日本語でわかる最新の海外医学論文|page:492

外来診療中のサージカルマスク着用とN95マスク着用の呼吸器感染症予防効果の比較(解説:吉田敦氏)-1139

インフルエンザウイルスをはじめとする呼吸器ウイルス感染の予防に、外来診療で日常的に着用されるサージカルマスクが、N95マスクとどの程度予防効果が異なるのか、今回ランダム化比較試験が行われた。小児を含む米国7医療機関において、外来診療に当たる医療従事者を小集団(クラスター)に分割、小集団ごとにサージカルマスク、N95マスクのいずれかにランダムに割り付けし、H1N1 pandemicを含む4シーズン以上を観察期間とした。医療従事者には毎日呼吸器症状を含む体調の変化について日記をつけさせ、発症した際には遺伝子検査を行い、さらに無症状であっても遺伝子検査と血清抗体検査を行うことで、不顕性感染の有無まで把握を試みたものである。

コマーシャルペーパーといわれても致し方がないのではないか(解説:野間重孝氏)-1136

チカグレロルとプラスグレルは、世界の薬剤市場でクロピドグレルの後継を巡って、いわばライバル薬品として扱われているといってよい。両剤ともに作用の発現が早く、また投与中止後、薬効の消失が速やかであることが期待できるという点で共通している。しかしプラスグレルはいわゆるチエノピリジン系に属し、そのものは活性を有しないのに対し、チカグレロルはそのものが活性を持つという点が大きく異なる。ただし、プラスグレルはクロピドグレルと異なり、複数のCYPにより代謝されるため、チカグレロルに劣らない速度で活性を発揮することが可能になっている。

全国でインフルエンザ流行期入り、昨年より1ヵ月早く

 厚生労働省は15日、全国的なインフルエンザの流行シーズンに入ったと発表した。前年比で4週間早いシーズン入りで、現在の統計法で調査を始めた1999年以降では2番目に早い。  国立感染症研究所が15日付でまとめた、2019年第45週(11月4~10日)の感染症発生動向調査において、インフルエンザの定点当たり報告数が 1.03(定点数:全国約5,000 ヵ所、報告数:5,084)となり、流行開始の目安となる 1.00を上回った。

若い女性の座っている時間とうつ病との関連

 身体活動(PA)の不足や長時間の座りっ放し(sitting time:ST)は、死亡率やうつ病などの慢性疾患リスクの増加と関連している。2つのリスクは独立しているともいわれているが、それらの連合効果や層別効果はよくわかっていない。オーストラリア・クイーンズランド工科大学のT. G. Pavey氏らは、若年女性におけるうつ症状のリスクと12年間に及ぶPAやSTの複合効果について調査を行った。Journal of Science and Medicine in Sport誌2019年10月号の報告。

利益相反の開示は論文査読に影響するのか/BMJ

 現行の倫理規定では、すべての科学論文について利益相反(conflicts of interest:COI)の開示が求められているが、米国・ハーバード・ビジネス・スクールのLeslie K. John氏らによる無作為化試験の結果、論文の査読にCOI開示は影響しないことが示された。著者は、「査読者が出版を評価する論文のあらゆる質の評価に、COI開示が影響していることを確認できなかった」としている。科学雑誌やアカデミックな倫理基準において、査読者、エディターおよび読者が、可能性があるバイアスを検出・補正できるように、著者に対してCOI開示が命じられている。しかし、これまでその行為が目的を達しているかを確認する検討は行われていなかったという。BMJ誌2019年11月6日号掲載の報告。

次世代CFTR矯正薬、嚢胞性線維症の呼吸機能を改善/Lancet

 嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子遺伝子(CFTR)のF508del変異ホモ接合体を有する嚢胞性線維症の治療において、tezacaftor+ivacaftorにelexacaftorを併用すると、tezacaftor+ivacaftorと比較して、良好な安全性プロファイルとともに、呼吸機能が著明に改善することが、オランダ・ユトレヒト大学医療センターのHarry G M Heijerman氏らが行ったVX17-445-103試験で示された。研究の成果は、Lancet誌オンライン版2019年10月31日号に掲載された。CFTR調節薬は、CFTR遺伝子変異に起因する根本的な異常を矯正するとされる。CFTRのF508del変異ホモ接合体を有する嚢胞性線維症患者では、CFTR矯正薬(tezacaftor)とCFTR増強薬(ivacaftor)の併用により、健康アウトカムの改善が達成されている。同型の嚢胞性線維症患者の第II相試験において、次世代CFTR矯正薬であるelexacaftorは、tezacaftor+ivacaftorと併用することで、F508del-CFTR機能と臨床アウトカムをさらに改善したと報告されていた。

