日本語でわかる最新の海外医学論文|page:755

統合失調症では認知症リスクが増加

 統合失調症患者では認知症の相対リスクが著明に増加することが、デンマーク・オーフス大学のAnette Riisgaard Ribe氏らによる、デンマークの全国登録を用いた大規模コホート研究の結果、示された。そのリスク増加は、既知の認知症危険因子とは独立しており、とくに65歳未満の統合失調症患者で認知症リスクが高かったという。統合失調症は、加齢に伴う疾患や認知障害と関連しているが、統合失調症がない場合と比べて認知症になるリスクが高いかどうかは不明であった。JAMA Psychiatry誌2015年11月1日号の掲載報告。

妊婦の週末の入院・出産は、平日よりハイリスク/BMJ

 英国で妊婦が週末に入院または出産した場合、平日の場合と比べて、母体および新生児の臨床的アウトカムを示す7つの指標のうち4つまでが劣っており、いわゆる“週末効果”が存在することが確認された。すべての妊婦が平日に出産した場合に比べると、年間で周産期死亡が770件、母体感染症が470件、過剰に発生していることが推定されたという。インペリアル・カレッジ・ロンドンのWilliam L. Palmer氏らが行った観察試験の結果、明らかにされた。BMJ誌オンライン版2015年11月24日号掲載の報告。

新型インフルエンザH7N9、初の院内感染例か/BMJ

 鳥インフルエンザA(H7N9)ウイルスの院内ヒト-ヒト感染例が、中国・浙江省衢州市疾病予防管理センターのChun-Fu Fang氏らにより報告された。感染入院患者と5日間、同一病棟に入院していたCOPD既往患者への伝播が、疫学調査により確認されたという。その他同一病棟患者への感染が検体不足で確認できず、患者間の感染は確定できなかったが、著者は「今回の調査結果は、病院内での無関係のヒト-ヒト間におけるH7N9ウイルス感染のエビデンスを提示するものだ」と述べ、「インフルエンザ様疾患を呈した入院患者および家禽市場のサーベイランスを強化し、ウイルスの伝播・病原のモニタリングを十分に行う必要がある」と提言している。BMJ誌オンライン版2015年11月19日号掲載の報告。

抗Xaの囮療法の評価をどうする?(解説:後藤 信哉 氏)-459

血液凝固検査は、細胞の存在しない液相で施行される。しかし、生体内の血液凝固反応は活性化細胞膜上、白血球上などのリン脂質膜上にて主に起こる。ワルファリンは、血液凝固因子第II、VII、IX、X因子と生体膜のphosphatidylserineの結合を阻害する効果を有した。ワルファリン服用下では、液相での血液凝固検査における凝固系の機能異常以上に、生体内における細胞膜を介した凝固系も効率的に予防した。いわゆる新規の経口抗トロンビン薬、抗Xa薬は、凝固因子のトロンビン産生、フィブリン産生の酵素作用を可逆的に阻害する。ワルファリンとは作用メカニズムが異なるので、中和作用も異なる。抗トロンビン薬ダビガトランは、液相、細胞膜上の両者にてフィブリノーゲンからフィブリンを産生するトロンビンの作用を阻害している。トロンビンに結合するダビガトランを単純に失活させれば、中和薬としての効果を期待できた。

報奨金は医師・患者双方に支払われて初めて効果が現れる(解説:折笠 秀樹 氏)-458

RCT(ランダム化比較試験)というと、薬剤の比較試験を思い出す人が多いだろうが、今回のRCTは一風変わっている。対象は、脂質異常(ベースラインLDL平均値は160mg/dL)の患者、エンドポイントも通常のLDL値であるが、介入が変わっている。LDL低下の目標を達成できたときに報奨金を出すという介入である。

