日本語でわかる最新の海外医学論文|page:619

スタチンによる糖尿病発症の危険因子~日本のPMSデータ

 スタチン使用と糖尿病や高血糖症リスクの増加との関連について、慶應義塾大学薬学部の橋口 正行氏らが、日本の市販後調査(PMS)データベースを使用したコホート内ケースコントロール研究で検討した。その結果、脂肪肝および高尿酸血症を併存している患者で、スタチン使用により糖尿病や高血糖症の発症が増加する可能性が示唆された。Clinical Pharmacology in Drug Development誌オンライン版2018年2月20日号に掲載。

抗うつ薬21種の有効性と忍容性を検討~522試験のメタ解析/Lancet

 うつ病(大うつ病性障害)成人患者において、検討した21種の抗うつ薬は、すべてプラセボより有効であることが確認された。ただし、プラセボに対するオッズ比は有効性が2.13~1.37、忍容性(中止率)が0.84~1.30と幅があった。英国・オックスフォード大学のAndrea Cipriani氏らが、これまでに実施された抗うつ薬21種に関する比較臨床試験計522件のシステマティックレビューとメタ解析で明らかにした。うつ病は、世界的に最も頻度が高く、疾病負荷が大きな、医療費がかかる精神障害の1つで、一般的に心理学的介入よりも抗うつ薬による治療が行われている。新規抗うつ薬の増加に伴い、個々の患者に最善の治療薬を選択するためのエビデンスが必要とされていた。著者は、「今回の結果は、エビデンスに基づいた治療を行ううえで患者と医師にとって重要なものであり、ガイドラインや医療政策の策定においてもさまざまな抗うつ薬の相対的なメリットを参照すべきである」とまとめている。Lancet誌オンライン版、2018年2月21日号掲載の報告。

超加工食品の摂取量、全がんリスク上昇と関連/BMJ

 食事における超加工食品(ultra-processed food)の割合が10%上昇すると、全がんリスクおよび乳がんリスクが10%以上有意に上昇することを、フランス・パリ第13大学のThibault Fiolet氏らが、前向き大規模コホート研究の結果で報告した。超加工食品は、低栄養価、添加物、食品と接触するパッケージの材質、製造・加工・貯蔵で生成される化合物によって特徴付けられる。がんリスクとの関連についての疫学データは不足しているが、これまでの研究では、一般に超加工食品と認識される特徴要素の中に発がん作用がある可能性が示唆されていた。BMJ誌2018年2月14日号掲載の報告。

Real World Evidenceからみたカナグリフロジンの有用性(解説:吉岡成人 氏)-819

ADA(American Diabetes Association)のガイドラインでは心血管リスクを持つ2型糖尿病患者に、SGLT2阻害薬であるエンパグリフロジンやカナグリフロジンの積極的な使用を推奨している。その根拠となる臨床試験は、EMPA-REG OUTCOME試験およびCANVASプログラムである。これらの臨床試験における主要評価項目は心血管死、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合イベントの発生率であり、対象となった患者も心血管疾患のハイリスクグループであった。今回紹介するのは、米国における民間の医療データベースを基に、2型糖尿病患者における投与薬剤と心血管イベントについて検討したReal World Evidenceとしてのデータである。

夢遊病に関するシステマティックレビュー

 夢遊病を誘発する薬剤は、患者自身だけでなく他人に対しても傷害のリスクをもたらし、服薬アドヒアランスに対しても影響を及ぼす。オーストラリア・南オーストラリア大学のHelen M. Stallman氏らは、夢遊病リスクを高める可能性のある薬剤を特定するため、文献のシステマティックレビューを行った。Sleep medicine reviews誌2018年2月号の報告。

日本人医師の飲酒量に関連する因子

 日本医師会会員の男女7,500人に飲酒習慣に関するアンケートを実施したところ、喫煙、運動、睡眠障害が、飲酒もしくは大量飲酒習慣と相関していることが示された。日本大学医学部公衆衛生学の大井田 隆教授らの研究グループが報告した。Asia-Pacific Journal of Public Health誌オンライン版2018年2月1日号に掲載。

CKDの高齢心房細動患者への抗凝固薬投与は?/BMJ

 慢性腎臓病(CKD)があり心房細動を呈した高齢者への抗凝固薬の投与で、虚血性脳卒中や脳・消化管出血リスクはおよそ2.5倍増大し、一方で全死因死亡リスクは約2割低減することが示された。英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのShankar Kumar氏らが、約273万人分の患者データベースを基に、傾向スコア適合住民ベースの後ろ向きコホート試験を行い明らかにした。現状では、透析不要のCKDで心房細動を呈した高齢患者について、信頼性の高い臨床ガイドラインや無作為化比較試験はないという。同研究グループは今回の逆説的な結果を受けて、「こうした患者を対象にした、適切な規模の無作為化試験の実施が急務である」と提言している。BMJ誌2018年2月14日号掲載の報告。

