日本語でわかる最新の海外医学論文|page:527

脳卒中およびその病型を病院到着前から見分ける分類スコア(JUST)を開発

 兵庫医科大学脳神経外科講師 内田 和孝氏らは、病院到着前に脳卒中の病型(脳卒中、脳大血管閉塞[LVO]、頭蓋内出血[ICH]、クモ膜下出血[SAH])を予測する脳卒中病型分類スコア(JUST)を開発した。研究の成果は、Stroke誌2018年8月号に掲載された。  脳卒中は、その病型により治療アプローチや緊急度が大きく異なるため、病院到着前に脳卒中の病型が予測できれば、より早期により適切な治療を提供することが可能となる。しかし、現在報告されている病型予測ツールは、1つの病型のみを対象とするものや病型を分類せずに脳卒中全般を扱うものであった。そこで、本研究は、救急救命士が脳卒中を疑う患者に、脳卒中、LVO、ICH、およびSAHを予測するスコアを開発することを目的に実施された。

急性冠症候群ガイドラインの改訂点は?/日本循環器学会

 急性心筋梗塞や不安定狭心症、心臓突然死を含む急性冠症候群。これは、欧米での死因第一位であり、高齢化や食の欧米化が年々加速する日本でも他人事ではない。2019年3月29~31日、第83回日本循環器学会学術集会が開催され、『急性冠症候群診療ガイドライン(2018年改訂版)』の作成班長を努めた木村 一雄氏(横浜市立大学附属市民総合医療センター心臓血管センター)が、急性冠症候群診療ガイドラインの改訂ポイントについて解説した。  『急性冠症候群診療ガイドライン』は、3つのガイドライン(「ST上昇型急性心筋梗塞の診療に関するガイドライン」、「非ST上昇型急性冠症候群の診療に関するガイドライン」、「心筋梗塞二次予防に関するガイドライン」)を包括し、発行された。作成するにあたり、急性冠症候群診療ガイドラインがアジア諸国の参考となることを目指し英文ガイドラインも同時発表されたが、このような急性冠症候群(ACS)を包括したガイドラインは、米国や欧州でもいまだに作成されていない。

ペットと肺がん死亡率に意外な関連

 わが国でもペットを飼っている人は多く、ここ数年はネコがイヌを上回っている。今回、米国ジョージアサザン大学のAtin Adhikari氏らは、米国の全国コホートにおける18年間の追跡調査で、ネコを飼っている女性は飼っていない女性に比べ、肺がん死亡率が2.85倍と有意に高かったことを報告した。ペットによるこの影響は、喫煙やアトピー性疾患の交絡によって説明されないという。Environmental Research誌2019年2月25日号に掲載。

双極性障害治療に対する新薬候補

 ドラッグ・リポジショニングは、多くの医療分野において有望なアイデアである。躁病および双極性障害の発症率低下に対するアスピリン以外の非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、低用量アスピリン、高用量アスピリン、スタチン、アロプリノール、アンジオテンシン系薬の継続使用の影響を調査するため、デンマーク・コペンハーゲン大学のLars Vedel Kessing氏らは、デンマークの全国人口ベースレジストリをシステマティックに使用し、検討を行った。Bipolar Disorders誌オンライン版2019年3月14日号の報告。

1型糖尿病児の血糖コントロール、持続皮下vs.頻回注射/BMJ

 英国の1型糖尿病の小児では、1年時の血糖コントロールに関して、持続皮下インスリン注入療法(CSII)には頻回注射法(MDI)を凌駕する臨床的有益性はないことが、同国Alder Hey Children’s NHS Foundation TrustのJoanne C. Blair氏らが行ったSCIPI試験で示された。研究の成果は、BMJ誌2019年4月3日号に掲載された。CSIIは費用対効果が優れるとするメタ解析や経済評価の報告があるが、いずれも小規模な無作為化対照比較試験や観察研究のデータに基づくものであった。

鳴り物入りで登場しても…(解説:後藤信哉氏)-1025

いわゆるDOACは使いやすい。しかし、選択的・可逆的な凝固因子阻害薬では、血栓イベントリスクの高い症例では効果を期待できない。静脈血栓症も再発リスクの高い、体内局所の血栓性が亢進する病態に通用するか否か疑問があった。本研究では、1)がん、2)静脈血栓リスクが高い、3)抗がん剤治療開始、の3条件のそろった症例を、リバーロキサバンとプラセボにランダム化した。相手がプラセボであってもリバーロキサバンは静脈血栓発症予防効果を示せなかった。

