日本語でわかる最新の海外医学論文|page:544

血中hsCRP高値の現・元喫煙者、肺がんリスク高い/BMJ

 血中高感度C反応性蛋白(hsCRP)が高値の元喫煙者および現喫煙者は、肺がんリスクが高いことが示された。一方で、hsCRP値と肺腺がんリスクの関連は認められず、hsCRP値は、原因となるリスク因子ではなく肺がんの診断前マーカーとなりうる可能性が示されたという。国際がん研究機関(IARC、本部:フランス)のDavid C. Muller氏らが、20のコホート試験を基に行った、コホート内ケースコントロール試験の結果で、BMJ誌2019年1月3日号で発表した。先行研究では、CRPは全身性炎症のマーカーで、肺がんリスクと関連することが示されていた。しかし、喫煙状態別(喫煙歴なし、元喫煙、現喫煙)の関連について正確な推定値を示すことが可能な規模の試験はなかった。

急性STEMI、PCI中の早期にアルテプラーゼ投与は有効か/JAMA

 発症後6時間以内の急性ST上昇型心筋梗塞(STEMI)患者において、直接的経皮的冠動脈インターベンション(PCI)中の補助的な低用量アルテプラーゼ冠動脈内投与は、微小血管閉塞量を低下しないことが示された。英国・グラスゴー大学のPeter J. McCartney氏らが440例の患者を対象に行ったプラセボ対照無作為化比較試験の結果で、JAMA誌2019年1月1・8日号で発表された。微小血管閉塞は概して、急性STEMI患者に影響を及ぼし、有害転帰と関連することが知られる。著者は「試験の結果は、このような治療法を支持しないものだった」とまとめている。

メトトレキサート少量投与が心臓血管イベントを抑制しうるか?(解説:今井靖氏)-997

IL-1βを標的とした抗体医薬であるカナキヌマブ投与により心血管イベントおよび一部の悪性腫瘍発生を抑制したというCANTOS研究の成果が記憶に新しいが、より簡便な内服薬としてメトトレキサート(MTX)投与により炎症性サイトカインが抑制されることで心血管イベントが抑制されるか否かを検討したのがこの報告である(CIRT研究)。この論文によれば心筋梗塞既往があるか多枝冠動脈病変を有し2型糖尿病またはメタボリック症候群を有する4,786症例を(1)週当たり15~20mgを目標用量とする低用量メトトレキサート療法および(2)プラセボ投与の2群に1:1に割り付ける二重盲検比較試験を行っている。なお導入期において非盲検でMTXを5、10、15mgと漸増させ葉酸欠乏を回避するために毎日葉酸を1mg補充しており、その後、盲検化し2群に割付し追跡している。主要エンドポイントは非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中あるいは心臓血管死のいずれかの複合を当初予定していたが、盲検化する前に、入院を要する不安定狭心症も上記エンドポイントの1つとして加えられている。

日本人認知症高齢者における抗精神病薬使用および関連因子

 抗精神病薬は、死亡率や脳血管イベントに対するリスク増加と関連が認められているが、認知症患者の行動と心理症状(BPSD)のマネジメントに用いられている。日本におけるこれまでの研究では、抗認知症薬を処方中の高齢者における抗精神病薬の使用率の推定が行われてきた。筑波大学の黒田 直明氏らは、介護保険データを用いて、認知症高齢者における抗精神病薬使用率のより正確な推定値を算出し、抗精神病薬使用に関連する因子を特定するため、検討を行った。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2018年11月27日号の報告。

変形性膝関節症の痛み、薬物療法の長期効果は/JAMA

 変形性膝関節症患者における薬物療法による長期的な疼痛緩和効果には、プラセボと比較して考慮すべき不確実性が存在することが、イタリア・パドバ大学のDario Gregori氏らの検討で明らかとなった。研究の成果は、JAMA誌2018年12月25日号に掲載された。変形性関節症は、慢性で進行性の疾患だが、薬物療法は主に短期の検討が行われており、そのため長期の疾患管理における推奨治療が不明確になっているという。  研究グループは、変形性膝関節症患者を12ヵ月以上追跡した薬物療法の無作為化臨床試験を系統的にレビューし、ネットワークメタ解析を行った(パドバ大学などの助成による)。

