日本語でわかる最新の海外医学論文|page:945

抗てんかん薬の長期服用者、80%が骨ミネラル障害

 難治性てんかんで抗てんかん薬を長期服用する患者における、骨粗鬆症など骨ミネラル障害の有病率が報告された。オランダ・マーストリヒト大学医療センターのK. Beerhorst氏らが同患者を対象に行った断面調査の結果、80%が低骨塩量(BMD)症状を有していたという。またそのうち半数超が50歳未満であった。著者は「本研究は、慢性てんかん患者における骨ミネラル障害の問題が大きいことを実証している」と結論している。Acta Neurologica Scandinavica誌オンライン版2013年3月6日号の掲載報告。

ベンゾジアゼピン系薬物による認知障害、α1GABAA受容体活性が関与の可能性

 ベンゾジアゼピン系薬物の認知障害は、同薬の作用によるα1GABAA受容体の活性が関与している可能性が示唆された。米国・ハーバードメディカルスクールのLeah Makaron氏らが、アカゲザルによる作業実験研究を行い明らかにした。Pharmacology Biochemistry and Behavior誌2013年3月号の掲載報告。

乳がんの放射線療法、その後の虚血性心疾患を増大/NEJM

 乳がんの放射線療法は、虚血性心疾患を増大することが、英国・オックスフォード大学のSarah C. Darby氏らによる住民ベースの症例対照研究の結果、報告された。疾患増大は平均照射線量に比例しており、照射曝露後数年以内に増大し始め20年以上続くこと、もともと心臓リスク因子を有する女性の絶対リスクが大きいことも明らかになった。乳がんの放射線療法では、心臓への偶発的な電離放射線曝露の頻度が高い。しかし、曝露による心臓への影響、その後の虚血性心疾患リスクについては確認されていなかった。NEJM誌2013年3月14日号掲載の報告。

75歳以上高齢者に対するCABG、off-pumpとon-pumpに有意差なし/NEJM

 75歳以上の高齢者に焦点をあてoff-pump冠動脈バイパス術(CABG)のベネフィットについて検討した、ドイツ・ヘルツ&ゲファスクリニックのAnno Diegeler氏らによる無作為化試験「GOPCABE」の結果が発表された。on-pump CABGと比べて、30日時点、12ヵ月時点ともに死亡や脳卒中など複合アウトカムに関する有意差は認められなかったという。off-pump CABGについてはその有用性はなお議論の的である。これまで低リスク患者や異なるリスク背景をもつ患者を対象とした試験は行われているが、高齢者については確認されておらず、Diegeler氏らは、高リスク患者におけるoff-pump CABGの有効性を明らかにできることを確信して本検討を行った。NEJM誌オンライン版2013年3月11日号の掲載報告より。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(70)〕 偶発的な心臓への照射はその後の冠動脈イベント発生リスクを増加させる

心臓(冠動脈)への照射が動脈硬化を進展させることは知られているが、実際に乳がんに対する放射線療法における電離放射線の心臓への偶発的被爆が、その後の虚血性心疾患のリスクに与える影響は不明である。本試験では2,168例の乳がんに対して放射線治療を受けた患者を対象に、その後重大な冠動脈イベント(心筋梗塞、冠血行再建、虚血性心疾患による死亡)の発生率が上昇したか否かを検討したものである。

人工膝関節全置換術後の患膝の痛みは、対側膝の痛みと関連するか?

 人工膝関節全置換術(TKA)後の患膝の持続的な痛みは、反対側の膝の痛みにつながる可能性が示唆されている。しかし、英国・ブリストル大学のH.K. Smith氏らがKinemax Outcomes Studyのコホートで調査した結果、TKA術後3ヵ月における患膝の疼痛は術後2年までの対側膝の症状増悪と関連していなかった。

抗精神病薬は“せん妄”の予防に有用か?