統合失調症に対する抗炎症薬補助療法~メタ解析

 統合失調症に対する抗炎症薬補助療法が、症状改善に寄与することが最近のエビデンスで示唆されている。しかし、認知機能、全般的機能、副作用に対する抗炎症薬補助療法の効果については、システマティックに研究されていない。韓国・カトリック大学のMyeongju Cho氏らは、統合失調症に対する抗炎症薬補助の効果を包括的に調査するため、メタ解析を実施した。The Australian and New Zealand Journal of Psychiatry誌オンライン版2019年3月13日号の報告。

EGFR変異肺がん1次治療におけるエルロチニブ+ベバシズマブの効果(NEJ026)/Lancet Oncol

 StageIVのEGFR変異陽性非小細胞肺がん(NSCLC)ではEGFR-TKIが標準療法であるが、1年程度で半数に耐性が起こる。そのため、さまざまな併用療法が試みられている。NEJ026はASCO2018で発表されたEGFR変異陽性NSCLCの1次治療に対するエルロチニブとベバシズマブの併用をエルロチニブ単剤と比較した第III相試験であるが、その中間解析の結果がLancet Oncology誌2019年4月8日号で発表された。

心不全患者の突然死、わが国でも高い精度で予測可能に/日本循環器学会

 欧米で開発された心不全患者の突然死の統計的な発症予測モデルSeattle Proportional Risk Model(SPRM)を用いることにより、日本人の心不全患者においても高い精度で突然死の発症を予測できることが示唆された。突然死の予防に有効な植込み型除細動器(ICD)を含めた治療方針を検討するうえで役立つことが期待される。2019年3月29~31日に開催された第83回日本循環器学会学術集会で、慶應義塾大学医学部循環器内科の福岡 良磨氏らが発表した。

再生細胞薬SB623、慢性期外傷性脳損傷、先駆け審査の対象品目に/サンバイオ

 サンバイオ株式会社及びその子会社である SanBio, Inc.は、同グループが外傷性脳損傷を対象疾患としてグローバルで開発を進めている再生細胞薬SB623が、2019年4月8日、厚生労働省より再生医療等製品として「先駆け審査指定制度」の対象品目の指定を受けることになったと発表。  SB623は、一過性に遺伝子導入した成人骨髄由来の間葉系幹細胞を加工・培養して製造したもので、脳内の神経組織に投与されると自然な再生機能を誘発することで失われた運動機能の改善を促すことが期待されている。

骨折の介護は介護者の働き方を変える

 高齢者の骨粗鬆症による骨折は、患者自身のQOLを悪化させるだけでなく、予後も悪化させる。と同時に家族など介護者に多大な負担を強いることになり、わが国でも問題となっている。今回、介護の実情、介護者の本音について、アステラス・アムジェン・バイオファーマ株式会社は、50歳以上で骨粗鬆症に起因すると思われる骨折患者を介護する家族介護者の男女にアンケートを実施し、その詳細を公開した。

症候性AFへのアブレーションの効果、CABANA試験で明らかに/JAMA

 症候性心房細動(AF)患者では、カテーテルアブレーションは薬物療法と比較して、1年後のQOLに関し臨床的に意義のある改善をもたらすことが、米国・デューク大学のDaniel B. Mark氏らが行った「CABANA試験」で示された。研究の成果は、JAMA誌2019年4月2日号に掲載された。カテーテルアブレーションは、AF患者の洞調律復帰において、薬物療法よりも有効性が高いとされるが、長期的なQOLの増分がどの程度かは、これまで不明であった。

認知症患者へのアミロイドPETが患者管理に影響/JAMA

 病因が不確定な軽度認知障害(MCI)および認知症の患者に対し、アミロイドPETを行ったところ、約6割の患者で施行前とは異なる患者管理に変更されたとの研究結果が、米国・カリフォルニア大学サンフランシスコ校のGil D. Rabinovici氏らが実施したIDEAS試験で示された。研究の詳細は、JAMA誌2019年4月2日号に掲載された。アミロイドPETは、アルツハイマー病の主要な神経病理学的特徴である脳アミロイド斑を検出する。アミロイドPETを臨床評価に追加すると、診断精度が向上するとされるが、アミロイドβの蓄積は他の神経変性疾患や認知機能が正常な高齢者にもみられるという。

