重度うつ病、抗うつ効果の即効性を上げる方法

提供元:ケアネット

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公開日:2015/12/11

 

 経口抗うつ薬は数週間後に効果が現れるのに対し、ケタミン単回静脈内投与(静注)は効果の持続期間は限られているものの迅速な抗うつ効果を発揮する。中国・首都医科大学のY.D.Hu氏らは、4週間の無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を行い、エスシタロプラム+ケタミン単回静注増強療法が重度の大うつ病性障害(MDD)に対して有効かつ安全であることを明らかにした。著者は、「エスシタロプラム+ケタミン単回静注増強療法は、経口抗うつ薬治療の効果発現を早める可能性がある」とまとめている。Psychological Medicine誌オンライン版2015年10月19日号の掲載報告。

 研究グループは、ハミルトンうつ病評価尺度(HRSD-17)スコア24点以上の重度MDD外来患者30例を、エスシタロプラム(10mg/日)+ケタミン単回静注(0.5mg/kg、40分で静注)群(ケタミン増強療法群)、またはエスシタロプラム(10mg/日)+プラセボ(0.9%生理食塩水静注)群(プラセボ群)に無作為に割り付け、4週間投与した。

 投与前、投与1、2、4、24および72時間後、1週、2週、3週および4週後に、モンゴメリ・アスベルグうつ病評価尺度(MADRS)および自己記入式簡易抑うつ症状尺度(QIDS-SR)を用いうつ症状を、QIDS-SRの項目12で自殺企図を評価した。また、簡易精神症状評価尺度(BPRS)の陽性症状、ヤング躁病評価尺度(YMRS)およびClinician Administered Dissociative States Scale(CADSS)を用い有害な精神病症状を評価した。主要評価項目は、効果発現までの期間(MADRSスコアの50%以上減少)である。

 主な結果は以下のとおり。

・ケタミン増強療法群ではプラセボ群に比べ、効果発現までの期間(ハザード比[HR]:0.04、95%信頼区間[CI]:0.01~0.22、p<0.001)および寛解までの期間(HR:0.11、95%CI:0.02~0.63、p=0.01)が有意に短く、4週後の反応率(92.3% vs.57.1%、p=0.04)および寛解率(76.9% vs.14.3%、p=0.001)も有意に高かった。
・ケタミン増強療法群ではプラセボ群と比較して、MADRSスコア(投与2時間後~2週後)、QIDS-SRスコア(投与2時間後~2週後)、QIDS-SR自殺企図スコア(投与2時間後~72時間後)もそれぞれ有意に低下した。
・ケタミン増強療法群において、投与1時間後および2時間後のYMRS得点のみ有意に増加したが、BPRSおよびCADSSの有意な増加はみられなかった。

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(ケアネット)