日本語でわかる最新の海外医学論文|page:547

認知症への運動不足の影響、発症前10年から?/BMJ

 運動不足(physical inactivity)と認知症の関連についての観察研究は、逆の因果関係バイアスの影響が働く可能性があるという。フィンランド・ヘルシンキ大学のMika Kivimaki氏らIPD-Work consortiumは、このバイアスを考慮したメタ解析を行い、運動不足はあらゆる原因による認知症およびアルツハイマー病との関連はないのに対し、心血管代謝疾患を発症した集団では、運動不足により認知症リスクがある程度高い状態(1.3倍)にあることを示した。研究の詳細はBMJ誌2019年4月17日号に掲載された。無作為化対照比較試験では、運動による認知症の予防および遅延のエビデンスは得られていない。一方、観察コホート研究の多くはフォローアップ期間が短いため、認知症の発症前(前駆期)段階における身体活動性の低下に起因するバイアスの影響があり、運動不足関連の認知症リスクが過大評価されている可能性があるという。

植込み型心臓用医療機器感染予防のための抗菌包装の有効性の検討(解説:許俊鋭 氏)-1037

植込み型心臓用電子医療機器留置後のポケット感染は、術後の合併症率および死亡率と関連している。しかし、術前抗菌薬の使用以外のポケット感染を予防するための治療方法に関しては、限られたエビデンスしかない。CIED植込み手術に関連するポケット感染の発生率を減らすための吸収性の抗菌薬溶出性包装(Antibacterial Envelope)の安全性と有効性を評価するために、無作為化比較臨床試験を実施した。Antibacterial Envelopeは吸収性マルチフィラメントメッシュエンベロープを使用していて、皮下ポケット内のCIED安定性を改善するとともに、抗菌薬のミノサイクリンとリファンピンを溶出することができる。

女性へのゾルピデム使用リスク

 2013年、女性に対するゾルピデム就寝前投与は、昼間の鎮静リスクを上昇させ、運転技能の低下を来すことを示す新たなデータの存在をFDAが報告した。これには、女性では男性と比較し、ゾルピデムの代謝クリアランスの減少および朝の血中濃度の上昇が影響していると推定される。このことから、FDAは、女性へのゾルピデム推奨投与量を、男性の50%まで減量するよう指示した。しかし、世界的にどの規制当局においても同様な指示は出ていない。米国・睡眠障害研究センターのDavid J. Greenblatt氏らは、女性へのゾルピデム使用リスクについて、レビューおよび評価を行った。Journal of Clinical Psychopharmacology誌2019年5月号の報告。

予後予測に優れた円形脱毛症評価ツールを開発

 円形脱毛症は、さまざまな原因やタイプがあることで知られている。韓国・延世大学校のSolam Lee氏らは、これに対し、すでに多くの評価ツールや分類法があるが、それらによる予後予測の価値は限定的だとして、予後の層別化に重点を置いた評価ツール「TOAST(topography-based alopecia areata severity tool)」を開発した。「TOASTは、毛髪損失の局所的特徴と予後を描出するのに効果的であり、医師はより良い治療計画を立てることができるだろう」と述べている。また、開発の過程で、「より良く予後を層別化するには、側頭部の病変を個別に評価することが必要」であることも明らかになったとしている。JAMA Dermatology誌オンライン版2019年3月27日号掲載の報告。

英国で食品中の砂糖20%削減へ、関連疾患は抑制されるか/BMJ

 2017年3月、英国政府は、食品製造および小売業界との協働で、シリアルや菓子類など特定の食品群の砂糖含有量を2020年までに20%削減する計画を発表した。イングランド公衆衛生庁(Public Health England)は、砂糖摂取目標を1日摂取カロリーの5%までとすることで摂取カロリーを11%削減し、これによって年間砂糖関連死を4,700件減らし、医療費を年間5億7,600万ポンド抑制するとのモデルを打ち出した。今回、同国オックスフォード大学のBen Amies-Cull氏らは、砂糖減量計画の潜在的な健康上の有益性について予測評価を行い、BMJ誌2019年4月17日号で報告した。

小児けいれん重積2次治療、レベチラセタムvs.フェニトイン/Lancet

 小児のけいれん性てんかん重積状態の2次治療において、レベチラセタムの静脈内投与はフェニトインに比べ、てんかん重積状態の抑制に要する時間が短いものの、有意な差はなかったとの研究結果が、英国Bristol Royal Hospital for ChildrenのMark D. Lyttle氏らが実施したEcLiPSE試験で示された。研究の詳細はLancet誌オンライン版2019年4月17日号に掲載された。英国では、小児における本症の2次治療では、抗けいれん薬フェニトインの静脈内投与が推奨されている。一方、レベチラセタムは、本症に有効であり、より安全性が高い選択肢となる可能性を示唆するエビデンスがあるという。

