心室補助装置、急性心筋梗塞患者の長期予後に有用

提供元:ケアネット

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公開日:2016/04/28

 

 急性心不全や心原性ショックを合併した急性心筋梗塞(AMI)患者は、従来の治療では死亡率が高い。今回、植込み型心室補助装置(VAD)による治療を受けたAMI患者の転帰を評価した研究が、Journal of American College of Cardiology誌2016年4月26日号に発表された。

VAD治療を受けたAMI患者502例、うち443例が左室補助装置、33例が両心室補助装置、26例が全置換型人工心臓を使用
 対象は、INTERMACS(Interagency Registry for Mechanically Assisted Circulatory Support)レジストリに登録された患者のうち、AMI発症後にVAD治療を受けた患者(AMI群)で、AMI以外の理由でVAD治療を受けた患者(非AMI群)と比較された。INTERMACSデータベースは、FDAが承認した植込み型VADによる治療を全米で受けた患者を対象にした前向きのレジストリであり、2006年6月に登録を開始した。VAD治療を受けたAMI患者502例のうち、443例は左室補助デバイス、33例は両心室補助デバイス、26例は全置換型人工心臓が使用された。年齢の中央値は58.3歳で、77.1%が男性であった。

 植込み時、66%がINTERMACS profile 1(重度の心原性ショック)であった。AMI患者は非AMI患者と比べて、術前の大動脈内バルーンパンピング(IABP)の使用(57.6% vs.25.3%、p<0.01)、挿管の施行(58% vs. 8.3%、p<0.01)、ECMO(体外式膜型人工肺)の使用(17.9% vs.1.7%、p<0.01)、心停止発生(33.5% vs.3.3%、p<0.01)が多く、INTERMACS profileが高かった。
 VAD治療1ヵ月後、91.8%のAMI患者はVADのサポート下で生存していた。7.2%はVAD使用下で死亡し、1%は心移植を受けていた。

AMI後のVAD使用群は、非AMI群に比べて死亡ハザードが低い
 VAD治療1年後、52%のAMI患者は、引き続きVADのサポート下で生存し、25.7%は心移植を受け、1.6%は心室機能の改善に伴いVADが取り出され、20.7%はVAD使用下で死亡した。AMI群は非AMI群に比べて、未調整の早期ハザードが高い傾向にあり(HR:1.24、p=0.04)、後期の死亡に対するHRが優れていた(HR:0.57、p=0.04)。しかしながら、確立されているリスクを考慮し多変量解析を行うと、AMI群の早期HRは非AMI群と比べて高くない(HR:0.89、p=0.30)一方で、後期死亡のHRは低いままであった(HR:0.55、p=0.02)。

AMIによる心不全患者、早期の植込み型VAD治療が有用
 AMI後にVAD治療を受けた患者は、AMI以外の理由でVAD治療を受けた患者と比べ、治療前の状態が重篤であったにもかかわらず、予後に関して同様の成績を示した。著者らは、植込み型VADは有効な治療であり、AMIで心拍出量が低く薬物治療に反応しない患者には早期に考慮されるべきであると結論付けている。

(カリフォルニア大学アーバイン校 循環器内科 河田 宏)

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