日本語でわかる最新の海外医学論文|page:645

BPSDに対するイチョウ葉エキスの効果~メタ解析

 イチョウ葉抽出エキスであるEGb761が認知症のBPSD(認知症の行動と心理症状)治療に有効であることが、無作為化比較試験で報告されている。スイス・チューリッヒ大学のEgemen Savaskan氏らは、これらの無作為化試験についてメタ解析を行った。International psychogeriatrics誌オンライン版2017年9月21日号の報告。

オシメルチニブ、FLAURA試験の日本人サブグループ解析/日本肺癌学会

 EGFR変異陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)の1次治療において、第3世代EGFR-TKIオシメルチニブ(商品名:タグリッソ)が、第1世代EGFR-TKIによる標準治療と比較し病勢増悪および死亡のリスクを減少させたことが、欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017)で発表されたFLAURA試験の初回解析結果から明らかとなっている。同試験の日本人サブグループ解析結果が、2017年10月14日、第58回日本肺癌学会学術集会で国立がん研究センター中央病院の大江裕一郎氏により発表された。

アカントアメーバ角膜炎、共焦点顕微鏡併用で迅速診断

 アカントアメーバ角膜炎(AK)は重篤な視力障害をもたらす疾患である。ベルギー・AZ Sint-Jan病院のSophie De Craene氏らは、共焦点顕微鏡によるアカントアメーバ角膜炎の診断についてin vivoにて評価し、同法がとくに、PCR検査の遅延時や陰性または実施不可のときの診断に役立つことを示した。共焦点顕微鏡は、AKの標的像および栄養体像を特徴的に捉えることができ、高輝度物体クラスタも非常に特異的に捉える。しかしAKの特徴に対する全体的な感度は低いという。著者は、「臨床的特徴、微生物学的試験(角膜病巣を掻爬して得た検体の直接検鏡と培養)およびPCRに加え、共焦点顕微鏡を用いることで、より迅速な診断と治療の開始が可能となり、予後の改善につながるものと思われる」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2017年9月28日掲載の報告。

濾胞性リンパ腫治療、新規抗体薬vsリツキシマブ/NEJM

 濾胞性リンパ腫の1次治療において、obinutuzumabをベースとする免疫化学療法と維持療法は、リツキシマブをベースとする同様の治療に比べ、無増悪生存(PFS)期間を有意に延長することが、英国・キングス・カレッジ病院のRobert Marcus氏らが行ったGALLIUM試験で示された。研究の成果は、NEJM誌2017年10月5日号に掲載された。抗CD20モノクローナル抗体リツキシマブと化学療法の併用は、新規に診断された濾胞性リンパ腫の転帰を改善し、導入療法後のリツキシマブによる維持療法は良好なPFSおよび全生存(OS)をもたらすが、最終的に多くの患者が再発する。obinutuzumabは糖鎖改変型タイプII抗CD20モノクローナル抗体であり、補体依存性細胞傷害活性はリツキシマブよりも低いが、抗体依存性の細胞傷害活性や食作用活性が高く、直接的なB細胞の除去作用が強いことが示されている。

低用量のアスピリンを中止することによる心血管リスクの上昇

 大手術や出血がないにも関わらず、アスピリンを中止することに伴うリスクへの懸念が高まっている。そこでスウェーデンの研究グループが、長期の低用量アスピリンを中止および治療の中断に伴う心臓血管リスクの増加に関して検証を行った。Circulation誌2017年9月26日号に掲載。

妊娠中の飲酒、子供の認知機能に及ぼす影響

 妊娠中のアルコール摂取は、子供の発育の危険因子であると考えられている。子宮内アルコール曝露の子供におけるバイオマーカーについては、ほとんど研究されていない。ドイツ・フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン・ニュルンベルクのAnna Eichler氏らは、胎便中のアルコール代謝物(エチルグルクロニド:EtG)が、小学校就学年齢の子供における認知機能の発達、ADHD関連行動、注意および執行制御の神経生理学的マーカーと関連しているかを調査した。Journal of child psychology and psychiatry, and allied disciplines誌オンライン版2017年9月11日号の報告。

