日本語でわかる最新の海外医学論文|page:648

高血圧治療法の新たな展開?(解説:冨山博史 氏/椎名一紀 氏)-738

腎除神経の有意な降圧効果が確認され、高血圧発症・進展における交感神経の重要性が再注目されている。生体における循環動態は一定でなく体位や環境要因などで変動するが、恒常性を維持するために圧受容体反射が重要な役割を有する。圧受容体反射は、血圧上昇に伴う頸動脈伸展刺激が求心刺激となり、延髄循環調節中枢を介して徐脈・降圧に作用するオープンループシステムである。基礎実験にて、デバイスによる頸動脈伸展刺激は降圧効果を示すことが報告されている。

オラパリブがBRCA遺伝子変異陽性乳がんの希少疾病用医薬品に指定

 アストラゼネカ株式会社(本社:大阪市北区、代表取締役会長:マーク・デュノワイエ)は、現在開発中のポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)阻害剤オラパリブが、「BRCA遺伝子変異陽性の手術不能または再発乳がん」を予定される効能・効果として、2017年9月29日、厚生労働大臣より希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けたと発表した。本邦では、オラパリブは2017年3月に「BRCA遺伝子変異陽性の卵巣がん」の希少疾病用医薬品に指定されている。

高齢者の睡眠薬の選択、ケアマネの約6割「適正薬へ見直し必要」と回答

 2017年9月27日、MSD株式会社は「在宅で介護を受ける高齢者の睡眠実態と不眠症の適切な治療のあり方」と題したメディアセミナーを開催。同社が実施したケアマネジャー対象の在宅要介護高齢者における睡眠実態調査の結果、不眠症治療薬の服用について67.4%(337人/500人)が「利用者が眠るために必要である」と答える一方、57.8%(289人/500人)が「利用者の状態によっては適正な薬への見直しが必要である」と回答したことが明らかになった。演者の1人である内村 直尚氏(久留米大学医学部 神経精神医学講座 教授)は、「転倒・骨折のリスクや認知機能への影響などから、高齢者においては特に不眠症治療薬の選択を慎重に行うべきで、可能な限り少量・少剤・短期間とすることが望ましい」と述べ、現状の不眠症治療の課題と適切な治療法の選択について講演した。

認知症になりにくい性格は

 「誠実さ」が認知症に対して保護的に働くことが、複数の研究で示唆されている。米国・フロリダ州立大学のA. R. Sutin氏らは、「誠実さ」の特定の因子が認知機能障害に対し最も保護的であるか、これらの関連が患者背景的因子や遺伝的リスクにより緩和されるかについて検討を行った。Psychological medicine誌オンライン版2017年9月6日号の報告。

epacadostat・ペムブロリズマブ併用で進行性メラノーマのPFSが12ヵ月に(ECHO-202試験)/ESMO2017

 2017年9月9日Incyte CorporationとMerck & Co., Inc.,は、スペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017 Congress)における、選択的IDO1阻害薬epacadostatと、ペムブロリズマブ(商品名:キイトルーダ)の進行性悪性黒色腫に対する併用療法を検討する第I/II相臨床試験ECHO-202(KEYNOTE-037)の最新データを発表した。

潜因性脳梗塞への抗血小板療法単独 vs.PFO閉鎖術併用/NEJM

 原因不明の潜因性脳梗塞を発症した卵円孔開存(PFO)を有する患者において、PFO閉鎖術+抗血小板療法の併用は、抗血小板療法単独より脳梗塞の再発リスクが低いことが示された。ただしPFO閉鎖術は、デバイス関連合併症および心房細動の発現率増加と関連した。デンマーク・コペンハーゲン大学のLars Sondergaard氏らが、脳梗塞の再発予防を目的としたPFO閉鎖術の有用性を検討した国際無作為化比較試験「Gore REDUCE試験」の結果を報告した。PFOは潜因性脳梗塞の原因である可能性があるが、脳梗塞後の再発予防におけるPFO閉鎖術の有効性はこれまで不明であった。NEJM誌2017年9月14日号掲載の報告。

