高齢者の睡眠薬の選択、ケアマネの約6割「適正薬へ見直し必要」と回答

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2017/10/02

 

 2017年9月27日、MSD株式会社は「在宅で介護を受ける高齢者の睡眠実態と不眠症の適切な治療のあり方」と題したメディアセミナーを開催。同社が実施したケアマネジャー対象の在宅要介護高齢者における睡眠実態調査の結果、不眠症治療薬の服用について67.4%(337人/500人)が「利用者が眠るために必要である」と答える一方、57.8%(289人/500人)が「利用者の状態によっては適正な薬への見直しが必要である」と回答したことが明らかになった。演者の1人である内村 直尚氏(久留米大学医学部 神経精神医学講座 教授)は、「転倒・骨折のリスクや認知機能への影響などから、高齢者においては特に不眠症治療薬の選択を慎重に行うべきで、可能な限り少量・少剤・短期間とすることが望ましい」と述べ、現状の不眠症治療の課題と適切な治療法の選択について講演した。

高齢者の転倒・ふらつきは睡眠薬の影響と7割以上が考えている

 調査は、不眠症治療薬を現在服用している在宅要介護高齢者を担当しており、ケアマネジャー業務を1年以上経験している500人を対象に行われた。担当している要介護高齢者の足元のふらつき・転倒について、その原因を日中・夜間でそれぞれ尋ねたところ、日中については72.6%(244人/336人)、夜間については77.0%(245人/318人)が「不眠の治療のために服用している、医師から処方された薬の影響」と考えていると回答。内村氏は、「合った薬を正しく服用しないと、夜間だけでなく日中のQOLにも大きな影響を及ぼしてしまう。不眠症治療薬を服用していて翌日に眠気が残ったり、日中・夜間に足元がふらつく場合は、薬の減量や種類変更などを検討すべき」と語り、「薬を飲んですぐに床に就かないなど誤った服用の仕方をすると、健忘や夜間の興奮状態を招く可能性があることにも注意が必要だ」と指摘した。

高齢者への睡眠薬は漫然とした継続投与、安易な多剤処方はNG

 本邦で現在使用されている不眠症治療の睡眠薬は、1960年代から使われているベンゾジアピン(BZD)系、BZD系より筋弛緩作用が低く、転倒・骨折リスクが低い非BZD系、依存性が低く、転倒・骨折リスクも低いGABA受容体を介さない薬剤に大別できる。BZD系と非BZD系については、今年3月、承認用量であっても長期間の投与で依存形成される可能性があるという警告が医薬品医療機器総合機構(PMDA)から発出されている。「認知機能低下のリスクについても指摘されており、非BZD系であっても高齢者への処方は慎重に行う必要がある」と内村氏。「患者さんは不眠が続くと辛いと訴え、薬が増えることで安心する方も多い。しかし、例えば高齢になるほど増える睡眠時無呼吸症候群の場合、BZD系薬剤は原則禁忌であり、睡眠時無呼吸症候群の治療を進めるべき。“何が原因で眠れていないのか”について、本人だけでなく家族やケアマネジャー、ヘルパーさんなどの意見も聞き、協力して治療法を探ることが必要だ」と語った。

 最後に内村氏は、「朝起きて少なくとも15~16時間は床に就かない、寝る前に足浴だけでも行って身体を温める、ベッドを日の当たる位置に移動する、等の指導をすることで症状を改善できる可能性もある」と話し、まずは非薬物療法を実施すること、効果がみられない場合に薬物療法と非薬物療法を組み合わせた治療を行うことの重要性を強調した。

(ケアネット 遊佐 なつみ)

参考文献・参考サイトはこちら