認知症者への向精神薬投与は死亡率を高めているか

提供元:ケアネット

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公開日:2017/06/14

 

 認知症高齢者によく用いられる向精神薬は、死亡率の上昇と関連しているといわれている。これまでの研究では、このリスクに関する性差は調査されていない。スウェーデン・ウメオ大学のJon Brannstrom氏らは、認知症高齢者における抗精神病薬、抗うつ薬、ベンゾジアゼピンの使用と2年間の死亡率との関連を分析し、性差に関する調査を行った。BMC pharmacology & toxicology誌2017年5月25日号の報告。

 4つのコホート研究より抽出された、合計1,037例の認知症高齢者を2年間追跡調査した(女性:74%、平均年齢:89歳)。往診および診療記録よりデータを収集した。ベースライン薬剤使用の継続と死亡との関連を分析するため、Cox比例ハザード回帰モデルを用いた。複数の交絡因子を評価し、調整した。

主な結果は以下のとおり。

・すべての集団からのデータを含む完全に調整されたモデルでは、ベースラインの向精神薬使用と2年間の死亡率の増加は関連していなかった。
・有意な性差は、抗うつ薬使用に関連する死亡率で認められ、男性では保護的であったが(ハザード比[HR]:0.61、95%信頼区間[CI]:0.40~0.92)、女性ではそうではなかった(HR:1.09、95%CI:0.87~1.38)。
・性別による作用は、ベンゾジアゼピン使用の分析において有意であり、女性よりも男性で死亡リスクが高かった。

 著者らは「認知症高齢者におけるベースライン時の向精神薬の継続的使用は、複数の交絡因子で調整した分析において、死亡率の増加と関連が認められなかった。抗うつ薬およびベンゾジアゼピンの使用に関連する死亡リスクに性差が認められ、性別の影響についてさらに調査する必要がある」としている。

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(鷹野 敦夫)