日本語でわかる最新の海外医学論文|page:752

尿もれ治療の経口抗コリン薬、ドライアイの原因に

 切迫性尿失禁や過活動膀胱の主たる治療薬である経口抗コリン薬は、排尿筋以外に眼や唾液腺などのムスカリン受容体も阻害する。トルコ・Zekai Tahir Burak Women's Health Education and Research HospitalのZuhal Ozen Tunay氏らは、過活動膀胱の女性患者において前向き研究を行い、経口抗コリン薬が涙液分泌に対し有意な悪影響を及ぼし、投与期間が長いほどその影響が大きくなる可能性があることを報告した。International Urogynecology Journal誌オンライン版12月7日号の掲載報告。

TAVR導入で既存臨床はどう変わったか/NEJM

 経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)導入の臨床への影響を調べた結果、TAVRの施行増大に伴う外科的大動脈弁置換術(SAVR)の減少はわずかであった。また、TAVR患者はSAVR患者よりも高齢で手術リスクが高く、院内死亡率は両群ともに減少していたが、TAVRのほうが減少の程度が大きかったことなどが判明した。ドイツ・アルベルト・ルートヴィヒ大学フライブルクのJochen Reinohl氏らが、同国における2007~13年の動向を調べ報告した。NEJM誌2015年12月17日号掲載の報告。

統合失調症の遺伝的脆弱性を示す新たなマーカー

統合失調症では構造的脳内ネットワークを構成する白質統合が不十分な状況が認められ、脳領域での情報伝達能を減弱させると考えられている。しかし、これらの異常が、統合失調症発症の遺伝的リスクに影響する程度については不明であった。オランダ・ユトレヒト大学医療センターのMarc M. Bohlken氏らは、統合失調症発症の遺伝的リスクと脳内ネットワークを構成する白質統合性との関連について検討した結果、白質統合指標のMRI画像上のfractional anisotropy(FA)が、統合失調症発症リスクと関連する可能性を明らかにした。JAMA Psychiatry誌オンライン版2015年11月25日号の掲載報告。

院内でコーヒーを最もよく飲む診療科は?/BMJ

 院内で医師が飲むコーヒーの年間摂取量は、外科医が内科医より多い傾向があり、専門科医別にみると整形外科医が最も多く、最も少ないのは麻酔科医だった。また、若手医師よりも、経験5年超のベテラン医師のほうが摂取量は多いこと、部門トップが最も多くおごっていることなどが判明したという。スイス・Kantonsspital St. Gallen社のKarlmeinrad Giesinger氏らが、ある教育病院に所属する医師800人弱について、1年間の院内カフェテリアにおけるコーヒー購入状況を調べ報告した。BMJ誌オンライン版2015年12月16日号クリスマス特集号掲載の報告より。

非浸潤性乳管がん、アナストロゾールの再発予防効果を確認/Lancet

 閉経後のホルモン受容体陽性非浸潤性乳管がん(DCIS)で、乳腺腫瘤摘出術と放射線療法を行った患者に対するアナストロゾール(商品名:アリミデックスほか)投与は、タモキシフェン(同:ノルバデックスほか)投与に比べ、有意な再発予防効果が認められたことが報告された。両者の差は5年を過ぎてから確認され、また60歳未満患者に対してアナストロゾールの有意な治療効果が認められた。カナダ・マギル大学のRichard G. Margolese氏らが実施した無作為化二重盲検試験、National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project(NSABP)B-35試験の結果、示された。現在、DCISに対する標準治療は、腫瘤を切除後、放射線療法および補助療法(通常タモキシフェン)とされている。研究グループは、補助療法としてアナストロゾールがより安全で、効果があるのではないかとして、両者を比較する検討を行った。Lancet誌2015年12月10日号掲載の報告。

非薬物的介入の併用で認知症への抗精神病薬使用が減らせるか

 英国・ロンドン大学のClive Ballard氏らは、介護施設に入居中の認知症患者を対象に、抗精神病薬の見直し、社会的交流、運動などの介入が、抗精神病薬の使用状況や興奮、うつなどの症状に及ぼす影響を評価した。その結果、抗精神病薬の見直しにより使用が減少したが、より高いベネフィットを期待するには、その他の非薬物的介入も併用することが望ましいと報告した。American Journal of Psychiatry誌オンライン版2015年11月20日号の掲載報告。

過去20年で健康寿命が4年前後増加/Lancet

 英国・ニューカッスル大学のCarol Jagger氏らは、イングランドにおける1991~2011年の高齢者の健康寿命(主観的健康感、認知機能、日常生活動作[ADL]障害で評価)の変化を調べた。10年ごと2回にわたったCognitive Function and Ageing Study IおよびIIの結果を分析した結果、認知機能障害のない期間と主観的健康感は増大、ADL障害についてはあまり変化していないことが明らかになったという。こうした結果の背景要因として著者は、「明らかではないが、先の10年に肥満者が増大したことが考えられる」と分析したうえで、「われわれの所見は、政府、雇用者そして個人に重要な示唆を与える。とくに勤続年齢の引き上げに関して、また地域医療サービスや軽症~中等度の障害者を支える家族介護者に対して重要な示唆を与える」と述べている。Lancet誌オンライン版2015年12月8日号掲載の報告。

