加齢黄斑変性の発症に新たな知見

提供元:ケアネット

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公開日:2017/10/04

 

 加齢黄斑変性(AMD)患者の血漿中代謝物プロファイルは、非AMD患者と異なっており、多くの重大な代謝物がグリセロリン脂質経路に認められることを、米国・ハーバード大学医学大学院のInes Lains氏らが、質量分析法を用いたメタボローム解析により明らかにした。著者らは、「今回得られた知見は、AMDの発症原因に関する理解を深め、AMDの血漿中代謝バイオマーカーの開発を支援し、新しい治療ターゲットを特定できる可能性を示唆するものであった」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2017年8月31日号掲載の報告。

 研究グループは、AMD患者における血漿中代謝物質のプロファイルを、質量分析により特徴づける横断観察研究を行った。AMD患者と網膜硝子体疾患のない50歳超の対照者を前向きに集めて登録。全被験者についてカラー眼底写真撮影を行い、Age-Related Eye Disease Study分類法に従ってAMDの診断と分類を行った。また、空腹時に血液を採取し、Metabolon社(ノースカロライナ州ダーラム)で超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)および高解像度質量分析計を用い血漿を分析した。

 潜在的交絡因子を調整した主成分分析と多変量回帰分析により、AMD患者と対照者のメタボロームプロファイルの違いを評価するとともに、生物学的解釈に関し、MetaboAnalystを用いた重要な代謝物のパスウェイエンリッチメント解析を行った。

 主要アウトカムは、血漿中代謝物濃度のAMD患者と対照者との比較、ならびにAMDのステージ分類別の比較であった。

 主な結果は以下のとおり。

・解析対象は、AMD患者90例(初期AMD 30例、中期AMD 30例、後期AMD 30例)と、対照30例であった。
・UPLCおよび質量分析により、878個の生化学物質が確認された。
・多変量ロジスティック回帰分析の結果、AMD患者と対照者の間で血漿中濃度に有意差を認めた87個の代謝物を同定した。
・これら代謝物の多く(87個のうち72個、82.8%)は、重要な代謝物であり、脂質経路に属するものであった。
・代謝物87個のうち48個(55.2%)は、AMDの各ステージ間でも有意に異なっていた。
・これらの代謝物に関してとくに重要な経路として、グリセロリン脂質経路が同定された(p=4.7×10-9)。

(ケアネット)