アミロイドが見えるとどうなる?(解説:岡村毅氏)-1024

かつてはアルツハイマー型認知症は死後にしか正確に診断できないとされてきた。しかしアミロイドペットの臨床応用とともに、変わりつつあるようだ。本研究は巨大で、1万6,008名の患者さん、全米595施設から946名の専門医師が参加したものであり、人々(患者さんや医師)の動きを鳥の目で見ることができる点で興味深い。少し詳しく説明しよう。脳はバイオプシーができないので、脳内にアミロイドがたまる病気であるアルツハイマー型認知症は、基本的には外から患者さんをみることでしか検査ができなかった。

高校進学時のうつ病に対する予防プログラム

 中学校から高校へ進学する青少年におけるうつ病および不安症状に対する学校ベースの適応予防プログラムの効果について、米国・ワシントン大学のHeather Makover氏らが、検討を行った。Prevention Science誌オンライン版2019年3月9日号の報告。  高校進学プログラムは、青少年にとってとくに脆弱な時期における社会的および学術的な問題解決のスキルとエンゲージメントを構築するために設計されたプログラムである。太平洋沿岸北西部の6校の中学校の生徒2,664人を対象に、8年生の後半に普遍的な感情健康診断を実施し、うつ病スコアが高く、行動障害問題スコアの低かった生徒に対し研究参加を依頼した。

がん患者の深部静脈血栓症、再発率は2倍以上/日本循環器学会

 がんは深部静脈血栓症(VTE)の強力なリスク因子である。がん患者のVTE発症頻度は非がん患者に比べ高く、その発症率は近年増加している。しかし、がん関連VTEに関する研究は十分ではなく、適切な管理については明らかになっていない。天理よろづ相談所病院 循環器内科 坂本二郎氏らは、がん関連VTEの臨床的な特徴、管理、臨床的転帰をリアルワールドで評価する多施設後ろ向きコホート研究COMMAND-VTEレジストリを行い、その結果を第83回日本循環器学会学術集会で発表した。

がん患者の食欲不振にnabiloneが有効?

 カンナビノイドに由来する薬剤(nabiloneなど)は近年、食欲不振の改善効果があることが認められたが、がん患者の食欲不振の改善にも有効なのか。メキシコ・国立がん研究所のJenny G. Turcott氏らは、肺がん患者を対象にnabiloneの有効性を検討する、無作為化二重盲検プラセボ対照第II相臨床試験を行い、「nabiloneは食欲不振のがん患者に対する支持療法の選択肢となりうる」ことを示した。「肺がん患者における有効性を結論付けるために、さらなる大規模臨床試験を行う必要がある」とまとめている。

小児の潰瘍性大腸炎、ステロイドフリー寛解予測因子とは/Lancet

 新たに潰瘍性大腸炎(UC)と診断された小児患者において、52週時のステロイドフリー(メサラジン単独療法)寛解の予測に、初期の臨床的活動性および4週までの治療反応が有用であることが、米国・コネチカット小児医療センターのJeffrey S. Hyams氏らによる検討の結果、明らかにされた。新たに診断された小児UCについては、エビデンスベースのアウトカムデータの不足が、作成された治療計画に不確実性をもたらしている、として問題視されていた。

脳卒中リスクを有するAF患者へのアブレーションの有用性/JAMA

 心房細動(AF)患者におけるカテーテルアブレーション戦略は、薬物療法と比較して主要評価項目(死亡・後遺症を伴う脳卒中・大出血・心停止の複合エンドポイント)に有意差は認められなかった。米国・メイヨー・クリニックのDouglas L. Packer氏らが、10ヵ国126施設で実施した医師主導型の多施設共同非盲検無作為化試験「The Catheter Ablation vs Antiarrhythmic Drug Therapy for Atrial Fibrillation trial:CABANA試験」の結果を報告した。

セファゾリンナトリウム注射用の代替薬

 2019年3月29日、厚生労働省は、事務連絡として「セファゾリンナトリウム注射用「日医工」が安定供給されるまでの対応について」を全国の関係機関に発出し、各医学会でも周知が開始された。  セファゾリンナトリウムは、日医工株式会社が製造・供給に大きなシェアをもつ抗菌薬だが、本年2月に製品供給に支障をきたす可能性がある旨の周知があり、現在も供給再開の目途が立っていない。そして、同製品の代替品と考えられる製品の一時的な供給不足も危惧されることから、安定供給が再開されるまでの間の対応として周知された。