潰瘍性大腸炎に対するベドリズマブとアダリムマブの臨床的寛解効果は?(解説:上村直実氏)-1135

潰瘍性大腸炎(UC)は国の特定疾患に指定されている原因不明の炎症性腸疾患(IBD)であり、現在、国内に16万人以上の患者が存在している。UCの治療に関しては、最近、腸内フローラの調整を目的とした抗生物質や糞便移植の有用性が報告されつつあるが、通常の診療現場で多く使用されているのは薬物療法である。寛解導入および寛解維持を目的とした基本的な薬剤である5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤、初発や再燃時など活動期に寛解導入を目的として用いるステロイド製剤、ステロイド抵抗性および依存性など難治性UCに使用する免疫調節薬(アザチオプリン、シクロスポリンAなど)と生物学的製剤が使用されているのが現状である。

HIF-PH阻害薬vadadustatの腎性貧血に対する国内第III相試験結果/米国腎臓学会

 今年ノーベル生理学・医学賞を受賞した「低酸素応答の仕組みの解明」の研究を基に、各社で低酸素誘導因子プロリン水酸化酵素(HIF-PH)阻害薬の開発が進められている。その1つであるvadadustat(MT-6548)は、田辺三菱製薬がアケビア社から導入した1日1回経口投与のHIF-PH阻害薬で、今年7月に腎性貧血を適応症として厚生労働省に承認申請している。今月、ワシントンで開催された米国腎臓学会腎臓週間(11月5~10日)で、本剤の保存期および血液透析期の腎性貧血患者に対する国内第III相臨床試験の結果が発表された。

小細胞肺がん、PARP阻害薬veliparibの追加でPFS改善/JCO

 小細胞肺がん(SCLC)に対して、化学療法へのPARP阻害薬veliparib追加の有効性が確認された。veliparibは、非臨床試験で標準化学療法の効果を増強することが示されており、米国・エモリー大学のTaofeek K. Owonikoko氏らは、未治療の進展型SCLC(ES-SCLC)患者を対象に第II相無作為化臨床試験を行った。その結果、シスプラチン+エトポシド(CE)へのveliparib追加併用療法により、無増悪生存(PFS)期間が有意に延長したことが示されたという。Journal of Clinical Oncology誌2019年1月20日号掲載の報告。

医師300人に聞いた!今季のインフルエンザ診療

 ここ数年、過去最大規模の流行を繰り返すインフルエンザだが、今年は早くも流行が始まっている。現場での診療方針はどのような傾向にあるのだろうか。ケアネットでは先月、会員医師を対象に「今シーズンのインフルエンザ診療について」のアンケートを行い、325人から回答を得た。  アンケートでは、早期流行の実感、迅速診断キットの使用頻度、抗インフルエンザウイルス薬の処方頻度、外来での抗インフルエンザ薬の選択について答えていただいた。

双極性障害患者の自殺企図有病率~メタ解析

 双極性障害(BD)は、自殺リスクの高い重度の精神疾患である。中国・Guangdong Academy of Medical SciencesのMin Dong氏らは、BD患者の自殺企図の有病率および関連因子についてメタ解析を実施した。Epidemiology and Psychiatric Sciences誌オンライン版2019年10月25日号の報告。  PubMed、PsycINFO、EMBASE、Web of Scienceより、2018年6月11日までの文献をシステマティックに検索した。BD患者の自殺企図有病率は、変量効果モデルを用いて算出した。

市中肺炎に新規経口抗菌薬lefamulinが有効/JAMA

 市中細菌性肺炎(CABP)患者において、lefamulinの5日間経口投与はモキシフロキサシン7日間経口投与に対して、初回投与後96時間での早期臨床効果が非劣性であることが示された。米国・Nabriva TherapeuticsのElizabeth Alexander氏らが、CABPに対するlefamulinの有効性および安全性を評価した無作為化二重盲検ダブルダミー並行群間第III相試験「LEAP 2試験」の結果を報告した。標準治療による抗菌薬耐性の拡大と安全性の懸念から、CABP治療の新しい抗菌薬が必要とされている中、lefamulinは、先に行われた第III相試験「LEAP 1試験」において、初回静脈内投与後経口投与への切り替えでモキシフロキサシンに対する非劣性が示されていた。JAMA誌オンライン版2019年9月27日号掲載の報告。

製薬企業の“ギフト”が開業医の処方を左右/BMJ

 製薬企業から“ギフト”を受け取っていないフランスの一般開業医(GP)は、受け取っているGPと比べて、薬剤処方効率指標が良好で低コストの薬剤処方を行っていることが明らかにされた。フランス・レンヌ第1大学のBruno Goupil氏らが、製薬企業からの物品・金銭類提供と薬剤処方パターンとの関連性を評価する目的で、同国2つのデータベースを用いた後ろ向き研究の結果を報告した。世界保健機関(WHO)およびオランダに拠点を置く非営利組織のHealth Action International(HAI)による先行研究で、医療用医薬品のプロモーションが非合理的で高コストの薬剤処方と関連していることが示されており、フランスのGPが製薬企業から“ギフト”(物品、食事、交通費、宿泊等の提供)を受ける可能性があることから、研究グループはその実態と処方との関連を調べた。BMJ誌2019年11月5日号掲載の報告。

