日本語でわかる最新の海外医学論文|page:767

統合失調症患者の運動増進、どうしたら上手くいくか

 統合失調症患者において、定期的な運動は身体的にも精神的にも良い影響を与える。しかし、先行研究における参加者の少なさや高い脱落率から示されるように、認識力、理解力、情動、意志力の障害が運動を計画および実行を困難にしている。ドイツ・コンスタンツ大学のPascal Sailer氏らは、心理対比と実行意図(Mental Contrasting and Implementation Intentions:MCII)という手法が、統合失調症患者の運動増進に有用なのかを評価するため、パイロット無作為化比較試験を実施した。その結果、MCII法は、自主性重視の環境でも患者の“運動する”という意図した行動の実現に役立つことが認められた。BMC Psychiatry誌オンライン版2015年9月3日号の掲載報告。

正常眼圧緑内障の乳頭出血、血小板機能低下で発見されやすい?

 正常眼圧緑内障にみられる乳頭出血は、血小板機能の低下と関連していることが、韓国・成均館大学のSeong Hee Shim氏らの前向き横断研究によって明らかになった。著者は「乳頭出血を有する正常眼圧緑内障患者では、血小板凝集が遅れて出血が長引き吸収が遅延するため、乳頭出血が検出されやすい可能性がある」とまとめている。American Journal of Ophthalmology誌オンライン版2015年9月14日号の掲載報告。

片頭痛の頻度と強度、血清脂質と有意に相関

 片頭痛は心血管疾患、とくに脂質異常症のリスク増加と関連していることが報告されているが、これまで片頭痛の重症度と血清脂質との関係を調べた研究はなかった。イタリア・G.D'Annunzio UniversityのClaudio Tana氏らは、小規模な後ろ向き研究において、総コレステロールおよびLDL-コレステロール値が、片頭痛の頻度および強度と有意な正の関連があることを明らかにした。また、片頭痛予防薬による治療後に、これら血清脂質値が有意に減少していることを初めて明らかにした。著者は「本研究は予備的研究であり、今後は前向き比較試験によって確認されなければならない」とまとめている。Pain Practice誌2015年9月号(オンライン版2014年7月10日号)の掲載報告。

中高年高血圧症例では足関節上腕血圧比測定を考慮する必要はあるか?(解説:冨山 博史 氏)-429

本研究は、英国において1990年から2013年までプライマリケアで電子媒体に登録された、30~90歳の成人422万例の医療記録データを、前向き研究(平均観察期間7年)として解析した。前向き研究開始時に、末梢動脈疾患(PAD)非合併例は420万4,190例であり、PAD合併例は1万8,296例であった。前者では、経過中に4万4,239例(1.1%)でPADを発症し、収縮期血圧20mmHg上昇に伴い、PAD発症リスクは63%高まることが示された。

テクノロジーを用いた不眠症治療、改善の余地あり

 不眠の訴えを軽減する一助として、複数のテクノロジーが提案されている。ユーザーの視点からみたこれらテクノロジーの評価は、治療アドヒアランスと関連する背景因子の知見を提供しうる。オランダ・デルフト工科大学のCorine Horsch氏らは、テクノロジーを用いた不眠症治療のアドヒアランスの状況を、メタ解析により調べた。その結果、アドヒアランス率は50%程度で改善の余地は大きいことが示唆されたが、不眠症患者自身は十分なアドヒアランスを保っていると考えており、いわゆる“アドヒアランスバイアス”が存在することを報告した。Journal of Medical Internet Research誌オンライン版2015年9月4日号の掲載報告。

EMPA-REG OUTCOME試験:それでも安易な処方は禁物(解説:桑島 巌 氏)-428

この結果をみて真っ先に連想したのは、高血圧治療薬で、利尿薬がCa拮抗薬、ACE阻害薬、α遮断薬などよりも優れた心血管合併症予防効果を証明したALLHAT試験である。利尿作用が心不全悪化を防いだために全体を有利に導き、心疾患合併症例における利尿薬の強さをみせた試験であった。