リンゴ型の脂肪分布、腹部と臀部で異なる遺伝的機序が関与か/JAMA

 ウエスト/ヒップ比(WHR)の算出の基礎となる腹部(ウエスト)および殿大腿部(ヒップ)の脂肪分布には、それぞれ異なる遺伝メカニズムが関連している可能性があることが、英国・ケンブリッジ大学のLuca A. Lotta氏らの検討で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年12月25日号に掲載された。一般にWHRで評価される体脂肪分布は、BMIとは独立の重要な心血管代謝疾患の寄与因子とされるが、腹部の高脂肪分布または殿大腿部の低脂肪分布によるWHR増加が心血管代謝疾患リスクに影響を及ぼすかは不明だという。

術前化学療法を施行したHER2陽性乳がんにおける術後T-DM1の有効性(解説:矢形寛氏)-996

ドイツのKATHERINE試験結果が2018年サン・アントニオ乳癌シンポジウムで報告された後、すぐに論文化されたものであり、まだ最終結果ではないものの、われわれの臨床を変える情報であった。全体として3年無浸潤病変生存率の差が10%以上と大きな改善をみている。全生存率は境界域ではあるものの、より長期に追跡することにより十分な有意差が出てくることを期待させる内容である。現時点でも十分臨床応用するに値する結果であり、HER2陽性進行乳がんで、術前化学療法により十分な効果があったものの、浸潤がん残存が認められるもの、HR陰性例などで、とくに有用性が高いものと思われる。

残業年960時間、特例2,000時間の中身とは~厚労省から水準案

 医師の時間外労働の上限について、厚生労働省「医師の働き方改革に関する検討会(第16回)」が1月11日開かれ、事務局案として2つの上限水準が示された。この水準は罰則付きの時間外労働規制として2024年4月から適用予定のもので、今後は事務局案を基に議論を進め、今年度中に結論を出す見通しとなっている。  一般労働者においては、2019年4月から適用される時間外労働の上限時間は年360時間・月45時間とされており、年6ヵ月に限定した例外措置が設定されている。医師における時間外労働の上限として、検討会では下記3つの枠組みを設けることを検討している。(C)については水準を別途設けるべきかを含め今後議論される予定で、今回は(A)(B)について具体的な数値案が示された。なお、(B)は地域医療提供体制確保の観点から、やむを得ず(A)の水準を超えざるを得ないとして特定の医療機関(2024年4月までに検討・決定予定)に適用される形が想定されており、2035年度末を目途に解消を目指すとされている

慢性蕁麻疹は、骨粗鬆症のリスク因子

 慢性蕁麻疹(CU)は骨粗鬆症に対して多くのリスク因子となるが、CUと骨粗鬆症における関連についてはデータが不足している。イスラエル・Clalit Health ServicesのGuy Shalom氏らは大規模な観察研究を行い、CUが骨粗鬆症のリスクとなる可能性があることを明らかにした。著者は、「ターゲットを適切にするためのスクリーニングを検討する必要がある」とまとめている。British Journal of Dermatology誌オンライン版2018年12月18日号掲載の報告。

抗てんかん薬によるスティーブンス・ジョンソン症候群や中毒性表皮壊死症~FDAデータの分析

 スティーブンス・ジョンソン症候群(SJS)や中毒性表皮壊死症(TEN)は、まれで潜在的に致死的な皮膚の有害事象であるが、特定の薬剤によって最も一般的に引き起こされる。このSJSやTENとの関連が認められる薬剤の1つとして、抗てんかん薬(AED)が挙げられる。米国・ロードアイランド大学のEric P. Borrelli氏らは、米国におけるAED群および各AEDに関連するSJSやTENのリスクを定量化するため、検討を行った。Epilepsia誌2018年12月号の報告。