左手(とリズムコントロール)は添えるだけ(解説:香坂俊氏)-1036

心房細動(AF)治療はカテーテルによる肺静脈焼灼術(いわゆるアブレーション)の登場により、多くのブレークスルーが起きているかのように見えるが、実をいうと「リズムコントロールで無理をしない」という軸はブレていない。このことはつい最近結果が発表され巷で話題となっているCABANA試験からも裏打ちされている。今回発表されたRACE-7試験の結果もこの「リズムコントロールで無理をしない」というコンセプトを急性期に拡張したものである。

CAR-T療法が臨床へ、まずは2~3施設でスタート

 CAR-T療法が、白血病や悪性リンパ腫に対する治療として実臨床で使用される日が近づいてきた。2019年3月、キメラ抗原受容体T(CAR-T)細胞療法として国内で初めて、チサゲンレクルユーセル(商品名:キムリア)が製造販売承認を取得した。これを受けて4月18日、都内でメディアセミナー(主催:ノバルティス ファーマ)が開催された。  セミナーでは、豊嶋 崇徳氏(北海道大学大学院医学研究院血液内科 教授)、平松 英文氏(京都大学医学部附属病院小児科 講師)が登壇。CAR-T療法(キムリア)の適応症である再発・難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、B細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)について、それぞれ実臨床での展望を示した。

知ることから始める、多発性硬化症患者が輝く社会への転換

 2019年4月22日、バイオジェン・ジャパンとエーザイは、5月30日のWorld MS Day(世界多発性硬化症の日)に先駆け、「20-40歳代の女性に多く発症する神経疾患『多発性硬化症(MS)』~働き盛り世代の健康・家庭・仕事の両立に大きなインパクト~」と題するメディアセミナーを開催した。  多発性硬化症(以下、MS)は、日本では女性の患者数が男性の2.9倍で、20~40歳代で多く発症するとされる。この年代の女性は就職や出産、育児などのライフイベントが多く、社会への影響が大きいと考えられる。本セミナーでは、河内 泉氏(新潟大学 脳研究所・医歯学総合病院 神経内科 講師)が、MSの疾患概要と、MS患者が活躍できる社会の実現に向けた思いを語った。

応援歌で前向きに生きる乾癬の患者

 2019年4月9日、アッヴィ合同会社は、ミュージシャン・音楽プロデューサーとして人気を博すヒャダインこと前山田 健一氏とのコラボレーションにより完成した乾癬患者への応援ソング『晴れゆく道』の発表を記念し、都内においてメディアセミナーを開催した。   セミナーでは、最新の乾癬診療の概要や今回の応援ソング制作の経緯などが説明された。なお、前山田氏も乾癬患者として現在、治療を受けている。

治療抵抗性うつ病患者の脱落予測因子と臨床的影響

 第2選択薬治療による臨床試験より脱落した治療抵抗性うつ病患者について、イタリア・ボローニャ大学のPaolo Olgiati氏らが、調査を行った。International Clinical Psychopharmacology誌オンライン版2019年4月2日号の報告。  対象は、第1選択薬で奏効が見られず、ベンラファキシンの6週間治療に移行したうつ病外来患者342例。社会人口統計学的および臨床的特徴を、脱落群と非脱落群で比較を行った。  主な結果は以下のとおり。

カテーテルアブレーションで心房細動は根治するか?(解説:高月誠司氏)-1035

CAPTAFトライアルは、QOLを評価した心房細動アブレーション対抗不整脈薬治療のランダム化比較試験である。QOLはSF-36を用いて評価したが、本試験で興味深いのは全例で植込み型ループレコーダーを植え込み、心房細動再発を評価した点で、これにより基本的には心房細動の再発の見逃しはなくなる。心房細動バーデンはアブレーション群で5.5%、抗不整脈薬群で11.5%であり、アブレーション群で有意に改善し、結果的にQOLもアブレーション群で有意に改善した。

ドイツ女子サッカーリーグにおけるうつ病や不安症状の有病率

 トップアスリートのメンタルヘルス問題の有病率に関する情報が、明らかとなっていない背景には、回答率の低さやサンプルの不均一さなどの方法論的課題があると考えられる。ドイツ・Medical School HamburgのAstrid Junge氏らは、トップレベルの女子サッカー選手におけるうつ病および不安症状の有病率および危険因子を評価するため、検討を行った。British Journal of Sports Medicine誌2019年4月号の報告。  ドイツ女子サッカー1部リーグ10チームおよび2部リーグ7チームに所属する選手を対象に、選手の特性、うつ病自己評価尺度(CES-D)、全般不安症尺度(GAD-7)に関するアンケートを実施した。

