点[-100.5~-69.3]、平均群間差:18.1点[95%CI:-4.6~40.7]、p=0.12)。
副次アウトカムでは、UDIストレススコアは中部尿道スリング手術群(-45.2点[95%CI:-53.7~-36.8])でonabotulinumtoxin A群(-25.1点[-34.1~-16.1])より有意な改善がみられたが(p<0.001)、UDI刺激スコアは有意な群間差は認められなかった(onabotulinumtoxin A群-32.9点[95%CI:-40.3~-25.6]vs.中部尿道スリング手術群-27.4点[-34.6~-20.3]、p=0.27)。
onabotulinumtoxin A群では、6ヵ月後に12.7%、12ヵ月後に28.2%が2回目の注射を受けた。また、12ヵ月後に中部尿道スリング手術群の30.3%がonabotulinumtoxin Aを、onabotulinumtoxin A群の15.5%が中部尿道スリング手術を受けた。
有害事象は、両群間に差はなかった。
(医学ライター 吉尾 幸恵)