高カロリーなのはファストフードだけではない/BMJ

 外食のエネルギー量は、フルサービス食およびファストフード食のいずれもきわめて高く、むしろファストフード食のほうが低い傾向があり、これは広範な地域でみられる現象で、世界的な肥満の下支えとなっている可能性が、米国・タフツ大学のSusan B. Roberts氏らの調査で明らかとなった。肥満の有病率は多くの国で増加し続けている。大規模にチェーン展開しているレストランの栄養情報によると、ファストフードは世界的な肥満の最も重要な寄与因子とされるが、他の形式のレストランの食事については、エネルギー量の測定データがなく、肥満への寄与の程度はほとんど知られてないという。BMJ誌2018年12月12日号(クリスマス特集号)掲載の報告。

再入院削減プログラム、死亡率を増大?/JAMA

 米国のメディケア受給者では、再入院削減プログラムにより、心不全および肺炎による入院患者の退院後30日以内の死亡率がむしろ増加することが、米国・ベス・イスラエル・ディーコネス医療センターのRishi K. Wadhera氏らの調査で示された。研究の成果は、JAMA誌2018年12月25日号に掲載された。HRRPは、「患者保護ならびに医療費負担適正化法(ACA)」の下で2010年に成立し、2012年からは、メディケア・メディケイドサービスセンター(CMS)に、心不全、急性心筋梗塞、肺炎患者の30日再入院率が予想を上回った病院に対し制裁金を課すことが求められている。その成果として、HRRPはこれらの疾患による再入院率を抑制することが示されたが、死亡率への影響は知られていなかった。

ニボルマブ、食道がん第III相試験でOS延長(ATTRACTION-3)/小野薬品

 小野薬品工業株式会社は、2019年1月9日、ニボルマブ(商品名: オプジーボ)について、フルオロピリミジン系薬剤およびプラチナ系薬剤を含む併用療法に不応または不耐となった切除不能な進行または再発食道がん患者を対象に実施した多施設国際共同無作為化非盲検第III相臨床試験(ATTRACTION-3:ONO-4538-24/CA209-473)の最終解析において、ニボルマブ群が化学療法群(ドセタキセルまたはパクリタキセル)と比較して、主要評価項目である全生存期間(OS)の有意な延長を示したと発表。

統合失調症患者への非定型抗精神病薬治療に対する治療反応不良の早期予測因子

 非定型抗精神病薬で治療されている統合失調症患者における精神症状の早期改善や最終治療反応との関連を調査し、治療法の切り替えまたは継続を判断する最適な時期について、台湾・国立中山大学のYi-Lung Chen氏らが検討を行った。また、臨床的治療反応の予測因子についても検討を行った。BMC Psychiatry誌2018年12月4日号の報告。  急性増悪統合失調症患者111例を無作為化し、オランザピン、リスペリドン、パリペリドンによる至適治療を1週間の導入期間および12週間の介入期間で行い評価した。全対象患者は、陽性・陰性症状評価尺度(PANSS)を用いて評価した。早期治療反応(PANSSスコア25%減少と定義)は、第1、2、3、4、8週目に評価し、これらの評価を用いて第12週目の最終治療反応(PANSSスコア25%減少)を予測した。著者らは、第1または2週目の早期治療反応が、第12週目の治療アウトカムを予測できると仮定した。

糖代謝の改善にコーヒーやお茶は効果があるか~メタ解析

 前向きコホート研究では、コーヒーやお茶の摂取と糖尿病発症リスクとの関連が示されているが、コーヒーやお茶が糖代謝を改善するかどうかは不明である。今回、横浜市立大学の近藤 義宣氏らは、無作為化比較試験の系統的レビューとメタ解析により、コーヒー、緑茶、紅茶、烏龍茶の糖代謝への影響を調べた。その結果、とくに55歳未満またはアジア人の集団において、緑茶の摂取が空腹時血糖(FBG)を低下させる可能性が示唆された。Nutrients誌2019年1月号に掲載。

病院の水系による感染症の解析と克服は難しい課題である(解説:吉田敦氏)-995

医療関連感染の中で、水を介した感染症を生じる微生物として、レジオネラや緑膿菌が有名である。しかしながらこの他にもアシネトバクターやステノトロホモナスといったブドウ糖非発酵グラム陰性桿菌や非結核性抗酸菌が知られており、院内・施設内の水道・水系を介してこれらが集団発生した例も報告されている。今回、11年にわたり単一施設で分離され続けていたブドウ糖非発酵菌Sphingomonas koreensisが、院内の水系を介していたことが、全ゲノム解析を含む詳細な分子疫学的解析によって明らかにされた。なおSphingomonasは細胞壁にスフィンゴ脂質を含むことから本邦の薮内 英子らによって属として提唱されたもので、現在127菌種が含まれる。またS. koreensisは2001年に新種として発表されたが、これまで感染例として報告されたのは髄膜炎などごく少数にすぎない。