重度うつ病、抗うつ効果の即効性を上げる方法

 経口抗うつ薬は数週間後に効果が現れるのに対し、ケタミン単回静脈内投与(静注)は効果の持続期間は限られているものの迅速な抗うつ効果を発揮する。中国・首都医科大学のY.D.Hu氏らは、4週間の無作為化二重盲検プラセボ対照比較試験を行い、エスシタロプラム+ケタミン単回静注増強療法が重度の大うつ病性障害(MDD)に対して有効かつ安全であることを明らかにした。著者は、「エスシタロプラム+ケタミン単回静注増強療法は、経口抗うつ薬治療の効果発現を早める可能性がある」とまとめている。Psychological Medicine誌オンライン版2015年10月19日号の掲載報告。

転移性膵臓がん、イリノテカン+フルオロウラシル+葉酸で生存延長/Lancet

 ゲムシタビン治療歴のある転移性膵臓がんの患者に対して、ナノリポソーム型イリノテカン+フルオロウラシル+葉酸(NAPOLI-1)の投与が、ナノリポソーム型イリノテカン単独投与やフルオロウラシル/葉酸のみの投与に比べ、生存期間は有意に延長することが示された。米国・ワシントン大学のAndrea Wang-Gillam氏らによる第III相の非盲検無作為化比較試験の結果、報告された。第II相試験で、同患者へのナノリポソーム型イリノテカン単独投与の有効性が示され、研究グループは第III相試験では、単独投与とフルオロウラシル/葉酸を併用した場合を比較した。Lancet誌オンライン版2015年11月20日号掲載の報告。

高齢視覚障害者のうつ、段階的ケアの長期効果を確認/BMJ

 うつ病や不安症がみられる高齢視覚障害者への、経過観察→ロービジョン施設セラピストによる自立支援指導等介入→かかりつけ医による治療という段階的ケアの長期有効性が、オランダ・アムステルダム自由大学医療センターのHilde P A van der Aa氏らによる、通常ケアと比較した多施設無作為化試験の結果、報告された。段階的ケアについては先行研究で、高齢視覚障害者のうつ症状を短期的に軽減することは示されていたが、長期的な効果について、また不安症に対するエビデンスは不足していた。今回の検討では約1年間にわたる介入を必要に応じて行い、2年時点で評価した結果だという。著者は、「本アプローチは、うつ病や不安症がみられる高齢視覚障害者の標準的な戦略(スクリーニング、モニタリング、介入、紹介)となりうるだろう」と述べている。BMJ誌オンライン版2015年11月23日号掲載の報告。

治療薬は「痛み」の種類で変わる

 ファイザー株式会社とエーザイ株式会社は、12月1日に都内において「いまさら聞けない痛み止め薬の基礎知識」をテーマに、プレスセミナーを共催した。セミナーでは、ファイザー社が行ったアンケート調査「痛み止め薬の使用実態と患者意識に関する全国調査」を織り交ぜ、加藤 実氏(日本大学医学部麻酔科学系麻酔科学分野 診療教授)が慢性痛とその治療の概要をレクチャーした。

NASHへのリラグルチド、第II相試験で有望/Lancet

 非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)に対するリラグルチドの有効性と安全性が、第II相多施設共同二重盲検無作為化プラセボ対照試験の結果、報告された。組織所見の改善が認められ、安全性および良好な忍容性が確認されたという。英国・バーミンガム大学のMatthew James Armstrong氏らが報告した。結果を踏まえて著者は「長期試験を行う根拠が得られた」と述べている。GLP-1アナログ製剤については、マウスモデルで肝脂肪、肝酵素濃度、インスリン抵抗性の改善が確認されている。製剤は2型糖尿病治療薬としては承認されているが、非アルコール性脂肪性肝炎に対する有効性は明らかになっていない。Lancet誌オンライン版2015年11月19日号掲載の報告。