低脂肪vs.低炭水化物ダイエット、体重減効果は?/JAMA

 健康的低脂肪(HLF)ダイエットと健康的低炭水化物(HLC)ダイエットについて、12ヵ月後の体重減効果は同等であることが、米国・スタンフォード大学のChristopher D.Gardner氏らが、609例を対象に行った無作為化比較試験で示された。また遺伝子型やダイエット開始前のインスリン分泌能は、いずれの食事療法の体重減効果とも関連がみられなかったという。結果を踏まえて著者は、「疾病の素因と仮定される遺伝子型およびインスリン分泌能は、HLFとHLCのどちらが至適な食事療法かを識別するのには役立たないようだ」とまとめている。JAMA誌2018年2月20日号掲載の報告。

データ共有を宣言するも実が伴っていなかった(解説:折笠秀樹氏)-817

データ共有の方針(Data sharing policy)をとると、他の研究者から依頼があれば著者は生データを提供しなければならない。BMJとPLOS Medicine誌は、早くからデータ共有を打ち出してきた臨床雑誌である。この方針が打ち出された以降(2013~16年)に出版された、37件のランダム化比較試験(RCT)を調査対象とした。これらの雑誌には臨床試験よりも観察研究が載りがちであるが、4年間でRCTが37件というのはちょっと少ないかと思われた。

新しいドパミン受容体パーシャルアゴニスト、ブレクスピプラゾール

 ブレクスピプラゾールは、アリピプラゾールと同クラスの新規ドパミン受容体パーシャルアゴニストの抗精神病薬である。オーストラリア・モナッシュ大学のJudy Hope氏らは、ブレクスピプラゾールについてのレビューを行い、アリピプラゾールとの比較を行った。Australasian psychiatry誌2018年2月号の報告。

オシメルチニブ耐性後のMET増幅、NSCLCの予後を悪化?/Lung Cancer

 MET増幅はEGFR C797Sと並び、第3世代EGFR-TKIオシメルチニブの代表的な体制機構である。過去の研究では、オシメルチニブ耐性の30%前後にMET増幅がみられるとの報告もある。しかし、オシメルチニブ耐性後のMET増幅に関するコホート研究はほとんど行われていない。本研究では、進行肺腺がん患者におけるオシメルチニブ耐性後のMET増幅の獲得について、またMET増幅と臨床予後との関係について調査した。

尿路感染へのトリメトプリムで突然死リスクは増えるのか/BMJ

 尿路感染症(UTI)に対するトリメトプリムの使用は、他の抗菌薬使用と比べて、急性腎障害(AKI)および高カリウム血症のリスクは大きいが、死亡リスクは高くないことが、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のElizabeth Crellin氏らによるコホート研究の結果で示された。また、相対リスクの上昇は試験対象集団全体においては類似していたが、レニン・アンジオテンシン系(RAS)阻害薬およびカリウム保持性利尿薬を服用していた群ではベースラインのリスクが高いほど、AKIや高カリウム血症の絶対リスク上昇がみられたという。BMJ誌2018年2月9日号掲載の報告。

加齢黄斑変性への抗VEGF薬、長期投与は?

 米国・Retina Consultants of Orange CountyのSean D. Adrean氏らは、抗血管内皮増殖因子(VEGF)薬をtreat-extend-stop(TES)法で50回以上投与された、滲出型加齢黄斑変性(AMD)患者の臨床転帰を後ろ向きに調査した。その結果、50回の注射後にはETDRS視力表で平均2行視力が改善し、平均追跡期間8年で最終調査時には3行以上改善していた眼の割合が35.2%であったことを報告した。著者は、「長期にわたるTES法での抗VEGF治療を要する患者は、視力の維持または改善が可能である」とまとめている。Ophthalmology誌オンライン版2018年2月10日号掲載の報告。

双極性障害の補助治療オプションに関する情報のアップデート

 双極性障害は、複雑な疾患であり、その治療においては、しばしば併用療法が必要となる。近年、双極性障害の治療法は、著しい進歩を遂げている。臨床医が患者に情報を提供し、最適な結果が得られるよう治療を行うために、オーストラリア・メルボルン大学のOlivia M. Dean氏らは、現在の補助療法の治療選択肢に関する概要をまとめた。Bipolar disorders誌オンライン版2018年1月25日号の報告。

非転移性去勢抵抗性前立腺がん、アパルタミドがMFS延長/NEJM

 アンドロゲン受容体の競合的阻害薬apalutamideは、高リスクの非転移性去勢抵抗性前立腺がん患者の転移および死亡のリスクを改善し、無転移生存期間(MFS)を延長することが、米国・マサチューセッツ総合病院がんセンターのMatthew R. Smith氏らが行ったSPARTAN試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2018年2月8日号に掲載された。apalutamideは、開発中の非ステロイド性抗アンドロゲン薬で、病勢進行リスクの高い非転移性去勢抵抗性前立腺がんの第II相試験において、良好な前立腺特異抗原(PSA)奏効期間が報告されている。