高齢者の約6割が水分不足の状態

提供元:ケアネット

印刷ボタン

公開日:2017/08/25

 

 「教えて! 『かくれ脱水』委員会」(委員長 服部 益治氏[兵庫医科大学 小児科学 教授])は、2017年7月に実施した「脱水に関するアンケート調査」の結果を発表した。このアンケートは、高齢者の水分補給に対する意識や行動実態を明らかにするため、65歳以上の男女の高齢者(n=516)と65歳以上の親を持つ30・40代の男女(n=516)、30・40代の男女の介護従事者(n=516)を対象に、WEB調査で行われたものである。

■トイレが心配で水分補給ができない高齢者
 65歳以上の男女の高齢者(n=516)への「食事に含まれる水分以外で、1日にどれくらい水分を補給しているか?」という質問では、1日の必要量(1,000~1,500mL)のうち1,000mL未満と回答した高齢者が61.8%にのぼった。必要な水分量が摂取できている高齢者は38.1%だった。さらに「食事に含まれる水分以外で、1日に1,000~1,500mLの水分補給が必要だと知っているか?」という質問では、「知っている」が52.3%、「知らない」が47.7%と、半数に情報が知られていなかった。
 次に「水分補給を控えたり、拒んだことがあるか?」という質問では、19.8%の高齢者が「水分補給を控えたことがある」と回答。「控えたことがある」と回答した高齢者にその理由を聞いたところ、77.7%が「トイレが心配だから」と回答し、次に25.2%が「喉の渇きを感じていなかったから」という回答だった。

■同居の子は親の熱中症への関心が高い
 高齢者の子供たちの意識について、65歳以上の親を持つ30・40代の男女に「親に水分補給を勧めたことがあるか?」と質問したところ、49.4%が「勧めたことがある」と回答した。
 さらに、「親に勧めても飲まなかった(拒水された)経験があるか?」という質問では、28.6%が「経験がある」と回答した。「拒水されたことがある」と回答した人に、「その後、どのように対処したか?」と質問したところ、75.3%が「時間を空けて、また勧めた」と回答し、28.8%は「勧めるのをやめた」という回答だった。
 「親の熱中症を心配したことがあるか?」という質問では、61.2%が「心配したことがある」と回答、その回答者に親との同居の有無を質問したところ、56.0%が親と同居、44.0%が別居であり、同居している人のほうが親の熱中症への関心が高いことがうかがわれた。

■高齢者の水分補給の介助には工夫で成功
 30・40代の介護従事者に「高齢者の水分補給の介助は難しいと思うか?」と質問したところ、90.6%が「難しい」と回答。その理由(複数回答)として、86.7%が「本人に水分補給の意思がない(進んで飲まない)」、次いで多かったのが60.6%の「水分補給を拒否された」だった。
 次に「高齢者の水分補給における工夫について」を質問したところ、複数回答で「飲み物にバリエーションを持たせる」(63.8%)、「飲み物にトロミをつける」(56.6%)、「飲み物を固める(ゼリーにする)」(46.5%)、「経口補水ゼリーを勧める」(35.1%)などの工夫が行われていたことがわかった。また、このうち、ゼリーを勧めたことのある介護従事者331人のうち、85.8%が「ゼリーで高齢者の水分補給の介助に成功した」と回答した。

 まだまだ暑さが続く中で、高齢者には水分補給の重要さの啓発、高齢者の家族には脱水予防への配慮、介護従事者には今後の水分摂取の工夫など、さまざまな活動へのヒントを与えてくれる結果となった。

■参考
かくれ脱水JOURNAL

■関連記事
脱水気味の高齢者に水分補給させるコツ

(ケアネット 稲川 進)