妊婦のマルチビタミン摂取、児のASDリスク減/BMJ

 妊娠中のマルチビタミン・サプリメントの摂取は、出産児の知的障害を伴う自閉症スペクトル障害(ASD)と、逆相関となる可能性が示された。米国・ドレクセル大学のElizabeth A. DeVilbiss氏らが、スウェーデン・ストックホルムの登録住民をベースにした前向き観察コホート研究の結果を報告した。著者は、「母体栄養と自閉症発症への影響を、さらに詳しく調査することが推奨される」とまとめている。母体のマルチビタミン、鉄分または葉酸のサプリメント摂取が、出産児のASDを予防するかについて、これまでの観察研究では一貫したエビデンスは得られていない。ASDの原因は知的障害の有無によって異なるが、認知機能レベルをベースに栄養サプリメントとASDの関連を調べた研究は、ほとんどなかった。BMJ誌2017年10月4日号掲載の報告。

抗ジカウイルスDNAワクチン、ヒトで免疫応答/NEJM

 開発中の抗ジカウイルスDNAワクチン(GLS-5700)の、ヒト接種の安全性と免疫原性を検討した第I相非盲検臨床試験の速報結果が、NEJM誌オンライン版2017年10月4日号で発表された。米国・ペンシルベニア大学のPablo Tebas氏らが、米国とカナダの3施設で健康なボランティア成人40例(年齢中央値38歳)を集めて1mgまたは2mg接種について検討した結果、全例で安全に免疫応答を誘発したことを報告した。ジカウイルス(ZIKV)感染症に対する承認ワクチンは、現状ではない。今回の結果を受けて著者は、「さらなる試験を行い、ワクチンの有効性と長期的安全性を評価する必要がある」とまとめている。

リバーロキサバンの安定型冠動脈疾患に対する効果(解説:高月誠司氏)-745

本研究は、抗Xa薬リバーロキサバンの冠動脈疾患患者に対する心血管イベントの2次予防効果を検証した二重盲検試験である。2万7,395例の安定した冠動脈疾患患者を対象とし、リバーロキサバン2.5mg 1日2回+アスピリン100mgの併用群、リバーロキサバン5mg 1日2回単剤群、アスピリン100mg単剤群の3群に無作為割り付けした。主要評価項目は心血管死、脳卒中、心筋梗塞の複合エンドポイントで、平均23ヵ月の追跡期間である。

大脳型副腎白質ジストロフィー、遺伝子治療が有望/NEJM

 大脳型副腎白質ジストロフィー(Cerebral Adrenoleukodystrophy:CALD)に対し、Lenti-D遺伝子治療が同種造血幹細胞移植に代わる安全で有効な治療法となる可能性が示された。米国・ハーバード・メディカル・スクール/マサチューセッツ総合病院のFlorian Eichler氏らが、第II/III相単群非盲検臨床試験「STARBEAM試験」の中間解析結果を報告した。副腎白質ジストロフィー(ALD)はABCD1遺伝子変異によるX連鎖性遺伝性疾患で、CALDは脱髄と神経変性を特徴としている。これまでは同種造血幹細胞移植が、神経機能の喪失と死亡につながる疾患進行を食い止める唯一の方法であった。結果を踏まえて著者は、「さらなる追跡調査で、奏効期間や長期安全性を完全に評価することが必要である」とまとめている。NEJM誌オンライン版2017年10月4日号掲載の報告。

上市がん治療薬、約半数はOS延長・QOL改善しない?/BMJ

 2009~13年に欧州医薬品庁(EMA)が承認したがん治療薬は、そのほとんどが生存期間やQOLを改善したという明らかなエビデンスがないまま上市され、販売開始から最短3.3年の時点ではまだほとんどの適応症で決定的なエビデンスはなく、また、既存の治療もしくはプラセボに対する生存期間の延長が示されてもその多くは必ずしも臨床的に意味のあるものではないことが明らかとなった。英国・キングス・カレッジ・ロンドンのCourtney Davis氏らが、審査報告書を後ろ向きに調査した結果を報告した。がん治療の目標は生命予後とQOLの改善であるにもかかわらず、承認を得るための臨床試験ではそれに代わるもしくは間接的な項目が有効性として評価されている。これまで、欧州で承認されたがん治療薬についてエビデンスやベネフィットの大きさを系統的に調べた研究はなかった。BMJ誌2017年10月4日号掲載の報告。

