うつ病患者へのベンゾジアゼピン併用、リスクとベネフィットは

ベンゾジアゼピン(BZD)は、うつ病患者に対し、より早期に抑うつ症状を改善したい場合や不安症状を軽減したい場合に短期間用いられ、抗うつ薬治療の継続を改善する。しかし、BZDは、数週間の使用でも依存性を含むリスクと関連している。米国・ノースカロライナ大学チャペルヒル校のGreta A. Bushnell氏らは、抗うつ薬とBZDの併用の傾向を調査するため、抗うつ薬を服用しているうつ病成人を対象に、併用期間の評価、長期BZD使用の推定および、その決定要因の検討を行った。JAMA psychiatry誌オンライン版2017年6月7日号の報告。
このコホート研究には、US commercial claims databaseを用いた。2001年1月~2014年12月に抗うつ薬療法を開始した成人うつ病患者(18~64歳)のうち、診断の前年に抗うつ薬またはBZDを使用していなかった患者を対象とした。併用処方の定義は、新規抗うつ薬処方と同日に新規BZDの処方を行った場合とした。主要アウトカムは、抗うつ薬とBZDの併用処方率および併用期間の6ヵ月継続率とした。
主な結果は以下のとおり。
・抗うつ薬治療を開始した成人うつ病患者76万5,130例(年齢中央値:39歳、四分位範囲:29~49歳、女性:50万7,451例[66.3%])のうち、BZDの併用処方を行った患者は、8万1,020例(10.6%)であった。
・2001~14年までの併用処方開始率の平均年増加率は、0.49%であった(95%CI:0.47~0.51%)。2001年の6.1%(95%CI:5.5~6.6%)から、2012年には12.5%(95%CI:12.3~12.7%)と増加したが、2014年は11.3%(95%CI:11.1~11.5%)と落ち着いていた。
・同様の所見は、年齢層および医師のタイプによって明らかであった。
・抗うつ薬治療期間は、併用処方患者と非併用処方患者で同様であった。
・併用処方患者のうち、12.3%(95%CI:12.0~12.5%)は長期間BZDを使用していた(64.0%は初期に中止)。
・長期BZD使用の決定要因は、BZD初期投与の長さ、長時間作用型BZDを初回に処方、最近のオピオイド処方であった。
著者らは「抗うつ薬治療を開始したうつ病患者では、10人に1人の割合でBZD併用処方を行っていた。6ヵ月後の抗うつ薬治療に、有意な差は認められなかった。BZDに関連するリスクを考えると、抗うつ薬治療開始時のBZD併用処方には、慎重な検討が必要である」としている。
■関連記事
ベンゾジアゼピンと認知症リスク~メタ解析
うつ病患者のベンゾジアゼピン使用、ミルタザピン使用で減少:千葉大
ベンゾジアゼピン系薬の中止戦略、ベストな方法は
(鷹野 敦夫)
[ 最新ニュース ]

子宮内避妊具の装着、産後早期vs.標準/JAMA(2023/03/30)

看護施設スタッフの検査強化で、入所者のコロナ関連死減少/NEJM(2023/03/30)

推定GFR値を、より正確に知る―欧州腎機能コンソーシアムの報告―(解説:石上友章氏)(2023/03/30)

難治転移大腸がんへのfruquintinib、日本人患者にも有用/日本臨床腫瘍学会(2023/03/30)

CDK4/6阻害薬+内分泌療法、HER2低発現乳がんでの有効性/日本臨床腫瘍学会(2023/03/30)

不眠症に対する認知療法、行動療法、認知行動療法の長期有効性比較(2023/03/30)

新型コロナワクチン接種後のアレルギー反応は本物?(2023/03/30)

糖尿病患者、女性は男性より静脈血栓塞栓症を発症しやすい(2023/03/30)

ハダカデバネズミは生涯にわたって妊娠可能(2023/03/30)
[ あわせて読みたい ]
クローズアップ!精神神経 7疾患(2021/01/26)
~プライマリ・ケアの疑問~ Dr.前野のスペシャリストにQ!【精神科編】(2019/06/15)
Dr.松崎のここまで!これだけ!うつ病診療 (2016/03/07)
薬剤性QT延長症候群とは(2015/09/30)
全国在宅医療・介護連携研修フォーラム(2015/03/31)
ひと・身体をみる認知症医療(2015/03/15)
診療よろず相談TV(2013/10/25)
在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会 領域別セッション(2013/11/12)
「てんかんと社会」国際シンポジウム(2013/09/24)
柏市 在宅医療推進のための地域における多職種連携研修会(2013/06/24)