veliparib、gBRCA変異のないBRCA-like型TN乳がんでPFS改善(SWOG S1416)/ASCO2020

提供元:ケアネット

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公開日:2020/06/11

 

 転移を有するトリプルネガティブ(TN)乳がんで、生殖細胞系列BRCA遺伝子(gBRCA)変異はないが、相同組み換え修復不全(HRD)スコアや体細胞系列BRCA1/2変異などの分析でBRCA-like型に分類された患者に対し、PARP阻害薬veliparibをシスプラチンに追加することで無増悪生存期間(PFS)が延長したことが、第II相SWOG S1416試験で示された。米国・University of Kansas Medical CenterのPriyanka Sharma氏が、米国臨床腫瘍学会年次総会(ASCO20 Virtual Scientific Program)で発表した。

 PARP阻害薬は、gBRCA1/2変異のある進行乳がんでPFSを改善することが報告されている。また、TN乳がんの40~60%はHRDを示し、HRDはPARP阻害薬の感受性に関連することが示唆されている。

・対象:転移/局所再発のTN乳がんまたはgBRCA1/2変異HER2陰性の進行乳がん患者
・試験群:シスプラチン(75mg/m2)+veliparib(300mg経口投与、1日2回、Day 1~14)、3週ごと(veliparib群)
・対照群:シスプラチン(75mg/m2)+プラセボ(プラセボ群)
・評価項目:
[主要評価項目]3グループ(gBRCA陽性、BRCA-like、非BRCA-like)におけるPFS
[副次評価項目]奏効率(ORR)、全生存期間(OS)、クリニカルベネフィット率(CBR)、安全性

 3グループの分類については、veliparib群とプラセボ群に割り付けた後にgBRCA検査を実施し、変異がない場合は追加のバイオマーカー分析(myChoiceによるHRDスコアが42以上、体細胞系列BRCA1/2変異、BRCA1遺伝子プロモーター領域のメチル化、生殖細胞系列の相同組み換え修復遺伝子変異)を実施し、gBRCA変異あり、BRCA-like(追加のバイオマーカー分析で陽性であった患者)、非BRCA-likeに分類した。

 主な結果は以下のとおり。

・無作為に割り付けられた335例中、321例(95.8%)が有効性評価の適格基準を満たした(veliparib 群161例[50.2%]、プラセボ群160[49.8%])。
・平均年齢は56歳、TNBCが95%、白人が76%、未治療患者が69%であった。
・gBRCA変異ありが37例(11.5%)、BRCA-like が99例(30.8%)、非BRCA-like が110例(34.3%)、未分類が75例(23.4%)であった。
・gBRCA変異ありにおいて、veliparib群のPFS中央値が6.2ヵ月、プラセボ群6.4ヵ月で有意差が認められなかった(HR:0.66、95%CI:0.30~1.44、p=0.29)
・gBRCA-likeにおいて、veliparib群のPFS中央値が5.9ヵ月、プラセボ群4.2ヵ月に比べて有意に延長した(HR:0.53、95%CI:0.34~0.83、p=0.006)。
・非BRCA-like、未分類では、PFSの有意な改善は見られなかった。
・サブグループ解析では、BRCA-likeにおいて、veliparibを1次治療で投与された患者のPFS中央値が、veliparib群が6.1ヵ月でプラセボ群の4.2ヵ月より有意に延長し(HR:0.49、95%CI:0.29~0.83、p=0.008)、OS中央値もveliparib群が17.8ヵ月とプラセボ群の10.3ヵ月より有意に延長した(HR:0.53、95%CI:0.28~0.99、p=0.048)。さらにHRDスコアが42以上のPFS中央値も、プラセボ群4.2ヵ月に対してveliparib群6.1ヵ月と有意に延長していた(HR:0.53、95%CI:0.31~0.89、p=0.016)。
・Grade3/4の有害事象は、好中球減少症(46% vs.19%)、貧血(23% vs.7%)、白血球減少症(27% vs.7%)、血小板減少症(19% vs.3%)において、veliparib群でプラセボ群より有意に発現率が高かった(すべてp<0.001)。

 Sharma氏は、gBRCA変異ありのグループで有意差が見られなかった理由として、患者数が37例と少ないことによるパワー不足を挙げ、第III相BROCADE3試験ではveliparibの追加でPFSが改善していることを紹介した。最後に、BRCA-likeのTN乳がんにおける有効性を示した本試験は、PARP阻害薬の役割をgBRCA変異を越えて広げるための大きな前進である、と結んだ。

(ケアネット 金沢 浩子)

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