抗PD-1抗体は卵巣がんの新たな治療となるか

提供元:ケアネット

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公開日:2014/09/10

 

 卵巣がんは婦人科がん死亡の第1位であり、罹患率は8,000人/年、死亡者4,500人/年と年々増加している。2014年8月28日~30日、横浜市で開催された日本癌治療学会学術集会にて、京都大学医学部附属病院 産科婦人科の濱西 潤三氏は「抗PD-1抗体(ニボルマブ)を用いた卵巣がんに対する第II相医師主導治験」 と題し、自施設での臨床試験の結果を紹介した。

 標準治療の第一選択薬はパクリタキセル+カルボプラチンであるが、この治療に抵抗性を持つと60%以上が再発し、5年生存率30%、10年生存率10%ときわめて予後が悪い。第二選択薬もあるものの、いずれも単独での奏効率は低い。そのため、新たな治療法が求められている。

 2000年代に入り、“がん免疫逃避機構”学説が解明され、この機構を標的とする新しい免疫治療が、臨床に応用されるようになった。なかでも特徴的なのは、イムノチェックポイント経路ともいわれるPD-1(Programmed cell Death-1)/PD-L1(PD-1 Ligand1)経路である。免疫抑制補助シグナルPD-1/PD-L1経路をブロックすることで、T細胞の免疫抑制が解除され、T細胞が活性化し腫瘍の抑制が起こる。

 このPD-1/PD-L1経路が卵巣がんでも関連しているのか、京都大学内で共同研究を行ったところ、卵巣がんの約70%に、PD-L1が高発現していることがわかった。また、この発現の強度が卵巣がんの独立予後不良因子であることも明らかになった。

 そこで、抗PD-1抗体ニボルマブの第II相試験を医師主導で開始した。対象は、プラチナ抵抗性でタキサンを含む2レジメン以上の治療歴を有する上皮性卵巣がん。試験当時、ニボルマブの安全用量が決定していなかったため、1mg/kgの低用量コホートと3mg/kgの高用量コホートの2用量コホート(各10例ずつ計20例)を登録した。

 これらの患者に、ニボルマブを2週ごとに最大1年間投与して評価した。主要エンドポイントは奏効率、副次エンドポイントは有害事象、無増悪生存期間、全生存期間、疾患制御率とした。被験者の平均年齢は62歳、ステージIII~IVが多く、先行レジメンは4レジメン以上が半数以上であった。

 奏効率は17%(3/20例)。1mg/kg群では10例中1例PRが認められ、3mg/kg群では8例中2例にCRが認められた。3mg/kgのCR2例のうち1例は、卵巣がんの中でもとくに抗がん剤治療が奏効しにくい明細胞がんであったが、多発性の腹膜播種も完全に腫瘍が消失。もう1例も多発性骨盤内転移が消失した。また、CR例については長期間効果が持続する傾向にある。

 全有害事象のうちグレード3が半数以上に認められたが、用量依存的ではなかった。免疫製剤に共通するものが多かったが、甲状腺の異常や不整脈、好中球減少を伴わないリンパ球減少など、特徴的なものも認められた。重篤な有害事象は2例に認められたが、いずれも改善している。

 ニボルマブは卵巣がんに対する新たな治療法として期待できる。今後は、効果予測、有害事象のバイオマーカー、無効例や耐性例に対する対策、抗がん剤や分子標的薬などとの併用療法など、次相試験による検証が必要になってくるであろう。

(ケアネット 細田 雅之)