日本語でわかる最新の海外医学論文|page:621

派手さはないが重要な研究(解説:野間 重孝 氏)-767

急性心筋梗塞患者の急性期の治療において、酸素の使用が初めて報告されたのは古く1900年までさかのぼり、以来今日までごく当たり前のように行われてきた。血液酸素飽和度を上昇させることにより、より効率的に虚血心筋に酸素を供給することができるだろうという発想から生まれた治療法で、この理屈には大変説得力があったことから、疑われることなく長く行われ続けた。80年代になってパルスオキシメータによるモニターが容易に行えるようになっても、この考え方の根本が見直されることはなかった(パルスオキシメータの発明は1974年で、わが国で行われた)。

ADHD児への有酸素運動効果は

 ADHDは、世界の小児の約8~10%に発症する最も一般的な精神神経疾患の1つである。ADHD児の大多数が成人期まで持続的な症状を有していることを示唆する研究が増加しており、ADHDによる人生経過への影響を明らかにしている。ADHD管理の主流は、薬物療法と、行動および心理的な介入であり、潜在的な治療戦略としての運動介入については、あまり注目されていない。シンガポール国立大学のQin Xiang Ng氏らは、ADHD児に対する運動介入の短期的および長期的な影響を調査するため、システマティックレビューを行った。Complementary therapies in medicine誌2017年10月号(オンライン版8月31日号)の報告。

単純性尿路感染症へのNSAID、抗菌薬と比較/BMJ

 単純性下部尿路感染症(UTI)の女性患者において、ジクロフェナクの使用は抗菌薬の使用を減らすが、ノルフロキサシンと比較して症状軽減に関して劣性であり、腎盂腎炎のリスクを増大させる可能性が、スイス・ベルン大学のAndreas Kronenberg氏らによる無作為化二重盲検非劣性試験の結果で示された。著者は、「選択的な抗菌薬使用の開発と検証を、今後の試験で行うことが必要だ」と述べている。BMJ誌2017年11月7日号掲載の報告。

ドイツ製人工網膜、初の研究者主導臨床試験

 末期網膜色素変性症患者を対象にして行った、人工網膜Alpha AMS(Retina Implant AG社、ドイツ)に対する研究者主導臨床試験の成績が、英国・オックスフォード大学のThomas L. Edwards氏らにより初めて報告された。6例中5例で視機能が改善し、最長24ヵ月まで持続していることが認められた。好成績が示された要因について著者は、「埋植手術はなおチャレンジングなものだが、光干渉断層撮影(OCT)ガイダンスのような新しい技術の開発により、手術手技を改良することができた」と述べている。Ophthalmology誌オンライン版2017年10月27日号掲載の報告。

好酸球性心筋炎の特徴、治療、予後は?

好酸球性心筋炎は致死性の急性炎症心臓疾患である。この疾患に関する大規模な症例研究や臨床試験は、これまでに報告されていない。米国カリフォルニア大学サンディエゴ校のMicela Brambatti氏ら研究グループは、過去のデータベースから組織的に証明された好酸球性心筋炎を系統的に見直し、好酸球性心筋炎の臨床的な特徴、治療および予後について調査した。Journal of American College of Cardiology誌2017年11月7日号に掲載。

トロポニン検査、陽性適中率を上げる方法は?/BMJ

 高感度心筋トロポニン検査を、幅広く、事前の臨床評価もなく行った場合、トロポニン値の上昇を認める患者がよくみられ、その大部分は心筋梗塞よりも心筋障害を反映したものであることが明らかにされた。英国・エディンバラ大学のAnoop S. V. Shah氏らが、ヘルスケア設定が異なる患者集団を対象とした前向きコホート試験の結果で、BMJ誌2017年11月7日号で発表した。高感度心筋トロポニン検査は心筋梗塞の診断を改善するが、急性冠症候群を伴わない患者の心筋障害検出を増大する可能性が示唆されていた。

昔の日本人は偉かった!(解説:後藤信哉氏)-766

第2次世界大戦後の荒廃の中でも、研究意欲を持ち続けた日本人研究者は多かった。岡本 彰祐・歌子ご夫妻は特筆されるべき存在である。線溶系に着目して彼らが開発した薬剤にトラネキサム酸がある。開発の経緯は『世界を動かす日本の薬』(岡本 彰祐 編著. 築地書館. 2001年)に詳しい。線溶を担うプラスミンの酵素機能を阻害する画期的薬剤である。筆者の世代の臨床医は、止血にアドナ・トランサミンを使うことが多かった。論理的には止血効果を期待できる薬剤であるためだ。日本は巨大企業が利益を独占するEvidence Based Medicineの論理に乗り遅れた。せっかくの薬剤もエビデンスがないとして広く使用されない現状にある。

化学療法制吐薬としてのオランザピンの本邦第II相試験/IJCO

 近年、がん化学療法に対する制吐薬としてのオランザピンの研究結果が報告されている。本邦においても、高度催吐性化学療法に対する、オランザピンの多施設無作為化二重盲検第II相用量設定試験が行われ、国立がん研究センター中央病院の矢内 貴子氏らがInternational Journal of Clinical Oncology誌に結果を報告した。

アトピー性皮膚炎児、睡眠障害の原因は?

