腰痛患者の椎体骨折スクリーニングで“レッドフラッグ”の診断精度は低い

提供元:ケアネット

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公開日:2013/03/15

 

 各国の腰痛診療ガイドラインでは、椎体骨折など追加検査や特別な治療を要する病変を有している可能性が高い患者を特定するため“レッドフラッグ”の使用を勧告している。しかし、オーストラリア・シドニー大学のChristopher M Williams氏らによるシステマティックレビューの結果、ほとんどのレッドフラッグが椎体骨折のスクリーニングには役に立たないことが明らかとなった。レッドフラッグを複数組み合わせた場合は有用性が改善する可能性はあるものの、多くは偽陽性率が高く、レッドフラッグに基づいた腰痛の診療は医療費と治療成績に影響するだろうとまとめている。Cochrane database of systematic reviews 2013年1月31日掲載の報告。

 腰痛患者における椎体骨折のスクリーニングに関する“レッドフラッグ”の診断精度を評価することを目的とした。

 電子データベースから主要な研究論文ならびに被引用・引用論文を検索し(最も初期から2012年3月7日まで)、腰痛患者の既往歴や検査結果を参照基準(画像診断)の結果と比較した研究を2名のレビュアーが別々に選択した。

 3名のレビュアーがそれぞれ、11項目からなる診断精度研究の質評価(QUADAS)ツールを用いてバイアスリスクを評価するとともに、研究デザインの特性、患者、指標検査および参照基準に関するデータを抽出して各検査に関する尤度比を算出し、臨床的有用性の指標とした。

 主な結果は以下のとおり。

・8件の研究(プライマリ・ケア4件、二次医療1件、三次医療[救命救急]3件)がレビューに組み込まれた。
・バイアスリスクは中等度で、指標検査と参照基準の報告は不良であった。
・椎体骨折の有病率は、プライマリ・ケアで0.7~4.5%、3次医療で6.5~11%であった。
・指標検査は29種あったが、2件以上の研究で採用されたのは2種だけであった。
・陽性尤度比が得られた“レッドフラッグ”は、プライマリ・ケアでは3項目あったものの大部分は不正確であった(著しい外傷、年齢[高齢]、ステロイド使用:尤度比推定値範囲はそれぞれ3.42~12.85、3.69~9.39、3.97~48.50)。一方、3次医療では1項目であった(挫傷/擦過傷:尤度比推定値31.09、95%CI:18.25~52.96)。
・複数の“レッドフラッグ”の組み合わせは、陽性尤度比が大きく単独より有用と思われた。

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(ケアネット)