 高齢入院患者においてしばしば問題となるせん妄は、死亡率の増加を招く。せん妄治療に関するエビデンスは蓄積されているものの、高リスク患者における薬理学的予防に関する報告は限られている。米国・メリーランド大学のPolina Teslyar氏らはせん妄の高リスク入院患者に対する抗精神病薬の予防投与の影響を検討するためメタ解析を行った。その結果、術後の高齢入院患者に対する抗精神病薬の予防投与はせん妄リスクの減少につながると報告した。Psychosomatics誌2013年3月号の報告。

中等度の関節リウマチ患者にはエタネルセプト+MTXが低疾患活動性を維持/Lancet

 活動性が中等度の関節リウマチ患者には、エタネルセプト(商品名:エンブレル)を中断することなく、従来投与量または低用量+メトトレキサート(同:リウマトレックスほか)の併用投与が、低疾患活動性の維持に有効であることが、オーストリア・ウィーン&ヒーツィング医科大学病院のJosef S Smolen氏らによる「PRESERVE」試験の解析の結果、報告された。同試験は、中等度疾患活動性の関節リウマチ患者において、エタネルセプトの低用量または中断によって低疾患活動性が維持可能かを評価することを目的とした無作為化試験。これまで関節リウマチの治療目標は臨床的寛解と低疾患活動性の維持を基本とするが、患者の多くを占める中等度患者における治療効果は十分に検討されていなかった。Lancet誌2013年3月16日号(オンライン版2013年1月17日号)掲載の報告。

乳がん予防には体重コントロールと運動が重要~日本人女性でのリスクの検討

 日本人女性において、エストロゲン受容体/プロゲステロン受容体(ER/PgR)の状態からみた乳がんリスク、身体計測因子、身体活動の関連はまだ明らかではない。東北大学の河合賢朗氏らはケースコントロール研究により、女性全体および閉経後女性でBMIが高いとER+/PgR+のがんリスクが高いこと、身体活動がどのタイプの乳がんのリスクも減少させる可能性を報告した。この結果から、乳がん予防には体重コントロールと身体活動が重要であるとしている。Cancer causes & control誌オンライン版2013年3月14日号に掲載。

グルタミン酸トランスポーター遺伝子と統合失調症・双極性障害の関係

 米国・ニューヨーク州立大学SUNYアップステート医科大学のMarina Myles-Worsley氏らは、統合失調症と双極性障害の間に遺伝的な重複がみられることに着目し、グルタミン酸トランスポーター遺伝子であるSLC1A1遺伝子変異について検討を行った。その結果、SLC1A1遺伝子の欠失が認められ、家系内で共分離していることを報告した。American Journal of Medical Genetics Part B: Neuropsychiatric Genetics誌2013年3月号(オンライン版2013年1月22日号)の掲載報告。

「頻発する腰痛」と「頭痛」の関係

 頻発する腰痛と、慢性片頭痛ならびに慢性緊張型頭痛とは関連があることが、ドイツ・頭痛コンソーシアム研究において示された。腰痛と頭痛との関連についてドイツ・エッセン大学病院のMin-Suk Yoon氏らは、異常な全身痛の処理の一部という概念も含め複数の可能性が考えられるとまとめている。Pain誌2013年3月号(オンライン版2012年12月28日号)の掲載報告。

新品の靴が原因の接触皮膚炎、アレルゲンは?

 スロバキア・コメニウス大学のDanka Svecova氏らは、重症のアレルギー性接触皮膚炎(ACD)を呈した9例の患者の原因調査を行った結果、全員に共通することとして新品の靴を履いていたことが浮かび上がり、アレルゲンについて調べた結果、防カビ剤の小袋に含まれていたフマル酸ジメチル(DMF)が特定されたことを報告した。

特発性パーキンソン病患者への多面的行動変化プログラムの可能性/BMJ

 座位中心の生活を送る特発性パーキンソン病の患者に対し、多面的行動変化プログラムである「ParkFit」による介入は、一般的な理学療法による介入を行った場合と比べて、2年後のLASA身体活動質問票(LAPAQ)で評価した身体活動時間の増加は認められなかった。しかし、日記や携帯型活動モニターによる評価では身体活動度の有意な増加が示されたという。オランダ・ラドバウド大学ナイメーヘン医療センターのMarlies van Nimwegen氏らが、同プログラムの介入効果を検討するために行った無作為化比較試験の結果で、BMJ誌オンライン版2013年3月1日号で発表した。