 アトピー性皮膚炎(AD)を有する小児の60%は、睡眠が妨げられているとされる。米国・Ann & Robert H. Lurie小児病院のAnna B. Fishbein氏らは、症例対照研究において、中等症~重症アトピー性皮膚炎の小児は健常児に比べ、就寝・起床時間、睡眠時間、睡眠潜時は類似していたものの、中途覚醒が多く睡眠効率が低いことを明らかにした。Journal of the American Academy of Dermatology誌オンライン版2017年10月28日号掲載の報告。

摂食障害プログラム、オランザピンの使用は

 顕著な障害や発育への影響に関連する摂食障害である回避性・制限性食物摂取症(ARFID)に対する薬理学的治療についての情報はほとんどない。米国・サウスカロライナ医科大学のTimothy D. Brewerton氏らは、ARFIDに対する薬物療法に関して臨床報告を行った。Journal of child and adolescent psychopharmacology誌オンライン版2017年10月25日号の報告。

クリゾチニブ抵抗性ALK肺がんにおけるbrigatinibの成績:ALTA/WCLC2017

 ALK陽性非小細胞肺がん(NSCLC)では、ほとんどの患者が耐性を獲得し進行する。クリゾチニブ治療後における第2世代ALK-TKI治療のPFSも1年に満たない。brigatinibはALK耐性変異に幅広い活性を示すべくデザインされた次世代のALK-TKIである。第18回世界肺癌学会(WCLC)では、クリゾチニブ耐性進行ALK肺がんにおけるbrigatinibの第II相ALTA試験の1.5年の追跡結果について、韓国・Samsung Medical CenterのMyung-Ju Ahn氏が発表した。

多発性嚢胞腎後期にもトルバプタンは有用か?/NEJM

 常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)の後期患者に対し、バソプレシンV2受容体拮抗薬トルバプタン(商品名:サムスカ)はプラセボと比べて、1年超にわたり推定糸球体濾過量(eGFR)の低下を抑制したことが、米国・メイヨークリニックのVicente E. Torres氏らによる第III相の無作為化治療中止プラセボ対照二重盲検試験「REPRISE試験」の結果、示された。これまでに、早期(推定クレアチニンクリアランス:60mL/分以上)ADPKD患者を被験者とする試験において、トルバプタンは腎容積の増大およびeGFRの低下を抑制したことが示されていた。ただし、アミノトランスフェラーゼ値とビリルビン値の上昇を引き起こすことも示されている。一方、後期患者に対する有効性、安全性は検討されていなかった。NEJM誌2017年11月16日号(オンライン版2017年11月4日号)掲載の報告。

急性重症出血、トラネキサム酸投与は3時間以内に/Lancet

 外傷性/分娩後出血死の多くは、出血が起きてから短時間で死に至っており、トラネキサム酸による抗線溶療法の開始がわずかでも遅れると、そのベネフィットは減少することを、英国・ロンドン大学衛生熱帯医学大学院のAngele Gayet-Ageron氏ら研究グループが、被験者4万138例のデータを包含したメタ解析の結果、明らかにした。結果を踏まえて著者は、「重症出血患者は、ただちに治療が開始されなければならない」と提言するとともに、「さらなる研究で、トラネキサム酸の作用機序の理解を深める必要がある」と述べている。抗線溶療法は、外傷性/分娩後出血死を減らすことが知られている。研究グループは、治療の遅れが抗線溶薬の効果に及ぼす影響を調べる検討を行った。Lancet誌オンライン版2017年11月7日号掲載の報告。

本邦初のIFNフリー・リバビリンフリー・パンジェノタイプのDAA療法の登場(解説:中村 郁夫 氏)-765

本論文は、重度の腎機能低下HCV症例に対するグレカプレビル・ピブレンタスビル併用療法の治療効果および安全性に関する多施設・オープンラベルで行われた研究結果の報告である。ステージ4および5の腎機能障害例(遺伝子型 1、2、3、4、5、6型)に対し12週間の治療を行った結果、SVR率98%と高い効果を示した。