ピロリ除菌と栄養サプリメントの胃がん抑制効果:世界最長の経過観察(解説:上村直実氏)-1137

H. pyloriは幼児期に感染し半永久的に胃粘膜に棲息する細菌であるが、胃粘膜における持続的な感染により慢性活動性胃炎を惹起し、胃がん発症の最大要因であることが明らかとなっている。さらに除菌により胃粘膜の炎症が改善するとともに、胃がんの抑制効果を示すことも世界的にコンセンサスが得られている。しかしながら、実際の臨床現場では除菌後に胃がんが発見されることも多く、除菌による詳細な胃がん抑制効果を検証する試みが継続している。今回、除菌治療のみでなくビタミン補給やニンニク摂取により、胃がん発症および胃がん死の抑制効果を示す介入試験の結果がBMJ誌に発表された。

2017年の世界のがん患者2,450万例、がん死960万例/JAMA Oncol

 世界におけるがん罹患、がん死の詳細な現状と格差をもたらす要因が明らかにされた。世界のがん疾病負荷(Global Burden of Disease Cancer:がんGBD)共同研究グループが、1990~2017年における29種のがんについて調べ、世界・地域・国別のがん罹患率や死亡率などを発表。がんGBDは国によって大きくばらつきがあり、背景にはリスク因子曝露、経済、生活習慣、治療アクセスやスクリーニングの差があることが示されたという。JAMA Oncology誌オンライン版2019年9月27日号掲載の報告。

認知症予防の可能性、カマンベールチーズvs.運動

 東京都健康長寿医療センター、桜美林大学、株式会社 明治(以下、明治)の共同研究グループは、高齢者女性を対象としたランダム化比較試験(RCT)において、カマンベールチーズの摂取による認知機能低下抑制を示唆し、認知症予防の可能性を見いだすことに成功した。  2019年11月6日、明治主催のメディアセミナー「人生100年時代に考える認知症予防について~カマンベールチーズの新たな可能性~」が開催。鈴木 隆雄氏(桜美林大学老年学総合研究所 所長)が「人生100年時代~認知症予防とBDNF」を、金 憲経氏(東京都健康長寿医療センター研究所 研究部長)が「カマンベールチーズがBDNFに及ぼす影響~ランダム化比較試験」について講演した。

大腸がん以外のMSI-Hがんに対するペムブロリズマブの横断的成績(KEYNOTE-158)/JCO

 ペムブロリズマブはMSI-High(MSI-H)進行がんに対して抗腫瘍活性を示し、わが国でも2018年12月に承認されている。大腸がん以外の既治療のMSI-H進行がんに対するペムブロリズマブの第II相KEYNOTE-158試験の結果が発表された。Journal of Clinical Oncology誌2019年11月4日号掲載の報告。 対象:大腸がん以外の既治療のMSI-H進行がん 介入:ペムブロリズマブ200㎎/日3週ごと、病勢進行あるいは忍容できない有害事象などで投与中止となるまで投与(最長2年間) 評価項目:独立中央放射線画像判定委員会評価による全奏効率(ORR)

術後せん妄予防に対するメラトニン~メタ解析

 外科の高齢患者は、術後せん妄発症リスクが高い。せん妄の予防には、非薬理学的介入が推奨されるが、せん妄の発症を減少させる確固たるエビデンスを有する薬剤は、今のところない。米国・アリゾナ大学のAshley M. Campbell氏らは、周術期のメラトニンが、外科手術を受けた高齢患者のせん妄発症率を低下させるかについて評価を行った。BMC Geriatrics誌2019年10月16日号の報告。  1990年1月~2017年10月に英語で公表された文献を、PubMed/Medline、Embase、PsycINFO、CINAHLおよびリファレンスより検索した。

新規デング熱ワクチンの有効性、小児で確認/NEJM

 開発中の4価デング熱ワクチン(TAK-003)は、デング熱が風土病化している国での症候性デング熱に対して有効であることが確認された。シンガポールにある武田薬品工業ワクチン部門Takeda VaccinesのShibadas Biswal氏らが、デング熱が風土病となっているアジア、中南米で実施中の3つの無作為化試験のpart1データを公表し、NEJM誌オンライン版2019年11月6日号で発表した。蚊を媒介としたウイルス性疾患のデング熱は、世界保健機関(WHO)が2019年における世界の健康に対する10の脅威の1つに挙げている。

欧州のICU終末期医療、延命治療めぐる実態は?/JAMA

 欧州のICUにおける終末期(エンドオブライフ)の方針決定について、16年前の調査時と比べて、延命治療の制限が有意に増大しており、延命治療の制限を受けなかった死亡は有意に減少していたことが判明した。イスラエル・ヘブライ大学のCharles L. Sprung氏らが、1999~2000年に行ったICUにおける終末期医療に関する研究「Ethicus-1」対象の欧州22ヵ所のICUについて、2015~16年に前向き観察研究「Ethicus-2」を行い明らかにし、JAMA誌オンライン版2019年10月2日号で発表した。ICUにおける終末期の方針決定は世界中で日々起きているが、ここ10年間で欧州での終末期医療に関する考え方、法律、勧告・ガイドラインに変化が生じており、ICUでの方針決定が変化している可能性が示唆されていた。