TUXEDO-India試験:糖尿病患者でも第1世代DESは不要(解説:上田 恭敬 氏)-457

TUXEDO-India Trialにおいては、1,830例の糖尿病を持つPCI予定冠動脈疾患患者を、第1世代DESであるTaxus Element(paclitaxel-eluting stent)群と、第2世代のDESで最も優れた臨床成績を示しているDESの1つであるXience Prime(everolimus-eluting stent)群に無作為に割り付け、1年間の心臓死・標的血管を責任血管とする心筋梗塞発症・虚血を理由とする、標的血管再血行再建術施行の複合エンドポイントの発生頻度を比較している。Taxus Elementの非劣性を示そうとした試験であったが、複合エンドポイントの頻度が5.6% vs.2.9%とTaxus Elementで有意に高い結果となり、Xience Primeが有意に優れていることが示された。

重症うつ病の寛解率、治療法により違いがあるか

 ベースラインのうつ病重症度は、認知行動療法(CBT)と抗うつ薬による薬物療法(ADM)間の重症度や治療反応率、寛解率の差に影響しないことが示された。オランダ・アムステルダム自由大学のErica S. Weitz氏らが、システマティックレビューの結果、報告した。現行ガイドラインにおいて、重度のうつ病には薬物療法が推奨されているが、著者らは、「今回の結果は、外来患者にADMを推奨するにあたってベースラインの重症度のみでは、データが不十分であることを示している。他の薬物療法あるいは個々の抗うつ薬や入院患者にそのまま当てはめることはできないが、新しくかつ重大なエビデンスである」とまとめている。JAMA Psychiatry誌2015年11月1日号の掲載報告。

新規インテグリン拮抗薬、ドライアイ症状を有意に改善

 lifitegrastは、ドライアイに関与するT細胞を介した炎症を抑制するインテグリン拮抗薬である。米国・Tauber Eye CenterのJoseph Tauber氏らによる12週間の多施設共同無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験(OPUS-2試験)の結果、lifitegrastはドライアイ症状を有意に改善し、主要評価項目を達成した。ただし、もう1つの主要評価項目である角膜下側染色スコアについては有意な改善を認めなかった。

心房細動の抗血栓療法時の消化管出血後、再開による死亡リスクは?/BMJ

 心房細動患者の消化管出血後の抗血栓療法再開による全死因死亡などのリスクについて調べた結果、再開しなかった患者群との比較で、再開レジメン別にみると経口抗凝固薬単独再開群の全死因死亡および血栓塞栓症のアウトカムが良好であったことが、デンマーク・コペンハーゲン大学病院のLaila Staerk氏らによるコホート試験の結果、明らかにされた。消化管出血は、経口抗凝固療法を受ける心房細動患者の出血部位として最も多いが、同出血後に抗血栓療法を再開するのか見合わせるのかに関してはデータが不足していた。BMJ誌オンライン版2015年11月16日号掲載の報告。

統合失調症へのヨガ補助療法、その有用性は

 インドを発祥とするヨガは古くからある精神修行であるが、現在では西洋でもリラクゼーションおよびエクササイズの1つの形態として受け入れられている。そうした中で、統合失調症患者に対する標準治療の補助療法としての有効性の評価が注目されている。アイルランドのセント・ジェームス病院Julie Broderick氏らは、統合失調症患者に対するヨガの補助療法としての有効性について検討した。検索により統合失調症患者を対象とし、ヨガと標準治療の比較を行っている8件の無作為化対照試験(RCT)をレビューした結果、限定的なサンプルサイズと6ヵ月以下の短期アウトカムではあったが、ヨガ群で良好な結果が示されたことを報告した。Cochrane Database Systematic Reviewsオンライン版2015年10月21日号の掲載報告。

ランナーにおける腸脛靱帯症候群のバイオメカニクス

 ランニング障害で2番目に多いのが腸脛靱帯症候群である。この10年、徐々に発生頻度が増加してきており注目されている。最後のシステマティックレビュー以降、さらに6報の論文が発表された。南アフリカ・ステレンボッシュ大学のJodi Aderem氏らは最新のシステマティックレビューを行い、ランナーの腸脛靱帯症候群に関連する体幹、骨盤および下肢のバイオメカニクス的なリスク因子を明らかにした。