SGLT1/2阻害薬は1型糖尿病治療に有用か/NEJM

 インスリン療法中の1型糖尿病患者において、経口ナトリウム・グルコース共輸送体(SGLT)1/2阻害薬sotagliflozinを投与した群ではプラセボ群と比較し、重症低血糖または糖尿病性ケトアシドーシスを発症することなくHbA1c 7.0%未満を達成した患者の割合が高率であった。ただし、糖尿病性ケトアシドーシス発症率のみをみるとsotagliflozin群で高率であった。米国・コロラド大学デンバー校のSatish K. Garg氏らが、19ヵ国133施設にて、インスリン療法へのsotagliflozin上乗せの安全性と有効性を評価した無作為化二重盲検プラセボ対照第III相試験「inTandem3」の結果を報告した。1型糖尿病患者の多くは、インスリン療法のみでは十分な血糖コントロールは得られない。しかし、これまでに1型糖尿病に対してインスリン療法との併用が認められた経口薬はなかった。NEJM誌オンライン版2017年9月13日号掲載の報告。

虫垂炎の非外科的治療後、腸がん罹患率が4倍に

 虫垂炎に虫垂切除ではなく抗菌薬で治療された患者では、診断の難しさと長年の炎症によって腸がん罹患率が増加する恐れがある。今回、スウェーデン・ウプサラ大学のMalin Enblad氏らの研究で、虫垂炎の非外科的治療を受けた患者では短期および長期における腸がん罹患率が増加したことが報告された。著者らは、「虫垂炎患者の最適な管理に関する議論ではこの結果を考慮すべき」としている。European Journal of Surgical Oncology誌オンライン版2017年9月7日号に掲載。

ALK陽性肺がん2次治療におけるアレクチニブと化学療法との第III相比較試験(ALUR)/ESMO2017

 ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)治療の現在の標準はクリゾチニブである。しかし、多くの患者は、1年以内にPDを経験し、それはとくに中枢神経系(CNS)でよくみられる。第III相ALUR試験は、プラチナベース化学療法およびクリゾチニブ既治療のALK陽性NSCLCにおいて、アレクチニブと標準化学療法の有効性および安全性を比較試験であり、その初期結果がスペイン・マドリードで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017 Congress)で、イタリアUniversity of TurinのS. Novello氏より発表された。

化学療法抵抗性膀胱がんへのラムシルマブは有用か?/Lancet

 プラチナ製剤化学療法で病勢進行が認められた、進行性・転移性尿路上皮がん患者に対し、抗VEGF-R2抗体ラムシルマブ(商品名:サイラムザ)+ドセタキセルの併用療法は、ドセタキセル単独に比べて無増悪生存期間(PFS)を有意に延長したことが示された。米国・イェール大学のDaniel P. Petrylak氏らが、530例を対象に行った第III相無作為化二重盲検試験「RANGE」の結果で、Lancet誌オンライン版2017年9月12日号で発表された。結果を踏まえて著者は「ラムシルマブ+ドセタキセルレジメンは、われわれが知る限り、プラチナ療法抵抗性の進行性尿路上皮がん患者において化学療法よりも優れたPFSを示した、第III相試験では初となるレジメンである」と述べ、「今回のデータにより、抗VEGF-R2抗体は、尿路上皮がん患者の新たな治療選択肢となりうることが確認された」と、まとめている。

PFO閉鎖術で脳梗塞再発が大幅に低減/NEJM

 卵円孔開存(PFO)との関連が考えられる原因不明の脳梗塞を呈し、関連する心房中隔瘤または心房間の大きな短絡が認められる患者に対して、PFO閉鎖術と抗血小板療法を組み合わせた治療は、抗血小板療法単独に比べ脳梗塞の再発を大幅に低減したことが示された。フランス・サン・タンヌ病院のJean-Louis Mas氏らが、663例を対象に行った非盲検無作為化試験の結果で、NEJM誌2017年9月14日号で発表した。これまでの試験で、PFO閉鎖術の脳梗塞再発予防に対する結論は得られていない。研究グループは、原因不明の脳梗塞患者および心エコーの特色が脳梗塞リスクを示す患者を対象に、抗血小板療法との比較において、PFO閉鎖術または抗凝固療法がベネフィットをもたらすかを調べる検討を行った。

医療機関向け連続セミナー「臨床現場で役立つ法律のエッセンス~法的ケーススタディ~」のお知らせ

 医療を提供するうえで、いかに安全を心掛けていても、有害事象が起きることは避けられない。その際、初期対応を誤ると患者さんとの信頼関係が崩れ、重大な民事紛争に発展するのみならず、警察や検察による捜査を受け、一方的なメディア報道にさらされることになれば、患者さん側と医療従事者側の双方に大きなダメージが生じる。

5-FUクリーム、肌の光老化への効果は?