入院患者の不眠症治療における催眠鎮静薬減量のための薬剤師介入

 多くの患者において入院は不眠症の原因となり、通常は対症療法で治療が行われる。しかし、催眠鎮静薬の誤った使用は、とくに高齢入院患者において合併症と関連している。この合併症には、めまい、転倒、過鎮静が含まれる。このような潜在的な危険性のため、とくに高齢者においては、不眠症に対する催眠鎮静薬の広範な使用は、多くの病院で推奨されていない。サウジアラビア・King Abdulaziz University Faculty of PharmacyのAisha F. Badr氏らは、処方パターンの検討および評価を行い、地域病院における日々の薬剤師介入を通じた催眠鎮静薬の使用最適化について検討を行った。Saudi Pharmaceutical Journal誌2018年12月号の報告。

集団感染発生の多剤耐性菌、温床は院内配管/NEJM

 スフィンゴモナス・コリエンシス(Sphingomonas koreensis)は、米国国立衛生研究所(NIH)臨床センターのインフラに時間と空間を超えて持続的に存在し、医療関連感染症を引き起こすヒト日和見病原体であることを、米国・国立ヒトゲノム研究所のRyan C. Johnson氏らがゲノム疫学調査で突き止めた。病院内の配管システムは、頻度は低いものの入院患者が感染する可能性がある日和見感染病原体の温床として知られている。今回の調査は、2016年に発生したスフィンゴモナス種細菌の集団感染を受けて行われた。NEJM誌2018年12月27日号掲載の報告。

子供がいる米国女医、職場内差別を経験/BMJ

 米国・カリフォルニア大学のMeghan C. Halley氏らが実施した大規模な質的研究の結果、子供を持つ女性医師は、母親ゆえに、頻繁で持続的な、時には露骨な差別を経験していることが明らかになった。そうした母親差別の経験は、他の専門職の女性らの報告と合致する一方で、医師研修に特有の側面もあること、また母親差別を助長する同僚(medical profession)が存在することも示唆されたという。先行研究で、女性医師の3分の2以上が性的な差別を、また女性臨床研究医の3分の1はセクシャルハラスメントを経験しているという報告はあったが、母親ゆえの差別あるいはその後の医師としてのキャリアへの影響に関するデータは限られていた。今回の結果を受けて著者は、「医学・医療分野における母親差別の影響を緩和するためには、出産・育児休暇、保育への取り組みの構造的な変化が必要である」と見解を述べている。BMJ誌2018年12月12日号(クリスマス特集号)掲載の報告。

自分の動脈硬化病変を見せられると生活習慣病が改善する(解説:佐田政隆氏)-994

急性心筋梗塞は、狭心症を生じるような高度の冠動脈の動脈硬化病変が進行して完全閉塞することで生じると従来考えられていた。しかし、最近の研究によると、6~7割の急性心筋梗塞の原因は、軽度な内腔の狭窄しか来さない動脈硬化病変の破裂やびらんに起因する急性血栓性閉塞であるとされている。急性心筋梗塞は発症してしまうと突然死につながる怖い病気であるが、その多くは前兆がなく、発症を予知することは困難である。ヒトの動脈硬化は、従来考えられていたよりかなり早期に子供の頃から始まり、生活習慣病のコントロールが悪いと無症状のうちに進行して、突然心血管イベントを誘発することが多くの研究で示されている。そこで、将来の心筋梗塞の発症を防ぐためには、糖尿病、高血圧、脂質異常症といった生活習慣病のコントロールや禁煙といった1次予防が重要である。しかし、多くの人は、食事などの生活指導、運動指導、場合によっては薬物療法を行っても、現在は痛くも痒くもないため、アドヒアランスは悪く改善に結びつかない。