携帯メッセージでの生活習慣支援、LDL-C値改善に有効/JAMA

 冠動脈疾患患者に対し、携帯電話を活用した生活習慣に焦点を合わせたテキストメッセージサービス介入で、大半のLDL-C値が改善し、その他の心血管疾患リスク因子も大きく改善したことが報告された。オーストラリア・シドニー大学のClara K. Chow氏らが通常ケア介入と比較した無作為化試験Tobacco, Exercise and Diet Messages(TEXT ME)の結果、報告した。ただし、示された結果について著者は、「改善効果の期間や、臨床的アウトカムに結び付くのかどうかはなお不明である」と述べ、さらなる検討の必要性を指摘している。JAMA誌2015年9月22/29日号掲載の報告より。

新システム人工膵臓、長期使用の有用性を確認/NEJM

 クローズドループシステムの人工膵臓の、長期使用の有用性が報告された。1型糖尿病患者を対象とした検討で、これまでのセンサー併用型ポンプ療法と比較して血糖コントロールを改善し、低血糖の発生は低く、成人被験者では血糖値の低下に結びついたという。英国・ケンブリッジ大学のHood Thabit氏らが、小児・青年25例と成人33例を対象とした12週間使用について検討を行い報告した。在宅療法としてのクローズドループシステムの人工膵臓の長期使用の可能性、安全性および有効性については、これまで確認されていなかった。NEJM誌オンライン版2015年9月17日号掲載の報告。

持効性注射剤と経口薬の比較分析、どんなメリットがあるか

 抗精神病薬投与は統合失調症の治療の柱であるが、大多数の患者でアドヒアランス不良が顕著な問題となっている。それらの患者に対しては持効性注射剤(LAI)が治療オプションとして推奨されているが、その利点に関するエビデンスは明確ではなく、とくに新規の第2世代LAIに関する観察データは限定的であった。米国・ペンシルベニア大学のSteven C. Marcus氏らによるメディケイド支払データベースの分析結果から、退院後の統合失調症患者に対する投薬は、LAIのベネフィットを支持するエビデンスが増加していることが示唆された。製剤はとくに第2世代LAIで認められた。著者らは、「新たなLAIが登場しており、さらなる大規模なリアルワールド試験を行い、LAIの臨床的アウトカムおよびコスト面での利点を詳細に明らかにする必要があるだろう」とまとめている。Journal of Managed Care & Specialty Pharmacy誌2015年9月号の掲載報告。

甘くみていませんか、RSウイルス感染症

 10月1日、都内においてアッヴィ合同会社は、RSウイルス感染症に関するプレスセミナーを開催した。セミナーでは、小保内 俊雅氏(多摩北部医療センター 小児科部長)が「秋から冬に流行る呼吸器感染症 侮れないRSウイルス~突然死を含む重症例の観点から~」と題し、最新のRSウイルス感染症の動向や臨床知見と小児の突然死を絡め、解説が行われた。

日本初のバルーン型「Arctic Front Advance 冷凍アブレーションカテーテル」発売

 日本メドトロニック株式会社は10月5日、不整脈の一種である薬剤抵抗性を有する再発性症候性の発作性心房細動を目的とした冷凍アブレーションカテーテル「Arctic Front Advance 冷凍アブレーションカテーテル(以下、Arctic Front Advance)」を、全国で発売開始した。バルーン型、冷凍方式のアブレーションカテーテルは日本国内で初となる。

転移性メラノーマにニボルマブ・イピリムマブ併用療法をFDAが承認

 ブリストル・マイヤーズ スクイブ社(NYSE:BMY/本社:米国・ニューヨーク/CEO:ジョバンニ・カフォリオ)は2015年10月1日、米国食品医薬品局(FDA)が、BRAF V600 野生型の切除不能または転移性の悪性黒色腫患者を対象とした、ニボルマブ(商品名:オプジーボ)とイピリムマブ(商品名:ヤーボイ)の併用療法を承認したと発表した。  今回の承認は、未治療の切除不能または転移性の悪性黒色腫患者において、オプジーボとヤーボイの併用療法を評価したCheckMate069試験のデータに基づいている。