収縮期心不全患者に対するESA製剤、臨床アウトカムを改善しない:RED-HF試験/NEJM

 軽症~中等度の貧血を有する慢性収縮期心不全患者について、ダルベポエチンアルファ(商品名:ネスプ)による治療は臨床アウトカムの改善には結びつかなかったことが、スウェーデン・イェーテボリ大学のKarl Swedberg氏らによる無作為化二重盲検試験「RED-HF」で示された。収縮期心不全患者において貧血はよくみられる症状で、腎機能やRAS阻害薬服用との関連が示されている。同患者では症状や運動耐容能の悪化や、入院、死亡などの転帰が貧血のない患者と比べて高率であり、先行研究においてESA製剤の腎性貧血治療薬ダルベポエチンアルファによる造血効果が運動耐容能の改善や貧血による入院を低下する可能性が示唆されていた。一方でESA製剤は、慢性腎臓病患者の心血管アウトカムは改善しないこと、ヘモグロビン高値を目標とする治療においてアテローム血栓性イベントのリスクを増大したといった試験報告もあった。NEJM誌オンライン版2013年3月10日号掲載報告より。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(69)〕 慢性心不全と貧血を考える際のlandmark studyとなるか?!

慢性心不全の定義は研究者により異なるが、「慢性心疾患のため心臓のポンプ機能が低下し、結果として容易にうっ血性心不全状態に陥ったり重症不整脈の発生がみられる予後不良の状態」というコアな部分においては異論がないと思われる。心血管系の第一の役割は諸臓器に酸素を送り届けることである。したがって、その運搬媒体であるヘモグロビンの不足(=貧血)の存在は、脆弱化した循環系に対して慢性的に過運動を強いるものであり、予後不良因子になると推測されたのは一見自然なことであったように思われるであろう。

小児双極I型障害に対するアリピプラゾールの効果は?

 米国・ジョンズ・ホプキンス大学のRobert L. Findling氏らは、小児の双極I型障害に対するアリピプラゾール長期投与の有効性と安全性を検討する、30週間の無作為化プラセボ対照試験を行った。その結果、アリピプラゾール10mg/日群、30mg/日群ともプラセボ群に比べ優れた有効性を示し、忍容性も良好であることを報告した。Bipolar Disorders誌2013年3月15日号の掲載報告。

テレダーマトロジー、QOL改善への効果は?

 米国・トゥルーマン記念退役軍人病院のJohn D. Whited氏らは、テレダーマトロジー(遠隔皮膚診断)のQOLへの効果について無作為化試験を行った。皮膚の状態とQOLに関する論文は散見されるが、テレダーマトロジーがQOLに及ぼす効果に関する研究報告はこれまでほぼなかったという。JAMA Dermatology誌オンライン版2013年2月20日の掲載報告。

〔CLEAR! ジャーナル四天王(68)〕 慢性疾患の遠隔医療におけるテレシステムの優越性を示せず(英国)

 慢性疾患に罹患した高齢者が増えているのはわが国ばかりでなく、欧州でも同じである。高齢者をできる限り在宅で自立して生活できるよう支援することが、医療経済の大きなテーマとなっている。欧州は遠隔医療に関して長い歴史を有するが、なかでもドイツや英国は、伝送システムやロボットシステムによる在宅管理に先進的に取り組んでいる。しかし、これらの遠隔医療が本当に患者の生活の質の改善や入院の抑制、医療経済の改善に役立っているのかどうかに関しては、確かな指標に乏しい。

「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」保険適用の意義

 2012年3月18日(月)、マスコミセミナー「ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎」保険適用の意義 が開催された。国立国際医療研究センター国府台病院 院長 上村直実氏と東海大学医学部総合内科 教授 高木敬司氏が、ヘリコバクター・ピロリ感染胃炎保険適用のメリット、プロバイオティクス併用除菌の可能性などについて最近の知見を紹介した。

認知症、アルツハイマー型とレビー小体型の見分け方:金沢大学

 アルツハイマー型認知症(AD)とレビー小体型認知症(DLB)の鑑別には、交感神経皮膚反応(sympathetic skin response:SSR)と心拍変動率(HRV)の測定が有用である可能性が、金沢大学保健管理センターの根上昌子氏らによる検討の結果より示された。BMJ Open 2013年3月1日号の掲載報告。