流行性耳下腺炎アウトブレイク時のMMRワクチン追加接種の有効性(解説:小金丸博氏)-744

流行性耳下腺炎(ムンプス)は、ワクチンで予防可能なウイルス疾患である。米国では麻疹・ムンプス・風疹混合ワクチン(MMRワクチン)の2回接種がワクチンプログラムに組み込まれており、ムンプス症例は2005年までに99%減少したが、近年も数千人規模のアウトブレイク事例が報告されている。ムンプスのアウトブレイクは、90%以上がきちんとワクチンの2回接種を済ましている大学生の間でも、たびたび報告されている。アウトブレイクを制御するための手段の1つにMMRワクチン3回目の追加接種が挙げられるが、この方法の有効性は明確になっていなかった。

ISNTの法則、実はそれほど当てはまらない?

 ISNTの法則――正常眼の場合、視神経乳頭辺縁部の厚さは、下方(inferior)>上方(superior)>鼻側(nasal)>耳側(temporal)の順である――は、緑内障診断のポイントの1つになっているが、米国・ハーバード医科大学のLinda Yi-Chieh Poon氏らによる調査の結果、正常眼でISNTの法則に当てはまったのは乳頭写真評価で約3分の1、網膜神経線維層厚測定では半分以下にすぎないことが明らかとなった。著者は、ISNT法則の変形版(ISTあるいはIS)が、70%以上に当てはまる有効な法則であることを示し、この方法を考慮する余地があるとまとめている。American Journal of Ophthalmology誌オンライン版2017年9月22日号掲載の報告。

精神疾患患者の激越症状に対する新旧治療戦略

 双極性障害や統合失調症患者の急性激越症状に対する治療は、多面的かつ機能的な課題であり、医療従事者にとって独特で複雑なチャレンジといえる。イタリア・University of Siena School of MedicineのGiovanni Amodeo氏らは、統合失調症または双極性障害の激越患者に対し、どの薬剤が最も有効であるかについて検討を行った。CNS & neurological disorders drug targets誌オンライン版2017年9月18日号の報告。

腸チフス予防、ワクチンは有効か/Lancet

 Vi-破傷風トキソイド結合型(Vi-TT)ワクチン接種は、18~60歳の腸チフスの疾病負荷を軽減し健康格差を減らす可能性が示された。英国・オックスフォード大学のCelina Jin氏らが、健康なボランティア成人を対象に行った初となるヒト対象の第IIb相単一施設無作為化試験の結果で、Lancet誌オンライン版2017年9月28日号で発表した。世界の貧困地域では毎年、チフス菌亜型(S Typhi)に約2,000万人が感染し、20万人が死亡している。莢膜Vi多糖体蛋白結合型ワクチン(Vi結合型ワクチン)は免疫原性があり乳児期から使用できるが、接種普及のための主要ワクチン候補とするには有効性に関するデータが乏しく、そのギャップを埋めるため、研究グループは、S Typhiの感染確立モデルを使ってVi-TTワクチンの有効性を評価した。

高齢者、抗血栓薬で血尿リスク増大/JAMA

 高齢者の抗血栓薬服用では、血尿関連合併症による泌尿器科処置のリスクが約1.4倍に、入院や救急外来受診のリスクは2倍以上に増大することが示された。なかでも、抗凝固薬と抗血小板薬併用での血尿関連合併症リスクは、約10倍に上るという。カナダ・Sunnybrook Health Sciences CentreのChristopher J.D. Wallis氏らによる、同国オンタリオ州の高齢者250万例超を対象に行った住民ベースの後ろ向きコホート試験の結果で、JAMA誌2017年10月3日号で発表された。抗血栓薬は、最も頻度が高い処方薬の1つである。