カテーテル関連感染症、クロルヘキシジン消毒で大幅減/Lancet

 カテーテル挿入前に、皮膚消毒をクロルヘキシジン・アルコールで行うと、ポビドンヨード・アルコールを使った場合に比べて、カテーテル関連感染症リスクは85%低下することが示された。フランス・CHU de PoitiersのOlivier Mimoz氏らが、2,546例を対象とした無作為化比較試験の結果、報告した。結果を踏まえて著者は、「血管内カテーテル関連感染症予防のためにも全例について、皮膚消毒はクロルヘキシジン・アルコールを用いるべきである」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年9月17日号掲載の報告より。

アルツハイマー病の焦燥性興奮に新規配合薬が有望/JAMA

 アルツハイマー病が疑われ焦燥性興奮を呈する患者に対し、開発中の配合薬デキストロメトルファン臭化水素酸塩+キニジン硫酸塩の10週間投与により、興奮症状の軽減が認められたことが報告された。米国・Cleveland Clinic Lou Ruvo Center for Brain HealthのJeffrey L. Cummings氏らが行った第II相臨床試験の結果、示された。全体的に忍容性も良好だったという。JAMA誌2015年9月22/29日号掲載の報告より。

REACT試験:クローン病に対する早期複合免疫療法の有用性~集団無作為化試験(解説:上村 直実 氏)-427

クローン病は原因不明で根治的治療が確立していない炎症性腸疾患であり、わが国では医療費補助の対象である特定疾患に指定されている。しかし、抗TNF受容体拮抗薬の出現とともに、本疾患に対する薬物療法が大きく変わりつつある。欧米では、症状や炎症の程度によって、5-ASA製剤、ステロイド、代謝拮抗薬、抗TNF受容体拮抗薬と段階的にステップアップする従来型の薬物療法に対して、代謝拮抗薬と抗TNF-α受容体拮抗薬を早期から使用する早期複合免疫療法の有効性と安全性を比較検証する臨床研究が、盛んに行われている。

てんかん重積状態の薬物療法はエビデンス・フリー・ゾーン

 てんかん重積状態(SE)は、最も重篤なてんかんの様式であり、最もよく発生する精神的緊急症状で、発生頻度は10万人年当たり61件、推定死亡率は20%である。臨床的に強直性間代性けいれんSEは、4つの連続するステージすなわちearly、established、refractory、super-refractoryに分けられる。しかしSEの薬物治療について、とくに後半のステージには、臨床決定の情報となる質の高い対照試験がないことから、“エビデンス・フリー・ゾーン”となっている。オーストリア・パラケルスス医科大学のEugen Trinka氏らは、SEの経過に応じた薬物療法のエビデンスについて包括的ナラティブレビューを行った。その結果、established SEにはフェニトインやフェノバルビタール、refractory、super-refractoryには麻酔薬が広く使用されていることを明らかにした。Drugs誌2015年9月号の掲載報告。

子供の近視、外で遊ばせると予防できる?/JAMA

 東アジアや東南アジアでは近視が増加しているが、中国・中山大学のMingguang He氏らは、小学1年生を対象としたクラスター無作為化試験により、小児の近視は屋外活動を増やすことで予防できる可能性があることを明らかにした。学校での屋外活動時間を1日40分追加することで、対照に比べ近視の累積発症率が有意に低下したという。著者は、「本研究に参加した小児の長期追跡調査と、今回の知見が一般化できるかさらなる試験が必要」とまとめている。JAMA誌2015年9月15日号の掲載報告。

子宮頸がん、新規ワクチンに治療効果の可能性/Lancet

 HPV-16/18に関連する子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)に対し、HPV-16/18(E6/E7蛋白)を標的にする合成プラスミドVGX-3100を投与することで、病理組織学的な退縮がみられ、治療効果がある可能性が示された。米国・ジョンズホプキンス大学のCornelia L. Trimble氏らが、167例を対象に行った第IIb相のプラセボ対照無作為化二重盲検試験の結果、報告した。CINの治療は切除とされているが、切除では生殖性の罹患状態が長期に続く可能性がある。そこで研究グループは、VGX-3100ワクチンに対宿効果があるかどうかを調べた。Lancet誌オンライン版2015年9月16日号で発表した。