 長期にわたる紫外線曝露による皮膚の老化(光老化)は、多くの患者にとって審美的な問題である。米国・ブラウン大学のKaveri Korgavkar氏らは、日光角化症の治療に用いられるフルオロウラシルクリーム5%(5-FUクリーム)の光老化に対する効果を、写真数値化スケール(photonumeric scale)を用いて検討したが、光老化の改善は認められなかった。著者は結果について、「光ダメージに対し本当に効果がないのか、もしくは効果を測る写真数値化スケールに限界があるのかもしれない」との見解を示し、「ほくろ、色素沈着および毛細血管拡張など、シワ以外の光老化の徴候を含む写真数値化スケールの開発を考えなければならない」と報告をまとめている。JAMA Dermatology誌オンライン版2017年9月6日号掲載の報告。

中年期の脂質異常が晩年の認知低下に関連

 これまでの研究では主に、晩年における脂質レベルとその後の認知機能変化との関連を検討しているが、晩年よりも中年期でのリスク因子が認知機能の健康に最も関連していることが多い。今回、米国・ジョージワシントン大学のMelinda C. Power氏らは、コホート研究で、中年期の総コレステロール・LDLコレステロール・トリグリセライドの値が高いことが、その後20年の認知機能低下と関連していたことを報告した。Alzheimer's & dementia誌オンライン版2017年9月12日号に掲載。

双極性障害で過食行動を合併しやすい患者の特徴

 双極性障害患者において、過食行動や過食性障害との合併が頻繁に認められることが、最近の研究(とくに米国の研究)より報告されている。双極性障害と過食症との基本的な臨床的関連性は調査されているが、食生活の心理的または気質的側面および質的側面については、あまり知られていない。フランス・Centre Hospitalier Sainte-AnneのHortense Boulanger氏らは、フランスにおける双極性障害患者のコホート研究より、過食行動の有病率および疾患の特徴、不安、衝動性、感情調節と食習慣との関連を調査した。Journal of affective disorders誌オンライン版2017年8月30日号の報告。

オシメルチニブ、東アジア人のCNS転移例における効果(AURA17)/ESMO2017

オシメルチニブのT790M陽性進行非小細胞肺がん(NSCLC)のCNS転移例に対する有効性は、国際研究(AURA拡大およびAURA2試験のプール解析)で示されている。スペイン・マドリッドで開催された欧州臨床腫瘍学会(ESMO2017 Congress)においては、EGFR-TKIで進行した東アジア人患者のCNS転移例に対するオシメルチニブの第II相オープンラベル、シングルアーム試験AURA17の結果が報告された。

流行性耳下腺炎のMMRワクチン接種 3回 vs.2回/NEJM

 麻疹・流行性耳下腺炎・風疹の3種混合ワクチン(MMRワクチン)について、米国疾病予防管理センター(CDC)のCristina V. Cardemil氏らが大学生を対象とした検討で、3回接種者では2回接種者よりも流行性耳下腺炎のリスクが低下したことを明らかにした。米国では、小児期にMMRワクチンの2回接種がプログラムされている。しかし、大学生での流行性耳下腺炎のアウトブレイクがたびたび報告されており、2015年夏~秋にはアイオワ大学で集団発生が起きた。本報告は、そのアウトブレイクの後半に保健当局者がMMRワクチン接種キャンペーンを呼びかけ、3回目の接種に応じた学生の有効性を2回目の接種時期からの年数で補正を行い検討した結果で、2回目の接種時期が、今回のアウトブレイクよりも13年以上前であった学生は、流行性耳下腺炎のリスクが高かったことも明らかにした。これまで、MMRワクチンの3回投与が流行性耳下腺炎のアウトブレイクを制御するかについては明らかになっていなかった。NEJM誌2017年9月7日号掲載の報告。