医療関係者向けLINE公式アカウントから情報提供を開始:アストラゼネカ

 アストラゼネカ株式会社(本社:大阪府大阪市北区、代表取締役社長:ガブリエル・ベルチ、以下、アストラゼネカ)は、LINE株式会社(本社:東京都渋谷区、代表取締役社長 CEO: 出澤剛、以下、LINE)が提供するコミュニケーションアプリ「LINE」の公式アカウントを開設し、医療関係者を対象に同社サイト「MediChannel」の登録会員に対する利便性を向上させた情報配信サービスを2015年12月25 日より提供開始した。日本において、医療関係者向けにLINE公式アカウントを開設し情報提供をするのは、アストラゼネカが初めて。

抗がん薬副作用マネジメントの進展

 2015年12月10日都内にて、「抗がん薬副作用マネジメントの進展」と題するセミナーが開かれた(主催:アストラゼネカ株式会社)。演者である久保田 馨氏(日本医科大学附属病院 がん診療センター部長)は、抗がん薬の副作用対策を中心に講演。患者さんの負担を考えながら予防・対処する大切さを語った。

経鼻インフルエンザワクチン、卵アレルギー児も接種可?/BMJ

 卵アレルギーのある未成年者(2~18歳)を対象に、卵成分を含む弱毒生インフルエンザワクチン(LAIV)の安全性について検討した結果、卵アレルギーのある児でLAIVによる全身性アレルギー反応が起きるリスクは低く、またコントロール良好な喘息児への同接種について忍容性が認められるとの見解が示された。英国インペリアル・カレッジ・ロンドンPaul J Turner氏らが国内30施設778例を対象とした非盲検第IV相介入試験の結果、報告した。英国では小児予防ワクチンスケジュールに経鼻LAIVが導入されたが、卵アレルギーは頻度が高く、就学前児童では2~6%に及ぶとされる。卵アレルギーや喘息を有する未成年者へのLAIV接種に関する安全性データは限定的で、ガイドラインの中には、喘息持ちの5歳未満児でのLAIV接種は避けるよう勧告するものもあった。BMJ誌オンライン版2015年12月8日号掲載の報告。

第2世代抗うつ薬と認知行動療法、アウトカムは同等/BMJ

 大うつ病性障害の初期治療において、第2世代抗うつ薬投与および認知行動療法(CBT)の治療効果や有害作用は同等であることを、米国・ノースカロライナ大学のHalle R. Amick氏らが、システマティックレビューとメタ解析の結果、報告した。すでに第2世代抗うつ薬およびCBTの、大うつ病性障害における効果および有害性は実証されている。しかし、プライマリケア医からは、最適な治療オプションを選択できるよう質の高い治療比較のエビデンスを求める声が寄せられていた。BMJ誌オンライン版2015年12月8日号掲載の報告。

高齢者のSU薬とワルファリンの併用、低血糖リスク増大/BMJ

 高齢者のワルファリンとスルホニル尿素薬(SU薬)の同時服用は、SU薬単独服用時に比べ、低血糖による病院救急部門受診・入院リスクを約1.2倍に増大することが、また、転倒リスクも約1.5倍に増大することが明らかにされた。米国・南カリフォルニア大学のJohn A. Romley氏らが、65歳以上のメディケア出来高払いプラン加入者の保険請求データを基に後ろ向きコホート試験を行った結果、示されたという。著者は、「結果は、これら薬物間の重大な相互作用の可能性を示唆するものだ」と指摘している。BMJ誌オンライン版2015年12月7日号掲載の報告。

重症肺気腫に気管支バルブ治療は有用か/NEJM

 気管支バルブ治療が葉間側副換気がない重症肺気腫患者の、肺機能および運動耐容能を有意に改善したことが、オランダ・フローニンゲン大学のKarin Klooster氏らによる無作為化試験の結果、報告された。一方向性の気管支バルブを用いた気管支鏡下肺容量減少療法は、重症肺気腫患者の治療として有望視されているが、これまでに報告された有益性はわずかなものであった。一方で先行研究において、葉間側副換気がない患者における有益性の可能性が示唆されており、研究グループはその仮説について検証した。NEJM誌2015年12月10日号掲載の報告。

血栓吸引療法に引導は渡ったか?TOTAL試験1年追跡(解説:香坂 俊 氏)-463

このところ血栓吸引療法の旗色がよろしくない。(1)急性心筋梗塞では冠動脈内でプラークが破裂し、血栓を形成する。(2)その血栓はバルーンやステントを行う前に吸引しておいたほうが良さそうだ。(3)実際、小規模のランダム化試験ではうまくいった(TAPAS試験)。この三段論法で、とくに日本のカテーテルインターベンション(PCI)の現場では広く行われてきた。自分たちでもKiCSという関東一円の多施設共同PCIレジストリで集計してみたところ、ST上昇心筋梗塞症例に対するPCIの実に65.4%で血栓吸引が行われていた。

コリンエステラーゼ阻害薬の副作用、全世界の報告を分析

 アルツハイマー病(AD)に対してコリンエステラーゼ阻害薬(ChEI)が臨床使用できるようになって以来、AD患者におけるChEIの副作用スペクトラムを評価する世界的な医薬品安全性監視(ファーマコビジランス)研究は実施されていない。カナダ・ラバル大学のEdeltraut Kroger氏らは、WHO国際医薬品モニタリングプログラムのデータベース(VigiBase)を用い、16年にわたるADにおけるChEI関連副作用を分析した。その結果、精神神経系障害の副作用が最も多いこと、心血管系障害の副作用の重要性が過小評価されていた可能性があることなどを示した。結果を踏まえ、著者らは「患者のフレイルや高頻度の併用薬使用によっては、ChEIの投与を開始する前に副作用について注意が必要である」とまとめている。Annals of Pharmacotherapy誌2015年11月号(オンライン版2015年8月31日号)掲載報告。