日本語でわかる最新の海外医学論文|page:530

病棟患者のせん妄、ICU患者との違い

 入院患者ではせん妄がよくみられるが、その疫学はほとんどわかっていない。今回、オーストラリア・オースチン病院のEmmanuel Canet氏らは、病棟患者におけるせん妄患者の人口統計、臨床像、管理、アウトカムがICU患者と異なるかどうかを検証した。その結果、病棟患者のせん妄は、ICU患者のせん妄とは大きく異なり、臨床像は低活動型が優勢で、認知症が先行し、退院時に回復の可能性は低いことが示された。Internal Medicine Journal誌オンライン版2019年3月19日号に掲載。

1990~2016年の世界のてんかん負荷調査の分析結果

 てんかんによる発作やその影響は、早期死亡や残存症状などの健康被害の原因となりうる。てんかんの負荷に関するデータは、健康管理計画やリソース配分において必要とされている。世界の疾病負荷(Global Burden of Disease:GBD)2016のてんかん共同研究者らは、てんかんによる健康被害を年齢、性別、年、場所別に定量化することを目的に、GBDのデータを用いて分析を行った。The Lancet. Neurology誌2019年4月号の報告。

低リスク大動脈弁狭窄症にバルーン拡張型弁のTAVRは有効か/NEJM

 手術死のリスクが低い重度の大動脈弁狭窄症患者の治療において、経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)は外科的大動脈弁置換術と比較して、1年時の死亡を含む複合エンドポイントが良好であることが、米国・Baylor Scott and White HealthのMichael J. Mack氏らが実施したPARTNER 3試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年3月16日号に掲載された。手術死のリスクが中等度~高度な患者では、これら2つの手技の主要アウトカムは同等とされるが、低リスク例におけるエビデンスは十分でないという。

重症心不全への左心補助人工心臓、完全磁気浮上型遠心流ポンプが有効/NEJM

 重症心不全患者への完全磁気浮上型遠心流の左心補助人工心臓(LVAD)植込み術は、軸流LVADに比べポンプ交換の頻度が低く、後遺障害を伴う脳卒中やデバイス交換・除去の再手術なしで生存する可能性が高いことが、米国・ブリガム&ウィメンズ病院のMandeep R. Mehra氏らが行ったMOMENTUM 3試験の最終報告で示された。本試験の中間解析では、遠心流ポンプLVADは軸流ポンプLVADよりもポンプ血栓症や後遺障害のない脳卒中の頻度が低いことが報告されていた。NEJM誌オンライン版2019年3月17日号掲載の報告。

心房細動の男性、脳卒中なしでも認知症に注意

 心房細動は脳卒中リスクを増大させ、認知障害や認知症のリスクを増大させる。しかし最近、脳卒中でない場合でもこの関連を示唆するエビデンスが出てきている。そこで、スウェーデン・ヨーテボリ大学のLina Ryden氏らは、コホートから脳卒中患者を除外しなかった場合とした場合の心房細動と認知症発症との関連を調査し、さらに性別や遺伝的因子についても検討した。Journal of Internal Medicine誌オンライン版2019年3月2日号に掲載。

統合失調症入院患者における心血管イベント

 レバノン大学のGhina Al-Seddik氏らは、統合失調症患者における心血管(CV)および脳血管イベントと死亡率を評価するため、フラミンガムリスクスコア(FRS)および動脈硬化性疾患(ASCVD)のスコアによる予測能について比較を行った。International Journal of Psychiatry in Clinical Practice誌オンライン版2019年2月10日号の報告。  対象は、2013年1月から入院中の統合失調症患者329例。CVイベントを検出するため患者のカルテをレビューした。

良性の卵巣腫瘍、保存的治療2年で自然消退2割、悪性化リスクは低い/Lancet Oncol

 付属器腫瘤は、産婦人科において最も頻繁に遭遇する疾患の1つといわれる。これまで長期追跡した大規模前向き研究はほとんどなかったが、ベルギー・ルーベン大学病院のWouter Froyman氏らが、国際共同前向きコホート研究「International Ovarian Tumor Analysis Phase 5:IOTA5」の中間解析を行い、超音波検査で最初に良性と診断された付属器腫瘤を保存的に治療しても悪性腫瘍や急性合併症の発生リスクは低いと報告した。