5α-還元酵素阻害薬による2型糖尿病発症リスクの増加(解説:吉岡成人氏)-1033

前立腺肥大症や男性型脱毛症は中高年以降の男性が罹患する代表的疾患であるが、発症の要因の1つとしてジヒドロテストステロン(DHT)の関与が知られている。テストステロンは5α-還元酵素によってより活性の強いDHTに変換され、前立腺においてはテストステロンの90%がDHTに変換されている。そのため、5α-還元酵素に対して競合的阻害作用を持つ5α-還元酵素阻害薬が、前立腺肥大症や男性型脱毛症の治療薬として使用されている。5α-還元酵素には2種類のアイソフォームがあり、type 1は肝臓、皮膚、毛嚢などに分布し、男性化に関与するtype 2は外陰部の皮膚、頭部毛嚢、前立腺などに分布している。

女子短大生における睡眠の質とスマートフォン依存

 スマートフォンの使用は一般的となり、青少年の睡眠の質に影響を及ぼしている。思春期の女性では、睡眠の質に関連する問題が増大する傾向にある。台湾・Changhua Christian Children HospitalのPo-Yu Wang氏らは、これまで研究されていなかった、女子短大生における睡眠の質とスマートフォン依存および健康関連行動との関連を調査し、睡眠の質に影響を及ぼす予測因子を特定するため検討を行った。PLOS ONE誌2019年4月3日号の報告。

結核のDOTにもスマートフォン導入か(解説:吉田敦氏)-1032

抗結核療法は長期にわたる。不完全な内服は、治療効果を下げるばかりか、耐性出現と周囲への感染リスクを少なくするためにもできる限り避けるべきであり、アドヒアランスの保持を目的としたDOTは世界的にも主流となっている。しかし直接会って内服を確認するのは、患者、医療従事者双方にとって負担である。スマートフォンの普及がDOTにプラスに働くかどうか―スマートフォンとアプリを使って内服状況を本人がビデオ撮影し、医療従事者に送信してアドヒアランスを確認するVOT法が英国で試みられ、従来の対面によるDOTとVOT法のランダム化比較試験の結果が発表された。

日本人うつ病患者における健康関連QOLや経済的負担

 うつ病は、健康だけでなく経済的負担への影響も大きい疾患である。武田薬品工業の山部 薫氏らは、日本人成人におけるうつ病診断の有無による健康関連アウトカムとコストへの影響について調査を行った。ClinicoEconomics and Outcomes Research誌2019年3月号の報告。  日本の健康調査National Health and Wellness Survey(NHWS)の2012~14年のデータ(8万3,504人)を用いて、レトロスペクティブ観察研究を行った。日本人のうつ病診断群2,843例、うつ病未診断群2,717例(weight)、非うつ病対照群2,801例(weight)における健康関連QOL、仕事の生産性および活動障害に関する質問票(Work Productivity and Activity Impairment Questionnaire:WPAI)、医療リソース利用、年間コストの差を評価した。共変量で調整した後、傾向スコアの重み付けと加重一般化線形モデルを用いて、アウトカム変数の群間比較を行った。

自閉スペクトラム症におけるADHD症状とインターネット依存

 いくつかの研究報告によると、自閉スペクトラム症(ASD)患者では、インターネット依存(internet addiction:IA)がより多く認められるという。しかし、IAを伴う青年期のASD患者の特徴は、よくわかっていない。愛媛大学・河邉 憲太郎氏らは、青年期ASDにおけるIAの有病率を調査し、IA群と非IA群の特徴を比較した。Research in Developmental Disabilities誌オンライン版2019年3月13日号の報告。  対象は、愛媛大学医学部附属病院および愛媛県立子ども療育センターの外来ASD患者55例(10~19歳)。患者およびその両親に対し、Youngのインターネット依存度テスト(IAT)、子どもの強さと困難さアンケート(SDQ)、自閉症スペクトラム指数(AQ)、ADHD Rating Scale-IV(ADHD-RS)を含む質問を行った。

パーキンソン病に対するレボドパ製剤無作為化遅延開始試験(解説:仙石錬平氏)-1034

パーキンソン病の治療について考える際の重要な項目の1つに、進行抑制を可能とする治療法が存在するのかしないのかが挙げられる。2019年時点でパーキンソン病治療に対するDMTは存在しない。DMTを間接的に評価、証明するための研究デザインの1つに今回、本論文で使用された“delayed start trial”がある。これは、試験薬剤を研究開始時から投与する群(early-start group)と投与する時期を遅らせて開始する群(delayed-start group)に割り付けて両群比較し、長期観察後にearly-start groupに症状の進行抑制が認められたかどうかをみる試験デザインである。

出産前後の日本人女性に対する抗てんかん薬処方~健康管理データベースからの検討

 東北大学の石川 智史氏らは、出産前および産後の日本人女性に対する抗てんかん薬(AED)の処方率および処方パターンについて、大規模データベースを用いて評価を行った。Pharmacoepidemiology and Drug Safety誌オンライン版2019年3月10日号の報告。  公表されているアルゴリズムまたは乳児の生年月日を用いて、妊娠開始日および出産日を推定した。AEDの処方率、最大用量、併用療法の頻度について、妊娠開始前180日、妊娠中、産後180日で評価した。