結節性硬化症の白斑、mTOR阻害薬の有効性を確認

提供元:ケアネット

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公開日:2015/08/25

 

 結節性硬化症(TSC)の白斑病変に対する、局所ラパマイシン(mTOR阻害薬、別名:シロリムス)治療の有効性と安全性が確認された。大阪大学医学部皮膚科 講師/医局長の金田 眞理氏らが患者6例について行った前向きベースライン対照試験の結果、報告した。著者はその改善機序として、「今回示された効果は、TSCメラニン形成細胞におけるメラニン形成障害の改善によりもたらされることを強く支持するものであった」と述べている。これまでTSC患者の、腫瘍に対する哺乳類ラパマイシン標的蛋白質複合体1(mTORC1)の効果については多くの検討が行われてきたが、白斑への効果については不明であった。JAMA Dermatology誌2015年7月号の掲載報告。

 研究グループは、TSC白斑に対する局所ラパマイシンの有効性について、客観的に評価し、またラパマイシンによる白斑の改善機序を明らかにする検討を行った。

 対象は、2011年8月4日~2012年9月27日に大阪大学医学部皮膚科で、太陽光の曝露、非曝露を問わずTSC患者で白斑が認められた6例であった。1日2回、12週にわたってラパマイシンゲル0.2%を病変部に塗布。治療開始時と終了時にそれぞれ組織学的検査と血液検査を行い、また完了時に血中ラパマイシン値を分析した。

 TSC白斑に対するラパマイシン治療の客観的評価を、分光測色計によるδ-L(Lは色の明るさを示す)で行った。評価は、治療開始時と終了時(12週)、終了後4週(16週)および12週(24週)に行った。

 主な結果は以下のとおり。

・白斑の改善(δ-Lで評価)は、有意に認められた。12週時点(平均[SD]:2.501[1.694]、p<0.05)、16週時点(1.956[1.567]、p<0.01)、24週時点(1.836[1.638]、p<0.001)であった。
・効果は、太陽光曝露群で顕著に認められたように思われたが、非曝露群と比較して有意な差(δ-Lで評価)は観察されなかった。12週時点(平均[SD]:1.859[0.629]と3.142[2.221])、16週時点(1.372[0.660]と2.539[2.037])、24週時点(1.201[0.821]と2.471[2.064])。
・有害事象はみられず、血中にラパマイシンが検出された患者は1例もなかった。
・白斑の電子顕微鏡分析で、局所ラパマイシン治療がTSCメラニン形成細胞におけるメラノソーム数を均一とする有意な改善が認められた。治療前の斑平均値[SD]:25.71[21.90](範囲:5~63)、治療後:42.43[3.60](範囲:38~49)、p<0.001)。
・さらにラパマイシン治療は、TSCメラニン形成ノックダウン細胞におけるメラノソームを、減少していた値(平均値[SD]:16.43[11.84])から正常値(42.83 [14.39]、p<0.001)へと有意な回復をもたらした。

(ケアネット)