CIED留置後感染予防、生体吸収性抗菌薬溶出メッシュが有益/NEJM

 心臓植込み型電気デバイス(CIED)留置後の感染症を予防するための、CIEDを包む生体吸収性抗菌薬溶出メッシュの安全性と有効性を評価した、米国・クリーブランド・クリニックのKhaldoun G. Tarakji氏らによる無作為化比較臨床試験「Worldwide Randomized Antibiotic Envelope Infection Prevention Trial:WRAP-IT」の結果が示された。抗菌薬溶出メッシュの使用により、標準ケアによる感染予防戦略のみの実施と比較し、合併症の発生が増加することなく、重大なCIED感染症の発生が有意に低下したという。

卵の摂取量増加で、心血管疾患発症や死亡が増加?/JAMA

 米国成人において、食事性コレステロールまたは卵の摂取量増加は、用量反応的に心血管疾患(CVD)発症および全死因死亡リスクの上昇と有意に関連していることが確認された。米国・ノースウェスタン大学のVictor W. Zhong氏らが、Lifetime Risk Pooling Projectの6つのコホートデータを用いた解析結果を報告した。コレステロールは、ヒトの食事における一般的な栄養素で、卵は食事性コレステロールの重要な源であるが、食事性コレステロール/卵の摂取量がCVDおよび死亡と関連しているかどうかについては、なお議論が続いている。著者は今回の結果について、「食事ガイドラインの作成・改訂の際に考慮されるべきである」とまとめている。JAMA誌2019年3月19日号掲載の報告。

JCS2019で日循公式ツイッターが全力発信 #19JCSでタグ付けを

 2019年3月29~31日にパシフィコ横浜にて開催される、第83回日本循環器学会学術集会(JCS2019)において、日本循環器学会 情報広報部会は、公式ツイッターアカウントを活用した情報発信を行うと発表した。  欧州心臓病学会(ESC)や米国心臓協会(AHA)などの海外の主要な学会では、SNS上でタイムリーな情報発信が行われ、多くの人が最新の医学知識に触れて、勉強・議論できる体制が整えられている。日本の学会における情報発信の先駆けとして、JCS2019にて行われる発表内容をツイッター上でオープンに発信していくのが今回の試みだ。

日本の頭部外傷の実態/脳神経外傷学会

 日本の頭部外傷診療の現状の把握を目的に、1998年より重症頭部外傷患者を対象とした疫学研究を開始。現在まで、日本頭部外傷データバンク(JNTDB)Projectとして1998、2004、2009、2015が行われ、Project2015(P2015)の結果がまとまり、第42回日本脳神経外傷学会にて、その結果が報告された。P2015の登録対象症例は2015年4月1日~2017年3月31日に、搬入時あるいは受傷後48時間以内にGlasgow Coma Scale(GCS)8以下、あるいは脳神経外科手術を施行した頭部外傷症例(0歳を含む全年齢)。Project2015の参加施設は32施設1,345例が登録された。

前立腺がん患者のQOL、性機能とADTの影響に配慮を/Lancet Oncol

 昨今の医療のトピックに「治す医療から支える医療へ」がある。英国・リーズ大学のAmy Downing氏らは集団ベース研究により、進行前立腺がん患者と限局性前立腺がん患者とで、健康関連QOLアウトカムは大きく異なってはいないが、アンドロゲン除去療法を受けた患者ではホルモン機能と疲労に関してかなりの問題を抱えていることを明らかにした。著者は、「性機能障害がよくみられるものの、ほとんどの男性は有益な介入や支援を提供されていない。

統合失調症または双極性障害患者における死亡率の傾向

 重度の精神疾患を有する患者の平均寿命は、一般人口と比較し、1~20年短縮するといわれているが、その多くは身体疾患によって命が失われている。重度の精神疾患に関する大部分の研究では、疾患ごと(たとえば統合失調症と双極性障害)に調査が行われており、母集団に対する死亡率の観点から疾患を比較してはいなかった。デンマーク・オールボー大学のLine Hosbond Lomholt氏らは、統合失調症患者と双極性障害患者の標準化死亡比(SMR)の比較を行った。International Journal of Bipolar Disorders誌2019年3月1日号の報告。

低リスク大動脈弁狭窄症に自己拡張型弁のTAVRは有効か/NEJM

 手術リスクが低い重症大動脈弁狭窄症患者に対して、自己拡張型supraannularバイオ人工弁による経カテーテル大動脈弁置換術(TAVR)の施行は通常手術施行に対して、24ヵ月時点の死亡または後遺障害を伴う脳卒中発生の複合エンドポイントについて非劣性であることが示された。米国・ベスイスラエル・ディーコネス医療センターのJeffrey J. Popma氏らによる無作為化試験の結果で、NEJM誌オンライン版2019年3月16日号で発表された。TAVRは、手術を受けた場合の死亡リスクが高い重症大動脈弁狭窄症患者の、手術に変わる治療法とされている。これまで、手術リスクの低い患者のTAVR施行については明らかにされていなかった。

