プロトコールに基づく薬剤師の介入で、医療の質向上を

提供元:ケアネット

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公開日:2016/02/18

 

 日本医療薬学会は2月11日、都内にて「薬剤師が担うチーム医療と地域医療の調査とアウトカムの評価研究シンポジウム」(研究代表者:東京医科歯科大学 教授 安原 眞人氏)を開催した。この研究は2013年から厚生労働科学研究事業として、チーム医療の進展や地域医療の拡充に向けて、薬剤師の担う役割を明確にし、求められる専門性を生かすための実践的方法論を確立することを目的として、3年間の計画で開始された。初年度は先行事例の収集、2014年度はアウトカム評価、そして2015年度は実践的方法論に焦点が当てられた。

 チーム医療推進研究においては、プロトコールに基づく薬物治療管理(Protocol Based Pharmacotherapy Management、以下PBPM)の導入・実施をテーマとし、そのアウトカムは、医療の質、安全性、経済性、そして医療従事者の負担軽減を指標として評価された。
 また、地域医療推進研究の主題は、かかりつけ薬局機能を持った在宅医療提供薬局を推進するための新たな基準作成であり、2014年に「薬局に求められる機能とあるべき姿」が発表された。これは翌年発表の「患者のための薬局ビジョン」策定へとつながり、さらには2016年度の診療報酬改定で新設された、かかりつけ薬剤師・薬局の評価へと発展していった。

 2015年度研究における具体的なアウトカムとして、下記の事例が紹介された。たとえば、名古屋大学医学部附属病院では、医師や看護師と協議のうえ承認されたプロトコールに基づき、薬剤師が処方入力支援をしたことにより、臨時処方や緊急処方が減少した。また、薬剤師外来でのワルファリン療法におけるPBPMにより、PT-INR値が目標治療域に達する患者割合が増加した例なども挙げられた。

 地域医療の事例としては、茨城県笠間市の禁煙治療プログラムにおける、プロトコールに基づく薬剤師介入後の禁煙率上昇などが報告された。一方で、地域におけるPBPMは、複数の施設間での合意が必要となるため、医療機関のような同一施設内よりも、導入・実施がより難しいことが指摘された。

 2010年度の厚生労働省医政局長通知「医療スタッフの協働・連携によるチーム医療の推進について」(医政発0403第1号)では、薬剤師を積極的に活用することが可能な業務の1つとして、「薬剤の種類、投与量、投与方法、投与期間等の変更や検査のオーダについて、医師・薬剤師等により事前に作成・合意されたプロトコールに基づき、専門的知見の活用を通じて、医師等と協働して実施すること」が挙げられている。しかしながら、同研究班の調査によると、同業務を5割以上実施している医療施設の割合は、2013年時点で約15%にとどまっている。同研究班では、最終報告書策定に向けて、現在PBPMの導入マニュアルを作成しており、今後、医療現場での活用が期待される。

(ケアネット 後町 陽子)