ACS発症またはPCI施行のAF患者、アピキサバンは有益か/NEJM

 直近に急性冠症候群(ACS)を発症または経皮的冠動脈インターベンション(PCI)を受けP2Y12阻害薬を投与される心房細動患者において、アピキサバン(商品名:エリキュース)を含む抗血栓療法(アスピリンは非併用)は、ビタミンK拮抗薬+アスピリン療法またはアスピリン単剤療法と比べて、出血および入院が減少し、虚血イベントの発生において有意差はみられないことが示された。米国・デューク大学のRenato D. Lopes氏らによる2×2要因デザイン法の国際多施設共同無作為化試験「AUGUSTUS試験」の結果で、NEJM誌オンライン版2019年3月17日号で発表された。ACS発症またはPCIを受けた心房細動患者に対し、適切とされる抗血栓療法は明確にはなっていない。

日本の再生医療を世界で勝たせるために/再生医療学会

 本年(2019年)3月に行われた第18回日本再生医療学会総会の中で、外科医でもある衆議院議員 厚生労働委員長の冨岡 勉氏は「再生医療を推進するために政治はどう取り組むべきか」と題して基調講演を行った。  世界時価総額ランキング上位20社中、1989年における日本企業は14社を占めた。しかし、2018年その数はゼロ。ほぼ米・中の争いである。研究の活性化指標である論文数の国別順位と国別論文シェアをみると、ゲノム編集、免疫療法、核酸医薬などがんゲノムに関連のテーマでわが国は上位にあるものの、その分野でも1位は米・中である。

国内初のCAR-T「キムリア」が承認/ノバルティス

 ノバルティス ファーマ株式会社は、2019年3月26日、「再発又は難治性のCD19陽性のB細胞性急性リンパ芽球性白血病(B-ALL)および再発又は難治性のCD19陽性のびまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)」を対象として、国内で初となるキメラ抗原受容体T細胞(CAR-T細胞)療法チサゲンレクルユーセル(商品名:キムリア)の製造販売承認を取得しました。  チサゲンレクルユーセルは、患者自身のT細胞を遺伝子導入により改変し、体内に戻すことで、CD19発現B細胞性の腫瘍(B-ALLとDLBCL)を認識して攻撃する新しいがん免疫細胞療法。チサゲンレクルユーセルによる治療は、継続的な投与を必要とせず、投与は一度のみとなる(単回投与)。

認知症高齢者における入院前後の抗コリン作用性負荷

 ドイツ・ライプニッツ予防研究疫学研究所のJonas Reinold氏らは、認知症高齢者における入院中の抗精神病薬と抗コリン作用薬の使用変化を評価し、抗精神病薬処方と抗コリン作用性負荷(ACB)の増加に関連する因子について検討を行った。International Journal of Geriatric Psychiatry誌オンライン版2019年2月13日号の報告。  2012~14年にイタリア・ウディネ大学病院に入院した認知症患者のうち、退院時診断を受けた65歳以上の患者を対象に、レトロスペクティブコホート研究を実施した。

リファンピシン耐性結核に短期レジメンが有望/NEJM

 リファンピシン耐性結核の治療において、高用量モキシフロキサシンを含む9~11ヵ月の短期レジメンは、2011年のWHOガイドラインに準拠した長期レジメン(20ヵ月)に対し、有効性が非劣性で安全性はほぼ同等であることが、英国・ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンのAndrew J. Nunn氏らが実施したSTREAM試験で示された。研究の成果は、NEJM誌オンライン版2019年3月13日号に掲載された。

低侵襲血腫除去+血栓溶解、脳内出血の予後を改善するか/Lancet

 30mL以上の脳内出血の治療において、MISTIEと呼ばれる画像ガイド下経カテーテル血腫除去術後に血栓溶解療法を行うアプローチは、標準治療と比較して1年後の機能的アウトカムを改善しないことが、米国・ジョンズ・ホプキンス大学のDaniel F. Hanley氏らが行ったMISTIE III試験で示された。研究の成果は、Lancet誌2019年3月9日号に掲載された。テント上脳出血による急性脳卒中は、合併症や死亡のリスクが高い。本症への開頭術による血腫除去は有益でないことが、大規模な無作為化試験で示されている。